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Accumu Vol.13

初代学院長の思い出

京都コンピュータ学院副学院長京都コンピュータ学院京都駅前校校長 牧野 澄夫

■教育の基本理念

初代学院長はコンピュータの出現に新時代の到来を予見されたコンピュータは単に「省力化」の道具ではなくて「人間のもつポテンシャルの開拓開発」に貢献するという画期的な性格をもつ機械であるコンピュータは真に「人間と共生しよきパートナーとなりうる」機械であるその意味で初代学院長はいつでもコンピュータに最大限の賛辞を惜しまれなかった

同時に先生は機械としてのコンピュータすなわちハードウェア以上にはるかに利用技術としてのソフトウェアが重要となる点で情報処理技術は人間の活動全体に似ていることその意味で20世紀まで続いてきたハードウェア優先の伝統的な技術観を根底から覆すものであることを看取されたまさに新しい時代を拓く新しい技術の到来である

当時はしかしこの技術はごく少数の専門家に関わるものと一般に考えられていたこれに対し「この画期的な情報処理技術には将来大量の技術者が必要となる」という先見の明をもって初代学院長は若者特に受験勉強に汚染されることの少ない若者の教育を考えられた彼らには新しい時代に生きてゆく上でこの技術こそ学ぶべき第一のものではないかこれが初代学院長の教育の基本理念となった

■大学設立の夢

情報処理技術はとどまるところを知らず前進を続けている中専門学校としていや専門学校だからこそ技術の進歩に即応した柔軟なカリキュラムが可能であった何を学生たちに教授すべきかについて大学院の博士課程等で最新の研究を行っていた若手研究者たちとの議論を楽しんで時の過ぎるのを忘れておられた

他方で先生は大型コンピュータの導入に強い意欲を持ち続けられたパソコン時代の現在では考えられないような非常に高額な大型コンピュータを純粋に学生の実習用として設置したのは全国に類を見ないものであった

情報処理技術の学習はコンピュータ実習によって遂行されるただしそれは「実習」という名の操作訓練ではないまた予想される結果を検証するための「実験」でもないだろうそうではなくてまさにコンピュータ実習とは学習者がコンピュータというハードウェアとともに新しいソフトウェアを作り出すすなわち人間が機械をパートナーとしてともに学ぶプロセスでなければならないのだこれこそ新しい時代の新しい勉強である

情報処理技術の進歩とその拡大を考えたなら学ぶべきこと教授すべきことはどこまでも広がってゆくといえた情報技術の進歩を考えると専門学校卒業後さらに学ぶことができる場所が必要であったしかし当時は専門学校卒業生がさらに高度な勉強をしたいと思っても大学や大学院へ編入学する道は開かれていなかったさらに情報処理技術という教育の中味を考えれば従来の高等教育機関ではない新しいタイプの高等教育機関が必要であった

「他にもあるような学校ならなにも僕がやる必要はない」が口癖であった先生の中で旧来型ではない全く新しいタイプの大学創設の夢が徐々に育ってゆくしかしその夢の実現の道半ばにして1986年7月2日先生は病に倒れ鬼籍に入られることとなった享年56歳であった

■京都情報大学院大学の創設

2003年専門職大学院という新制度が施行された旧来の研究大学院とは一線を画するプロフェッショナルスクールの誕生であるそれは初代学院長の志を継いでその夢の実現をめざす者にとって千載一遇の好機であった初代学院長の教育理念に淵源する京都コンピュータ学院の41年にわたるコンピュータ情報教育の伝統は新しい果実を結ぶ期を迎えたのである

そして2004年1月30日専門職大学院「京都情報大学院大学」が文部科学省より認可を受けた専門職大学院という新制度のもとIT専門職大学院として日本最初にして唯一のものである

■大学祝典序曲

京都情報大学院大学・京都コンピュータ学院 2004年度合同入学式
京都情報大学院大学京都コンピュータ学院
2004年度合同入学式

先生はクラシックの音楽にも強い愛着をもっておられた愛好された曲の一つにブラームスの「大学祝典序曲」があるこれはブラームス46歳の年ブレスラウの大学から名誉博士号を授与された返礼として書き上げた管弦楽曲である中に使われている学生歌「我々は立派な校舎を建てた」「新入生の歌」「さあ青春を謳歌しよう」…まさに新しい大学の開学にぴったりの音楽である先生は大学創設の夢に重ね合わせてこの曲を愛好されていたのであろう

毎年京都コンピュータ学院の入学式には初代学院長をしのんで「大学祝典序曲」が流れる

本年4月京都情報大学院大学の記念すべき第一期生の入学式においても初代学院長の遺影が掲げられた壇上から「大学祝典序曲」の演奏が流れた


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牧野 澄夫
Sumio Makino
  • 京都大学大学院文学研究科博士課程修了
  • 専門は「西洋哲学史」
  • 京都コンピュータ学院副学院長京都コンピュータ学院京都駅校前校長

上記の肩書経歴等はアキューム15号発刊当時のものです