私がシステムコンサルタントを名乗って独立したのはもう今から6年ほど前になる。当時はシステムコンサルタントということばがなかなか通じず,営業活動もうまくいかなかった。待てども仕事は来ず,飛び込み営業をしても相手にしてもらえなかった。当時はシステムコンサルタントに対するニーズというよりも理解すらなかったのかもしれない。
しかし,今ではありがたいことに仕事は勝手に飛び込んでくる。待ってもらわないといけないほどの盛況である。(もちろん,営業活動がないわけではないが。)
最近になって,ようやくシステムコンサルタントが社会的に認知され始めたのかもしれない。新聞記事上の情報技術者の求人でもシステムコンサルタントの職種の募集が目につくようになってきた。システム開発のプロフェッショナルに対する世の中のニーズがようやく出てきたのである。
情報システムは本来,建築業と同じで,中立的な設計者がユーザのニーズを把握して設計を行い,開発業者がその設計にもとづいてシステム開発を行うべきなのだ。そのためには1級建築士のような中立で独立的な立場のシステムエンジニアが必要となると考えたのだが,今から思えば無謀な独立であった。
しかし,世の中というものは日の目があたり出すと,追従者が続々と登場するものらしく,システムコンサルタントをめざす人達のための本を執筆して欲しいという話が出版社から持ち込まれてきた。7月に出版された7人の現役システムコンサルタントによる共著『システムコンサルタントになる本』(日本能率協会マネジメントセンター)がそれである。私も著者の一人として参加しているので,興味のある方はぜひ購読して欲しい。
システムコンサルタントは様々な場面で活躍している。情報システムの立案・設計はもちろん,情報システムの診断・監査,情報システムの活用教育・訓練など,情報システムに関することならばあらゆる場面が活躍の場となる。
最近,システムコンサルタントへの依頼が多い具体的なテーマとしては,次のようなものがある。
現在私があたっている仕事の一つにPOSシステムの診断がある。情報システムは情報技術だけでなく,それを運用する人たちの日常業務によって支えられている。情報システムの診断では情報技術の知識だけではなく,深い業務知識と業務経験が必要となる。
これも現在私があたっている仕事の一つだが,製造業の生産管理のシステム設計を行っている。新規システムの設計を行うこともシステムアナリストの大きな仕事である。緻密な業務分析の結果に最適化したシステム設計(特にデータベース設計,オブジェクト設計)が行えるのはシステムアナリストの力である。
情報技術の発展に伴い,情報化の新しいパラダイムが目白押し状態である。たとえば,2000年問題への対応,ERP導入による全業務の統合化,国際会計基準対応の会計情報システムの再構築,戦略的人事情報システムの構築,電子商取引への対応,ISO9000・ISO14000対応システムの構築などがあげられよう。
データベースの戦略的活用を目指すものとして,データウェアハウスの構築,EUCの推進,経営情報システムの構築などが多くの企業において推進されている。
より多くの社内外情報を活用するために,グループウェアやイントラネットの導入,インターネットの活用(電子メール,ホームページ)を推進している企業が増えている。
ワークフローによるペーパーレス化,クイックレスポンス化,CTIや電子店舗によるワンツーワンマーケティングの実現,営業活動の効率化や強化をねらったSFA導入によって,競争力の強化を図ろうとしている企業が増えている。
今後もシステムコンサルタントに依頼されるテーマは増えつづけるだろう。もちろん,一人のシステムコンサルタントがあらゆるジャンルのテーマに対応できるわけではない。システムコンサルタントはそれぞれ得意分野を持っている。しかし,システムコンサルタントは各テーマにおいて最適な問題解決をクライアントに提供するためには,専門分野だけに通じていればよいというわけにはいかない。得意分野以外についても人並み以上の知識とセンスが必要とされるのである。
システムコンサルタントになるために特別な資格が必要となるわけではない。経営コンサルタントと同じで無資格でも能力と実績さえ積めばいくらでも成功する道は開かれるのだ。しかし,どんな職業でも実績を積むまではなかなかクライアントからの信用を得ることはできない。これからシステムコンサルタントになろうとスキルアップを目指すのであれば,やはり資格の取得を勧めたい。
資格の取得はシステムコンサルタントとしての基礎的な知識獲得(あくまでも基礎知識にすぎないが)のために役立つ上,クライアントからみればシステムコンサルタントの商品価値を判断する重要な基準になるからである。
私自身もプログラマ,システムエンジニア時代を通じてシステムコンサルタントとしてのスキルアップを目指して資格の取得に努めてきた。
参考に私が取得してきた情報関係の資格を全て紹介しておこう。
・システムアナリスト ・システム監査技術者 ・アプリケーションエンジニア ・データベーススペシャリスト ・ネットワークエンジニア ・ノベル認定技術者 ・ロータス認定技術者 ・マイクロソフト認定技術者
幸い,情報関係の資格は情報処理の仕事に携わっている者であれば,仕事の延長で勉強すればよいものばかりである。自己発展の意欲とあきらめない粘りがあれば必ず資格は取得できるものである。
では,システムコンサルタントになるための条件として学歴は関係するだろうか。答えはノーだ。システムコンサルタントは完全な実力主義世界であり,一流の学歴を持っていても,一流の会社に勤めていても関係ない。
学校で頭がよくても関係がない。磨くべきは問題解決のセンスなのだ。(もちろん,問題解決のセンスを得るためには基礎勉学が不可欠だが)システムコンサルタントの商品価値はその人の持つ問題解決能力が全てである。
コンサルタント会社に勤めていてもだめな人はだめで,クライアントは付かない。シビアな世界だが,反面,それだけ誰にでも可能性のある世界といえるだろう。
参考に私の今週の活動を少しだけ紹介してみよう。
大阪府の製造業者を訪問(販売管理システムの構築コンサルティング)
滋賀県の製造業者を訪問(生産管理システムのシステム診断)
機関紙への連載記事の執筆
京都府の製造業者を訪問(販売管理システムの構築コンサルティング)
大阪府の中小企業組合を訪問(インターネット活用の指導)
事務所にてコンサルティング案件のプロトタイプシステム開発
事務所にて新規コンサルティング提案書の作成
京都府の製造業者を訪問(グループウェア活用コンサルティング)
事務所にてコンサルティング案件のプロトタイプシステム開発
事務所にてコンサルティング案件のプロトタイプシステム開発
コンサルティング会社主催のセミナーに参加
事務所にてコンサルティング報告書の作成
大阪府でインターネットセミナーの講師
大阪府の小売業者を訪問(POSシステムの診断)
事務所にてコンサルティング報告書の作成
事務所にてコンサルティング報告書の作成
機関紙への連載記事の執筆
私が,実際にどのような仕事をしているのかもっと知りたいと思った人は前述の『システムコンサルタントになる本』をぜひ読んでいただきたい。
私の他,著者5人の普段の生活振りが紹介されている。著者に共通していることは皆,毎日を時間刻みで行動していることだ。そして,必ずスキルアップの時間を捻出している。
システムコンサルタントになるための資質には分析力や忍耐力など多くの能力が要求されるが,その中でも重要となるのが時間管理能力である。
自分の持つ時間を最も効果的に活用する能力が必要なのである。
システムコンサルタントを目指そうと思う人は,ぜひ一度私のホームページをご覧いただきたい。(http://st.rim.or.jp/~ryoma) 私の仕事の内容が少しはわかるかもしれない。
最後に,『システムコンサルタントになる本』の中で,著者の一人であるカリフォルニア州立大学の一色教授がまえがきで述べていることを紹介しておこう。
「日本より10年ほど速く社会変化やIT(情報技術)がすすんでいる米国では,システムコンサルタントが問題解決のために活躍している。日本の情報化の発展のためにも新たな処方箋を担う人としてシステムコンサルタントが大いに必要になってくるだろう。」
業務を知らないシステムエンジニアや情報技術を知らない経営コンサルタントが設計したコンピュータシステムが多くの企業を苦しめている。
業務と情報技術に精通したプロのシステムコンサルタントが育ってくることを期待したい。
西暦2000(平成12)年になった途端,コンピュータシステムに誤作動が発生という問題である。この問題は,コンピュータの処理能力が低かった時代にデータ量を節約するために西暦の下2桁で管理してきたのが原因である。西暦の下2桁が「00」のとき,システムが「2000」を「1900」と認識してしまうわけである。そのため,システムの停止や日数計算・日付け入力エラーが起こり,受・発注や生産ラインが止まったり,金利や給与計算などが間違ったりする事態が発生する可能性がある。
全社的業務管理,会社全体の経営資源の計画的な活用をはかるコンピュータのソフトウェアのこと。財務,会計,販売,購買,生産管理,在庫管理など,ホワイトカラーが担当する全社的な基幹業務の管理につかわれる。ERPの特徴は,既製品でパッケージになっているので,導入コストが数億円単位。複数の部品ソフトからなり,基幹業務を広くカバーする。関連部品ソフト間で,業務の流れにそってデータを自動的にやりとりするため,データの移し替えの作業が不要。
国際会計基準は,各国の会計基準の国際的な統一化または調和化をめざして,各国の職業会計士団体で構成される国際会計基準委員会によって設定される国際標準としての会計基準をいう。国際会計基準が設定される背景には,企業活動の多角化・国際化により企業が多国籍化してきたことや,各国の企業が資金調達のために,各国の証券市場に相互乗り入れしてきたことなどがあげられる。国際会計基準は英米の会計基準をベースにしており,金融資産の時価評価などの会計処理を要請する開示主義を特徴としている。
商取引のすべての業務プロセスの情報交換をオープンネットワーク上で電子化して行うこと。通商産業省では,ECの分類を三つに大別している。(1)企業-消費者ネットワーク インターネットを介して商取引を行う。(2)不特定企業間の不特定多数ネットワークEDI(電子データ交換)を利用して企業間と不特定多数の商取引を行う。(3)企業間の特定ネットワークを利用して,特定企業間の商取引を行う。
国際標準化機構(ISO)の品質保証規格である「ISO9000シリーズ」とは,工場や事業所の品質管理システムそのものを第三者(審査登録機関)が検査し,品質保証システムが適切に機能していることを制度的に保証することである。製品それ自体の形状や材質,信頼性を保証する日本工業規格のJISマーク表示許可制度とは異なり,品質管理のシステムそのものを評価する。EC域内での商取引にはこの規格の取得が必要条件とされている場合が多いため,わが国企業も一斉にその取得を始めている。
原料の調達,生産,販売,リサイクルなど企業活動のあらゆる面で環境への影響を評価・点検し,改善を進めるための指針。業界標準として採用されたり政府調達の際の条件となる場合が多く,企業は事実上取得を義務づけられている。
伝票や顧客の個人記録など生データをコンピュータに記憶させ,分析・予測して経営の意思決定に活用するデータ倉庫のこと。週間・地区別売上高のように要約・加工したデータを蓄積したデータベースに対し,データウェアハウスは生データを加工せず,そのまま時系列的に正規化してコンピュータに蓄積するところに,最大の特徴がある。
EUCはエンドユーザー(利用部門)が自部門の情報システムに対して設計・構築・運用等のすべてを主体的に行うこと。情報システム部門は利用部門の情報化要求に対して,硬直肥大化した情報システムの保守や運用で手一杯のため,サービスの低下やシステムのバックログ(開発待ち)の増加という事態が発生した。このような状況に対して,利用部門には自分たちを主体に意識,やり方,体制を変えようとする動きが現れた。
協調して作業を進めるグループのために特別に設計されたシステムのこと。また,グループによる知的生産活動を支援するコンピュータ・システム。電子メールや電子掲示板,電子会議などが主要な機能となる。