京都コンピュータ学院の卒業生の集まりが,1988年に「京都コンピュータ学院校友会」の名のもとに再スタートを切りましてから,すでに6年が経ちました。昨年の創立30周年記念祭の折には,校友会幹事の皆様と色々とお話をいたしました。その中で,「学院の卒業生3万人は日本の情報処理関係,あるいは情報産業界の中で最大派閥を誇っている。しかし,その校友会の活動は,今ひとつ栄えないのではないか」とお叱りを受けました。また,今後五年間をどのように発展させていくかというテーマの中で,「世の中にはロータリークラブやライオンズクラブ,商工会議所,青年会議所等様々なエグゼクティブの集まりがあるが,財団法人や社団法人であるそういった会合に習い,学院の卒業生の方々の中から,企業における管理職や事業主,あるいは士のつく職業の方々,つまり一般にエグゼクティブと認識される人達を集めて『エクゼクティブクラブ』を作ろうではないか」と,校友会幹事の皆様に発案いたしましたところ,快くご賛同いただきました。以来,月に2回程度の会合をもち準備を進めてまいりました。ここで,本クラブの発足趣旨を,少し説明させていただきます。
皆様の学生時代を思い出していただくとおわかりでしょうが,一般に学校といいますのは,学生に対して権力を発動する側にあたります。しかし,最終学歴となる学校は,少し概念が異なると考えます。
広く人間の集団を規定する概念には,民族や宗教,あるいは国・国家という概念,または会社という概念などがあります。この民族や宗教,あるいは国家や会社などの概念による規定は,いずれも本人の意志で変えることができます。ある民族の人間であっても,その民族を離脱することは可能ですし,信仰している宗教から離脱することも可能です。更には国籍を変えることもできます。しかし,世の中で絶対に変えられない規定は,おそらく学歴という概念による規定ではないでしょうか。そして,この学歴による規定は最も知的なレベルでの規定であるとも言えます。
学歴といいますと,学歴社会あるいは学歴差別のようにあまり良い印象を与えませんが,学歴の本質とは,自分自身の人格を形成する場であったという,それだけの事実なのではないでしょうか。その中でも,人が世の中に出て一人立ちし,仕事をし,独立していく直前の時代,大人になる直前の時代に,自分自身の人格を形成した場所を最終学歴といいます。その最終学歴となる学校は,学問の世界ではあまり関係ありませんが,政界やビジネス界で生き抜くためには,ビジネスマン,とりわけエグゼクティブの人達にとって,自分達の人格形成の場を共有する閥の中に属していることが,非常に重要なファクターとなることがあります。
仕事をしていく上で,あるいは政界で生きていくにあたり,最も自分自身のパワーとなり得るものは,いうまでもなく人脈です。仕事ができるようになればなるほど,人脈の大切さがわかってきます。そして,その人脈を形成するのに一番取り組み易いのは,自分自身が青春を過ごした場所から人とのつながりを始めること,すなわち卒業生同士が連携プレーを行うことです。つまり,財界や政界をリードするような人達にとって,そして仕事のできる人達にとっては,自分の最終学歴であったところは人脈形成をするための媒介であるといえるのではないでしょうか。これは,一般に東大閥や京大閥,慶応閥,世界的にはハーバードやケンブリッジあるいはオックスフォード等が閥を形成していることからもご理解いただけると思います。
このように,我々学院の自覚すべき最も重要なことは,学院を自分自身の一つのよりどころとして巣立っていかれた卒業生の皆様の媒介になるということであると考え,6年前に,学院創立25周年を記念して校友機関誌「アキューム」を創刊しました。今ここで,向こう10年,20年を考えました時に,一番大事なことはやはり,我々学院が媒介としての役目を全うするということであると考えます。そして卒業生の皆様が学院を媒介として更なる人脈を形成されご発展されますことが,卒業生全体の発展につながるのです。ひいてはそれが,母校の評価を高めることにもなり,また母校の評価が高まれば社会におられる皆様の評価が高まるというように,相互発展の力学が常に存在するのです。学院は常に,全ての卒業生の皆様,とりわけビジネス界に生きておられる校友の人脈形成のための媒介であるという認識をもっております。
このような趣旨のもとに,「京都コンピュータ学院校友会エグゼクティブクラブ」を結成しました。今後はさらに発展させ,全ての卒業生の皆様のために,常に充実した活動を続けていきたいと考えています。
(京都コンピュータ学院校友会エグゼクティブクラブ結成式 校友会会長挨拶より)
上記の肩書・経歴等はアキューム22・23号発刊当時のものです。