海洋IT分野の教育・研究を推進するため,KCG・KCGIと船舶用電子機器などの製造販売大手の古野電気株式会社(本社:兵庫県西宮市芦原町9-52,古野幸男社長,東証一部上場)は2015年1月29日,古野電気株式会社本社で,産学連携に関する協定書を締結した。両者の学術交流,協力関係を基に▽教員・学生と研究者の交流▽共同研究および研究会の実施▽学術上の情報・刊行物および資料の交換―などを進めていく。
調印式では,KCGグループの長谷川亘 統括理事長と古野社長が協定書にサインし,握手を交わした。その後の懇談で,長谷川統括理事長は「活性化が急がれる水産の分野で,流通も含めIT化の推進によって活路を見出せるよう,さらには資源維持,船舶の安全運航などあらゆる面で手を取り合って活動を積極的に進めていきたい」と抱負を述べた。古野社長は「水産業におけるIT化はまだようやく夜明けが見えたくらいの段階」と表現し,KCGグループに対し,人材育成や研究推進などの面で期待を示した。
海洋・水産部門のIT化としては,超音波を利用して海中の魚群を探す魚群探知機開発のほか,効率的かつ持続的な漁業実現のため,人工衛星を活用したトレーサビリティ機能を持つ海洋資源と環境に関するデータ収集システム導入などが模索されている。さらには,船舶の省エネ,安全運航,温室効果ガス削減,海洋汚染防止,海洋自然エネルギー利用などに向けたIT化も急がれている。
産学連携協定を結んだことを受け,翌1月30日にはKCG京都駅前校で古野電気株式会社船舶機器事業部営業企画部の森正幸 担当部長による学術講演会「海上ITの現状と将来」が開かれた。森氏は,「安全安心,環境に優しい社会・航海の実現」という古野電気のビジョンについて述べ,1948年に世界で初めて魚群探知機の実用化に成功し,現在は船舶用電子機器分野で世界トップシェアを誇る同社のこれまでの歩みを紹介。国内子会社9社,海外子会社25社,販売拠点は84ヵ国に及び,グローバルに事業を展開していると述べた。また,魚群探知機,ソナー,レーダー,衛星通信機などの仕組みについて解説し,製品開発中の試験の様子を動画で紹介した。
最後に,学生たちに向け,「業界が求めているのは“とんがった”SE。これだけは誰にも負けないという優れた技術,問題を発見し解決する能力,そして技術を正しく伝え表現する技量を持った人材となれるよう,勉学に励んでください」と呼びかけた。