1963年(B.E2506-いわゆるタイ暦で2506年の意)タイ国にIBMコンピュータ1620が導入されて以来,コンピュータ利用への需要は劇的に増加した。コンピュータの役割の重要性を認識していた文部省は,それぞれの部局が個々にコンピュータ教育を行うことを奨励し支援してきた。しかしながら,予算やコンピュー夕専門家の人員の関係もあって,このことは容易には達成され得ていない。
文部省ノンフォーマル教育局では同省ならびに政府の方針に応え,日本政府に対し,援助を要請し,また,京都コンピュータ学院が所有する主要周辺機器とソフトウェアを含むカラーディスプレイコンピュータ351セットの寄付を要請した。京都コンピュータ学院では日本万国博覧会(1970年)の記念協会に対し,資金援助を申請し,加えて,この事業の目的を満たすためチャリティーイベントを開催した。
タイ人コンピュータインストラクター養成のトレーニングプログラムは京都コンピュータ学院によって日本およびタイ国両国内で開講されてきた。このプロジェクトは徐々にではあるが,深い感動を与えつつ進展している。そして今では,ノンフォーマル教育局はタイ国全土で,コンピュータ利用技術開発プロジェクトを開催することができるようになった。
タイ国文部省ノンフォーマル教育局長スラット・シルパアナン博士はタイ国バンコック,教育ミュージアムセンターヘの300台(当初予定)のパーソナルコンピュータ寄贈に関する日本・タイ両国間の同意書に調印した。
パソコン寄贈に関する同意書はタイ国文部大臣に任命されたコンピュータ執行委員会により承認され,日本製パーソナルコンピュータ300台の導入が決定した。
351台のパソコンが主要周辺機器とともにバンコック,クロンテイ・タイ関税港に入港した。
教育ミュージアムセンター(タイ,バンコック)内において,京都コンピュータ学院のコンピュータ専門家によるパソコン操作法並びにBASICプログラミング技法についての講習会が開かれた。タイ国全土より選抜された40人の教員がこの講習会に参加した。
さらに選抜された22人のタイ人教員が日本へ渡り京都コンピュータ学院でコンピュータ技術講習を受けた。
教育ミュージアムセンター(タイ,バンコック)内で行われた短期集中コンピュータ技術講習会には,タイ人コンピュータ教員並びに教育行政官ら57人が参加した。
寄贈パソコン全てがタイ国内17ヶ所にそれぞれ設置された。コンピュータ利用技術開発プログラムが展開され,今なお,提供され続けている。
1,BASIC言語を用いたプログラミングを教授し,コンピュータの初歩教育を広く国全体に普及させること。以下の4つの主課題からなる。
-コンピュータ利用の基本的知識
-BASIC言語
-フローチャート,プログラム設計
-アプリケーションプログラミング技法
2,カリキュラム,マニュアル,教材などを開発すること。
3,年間3600人以上のコンピュータ利用関係者に対して訓練の機会を提供すること。
4,年間20以上のソフトウェアを開発すること。
5,以上をベースに1992年には,あらゆる分野,職域でコンピュータ利用研究を発足させること。
コンピュータ利用能力養成講座は,タイ国全土,各地区のノンフォーマル教育センターで開設されている。地理的に,それぞれの開催地はかなり離れており,したがって,パソコン設置ならびにコンピュータ利用研究のプログラムはその研究の成果・効果を確実なものとするため,その設置と開設にかなりの時間と労力を用した。その結果は左に示す通りである。
京都コンピュータ学院および日本万国博覧会記念協会(1970年)の援助により,ノンフォーマル教育局は,タイ国内のそれぞれの地域(16地区)でコンピュータ利用技術能力養成プロジェクトを開催することができるようになった。この教育体制は,最近の業界の需要にかなっている。しかしながら,教育訓練の質はまだ,改良される必要があり,利用可能な席の数についても,増やす必要がある。そして最終的には,プロジェクトを残る57地区にもできるだけ早く拡大せねばならない。
タイ国におけるコンピュータ利用研究の振興のために,次のような活動計画を提案する。
1,人材開発は重大な課題である。インストラクターの専門的知識を向上させねばならない。例えば,現職のコンピュータインストラクターのための連続集中トレーニング講習会(アドバンスドコース)を開設すべきである。
2,より多くのコンピュータインストラクターを募るには,仕事量を多少緩和する必要がある。このことは,より広範に使えるコンピュータプログラムを開発する時間を十分に与えることにもなる。
3,最近主流となっている新しいモデルのコンピュータも使用可能にすべきである。それらは業界の需要に応じた性能を持っており,受講者のニーズにも合った新しいカリキュラムの提供を可能にするからである。
なお,選定された17の施設からは,大別すると次の2つの範囲で教育ミュージアムセンターに対し支援を要請してきている。
1,設備に関して
-ラムパックとディスクドライブがもっと必要である。
-より高性能なパーソナルコンピュータが必要である(16ビットかそれ以上のものが好ましい)。
2,人材の開発に関して
-教授法並びに上級プログラミング開発技法のトレーニングがより必要である。
-BASIC言語を用いてのプログラミング開発技法,すなわち教育的ビデオゲーム,電子制御,データベース,そして,例えばPASOPIAを有効利用するためにアセンブリ言語を用いるような他の技法,それらに関するワークショップが必要である。
(訳-山崎)