京都コンピュータ学院の推進している対タイ情報処理教育振興事業の一環として,1990年10月9日,タイ人研修生22名が来日した。今回来日したのは,バンコックでの講習会参加者から選抜された成績優秀者で,26歳から44歳までの高校教師,教育ミュージアムセンターの教職員である。本学院でより高度な情報処理技術を学ぶため,日本万国博覧会記念協会の交付金により来日したものである。
成田に到着した一行は,東京に向かい浅草や皇居などを見学してまわり,その晩,東急文化村オーチャードホールで催された歓迎チャリティコンサートでは,来日されたティエンチャイ文部大臣から激励を受けた。
翌10日,新幹線で東京を発った一行は,京都駅で学院の教職員・学生の出迎えを受け,宿泊先に向かった。
今回,宿泊先となった大宮インターナショナルハウスは,学生と交流する機会を増やし学院の一員として研修生が学べるように,京都コンピュータ学院大宮学生寮に隣接している。また学院の教育理念に基づき,自ら学ぶ自由実習が行えるように,各部屋にパソコンが1台ずつ設置されている。
翌11日には,京都市国際交流会館で歓迎パーティが催され,タイ国から文部省社会教育局長スラット博士とブーリョン氏率いる教育ミュージアムセンターのスタッフが臨席された。まず,スラット博士がスピーチされ,このプロジェクトの意義について,それが単なる経済協力と異なり,教育の面に関わる協力であること,そしてそれが政府レベルではなく,民間レベルで為されたことにあると述べられた。このような試みは両国の永い交流の歴史のなかで,初めてとのことである。
それを受けて,京都コンピュータ学院・長谷川靖子学院長は,日本の情報処理技術の黎明期に,全国に先駆けてその教育に取り組んだ体験をタイに伝えたいと述べた。
10月12日からの講習会は,京都コンピュータ学院,百万遍校と高野校の2校舎を会場として開かれた。百万遍校では,ソフトウェア講習として大型汎用機ユニシス2200/402の端末を使用してC言語の講義がされ,タイ国の情報処理教育の将来展望を勘案した理論的に掘り下げた内容となった。一方,高野校では,ハードウェア講習として既に寄贈された機種のパソコンを解体して構造等について講義がされた。ここでの内容は,帰国後自らの手で寄贈パソコンの保守をするのに役立つ。
講習は月曜から土曜の,朝9時より午後4時半まで開かれ,日曜も修了試験に向け学習会が開かれるなど,充実した日程であった。
講義は主として英語で行われたが,言葉の壁を超えた熱の籠った学院教職員とのやり取りが連日,見られた。
10月22日,講習会の最終日。修了試験も無事終わり,修了式が開かれた。長谷川学院長の,学院で学んだことをもとにしてタイ国情報処理教育のパイオニアとなってほしいとの話の後,修了証が授与された。
10日余りの短い滞在であったが,研修生たちは多くのことを感じ,学んだ。今回の来日は,両国の相互信頼を確かなものとし,振興事業の推進にとって重要な意義を持つだろう。
10月23日,再会を約して研修生22名は成田から帰国の途についた。