「.jp」「.com」でお馴染みのインターネットはビジネスや毎日の生活に欠かせないものになっており『玉石混交』さまざまな情報が飛び交っている。このインターネットアドレスを構成する末尾の文字列はトップレベルドメイン(以下 TLD)と呼ばれ,米国の非営利団体であるICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が管理している。
TLDは国別TLD(ccTLD)と一般用TLD(gTLD)に大別されており,従来,gTLDは「.edu」「.com」「.net」等22種類だったが,2012年ICANNは地名や社名,一般名詞などを冠した新しいgTLD(以下 新gTLD)を募集した。しかし地域名を冠した地理的名称TLDの申請は類似表記による混乱を避ける目的もあり,国際標準規格ISO 3166において定められた文字列を使い,さらに,該当する地域を管轄する自治体の支持書が特別必要になる。
京都府は有識者の審査委員会をつくり,2012年1月「京都」の地名を冠した地理的名称TLD「.kyoto」の管理運営事業者を公募した。審査の結果,IT分野での長年の実績を基に「.kyoto」ドメイン活用の積極的な構想を持ったことが高く評価され,また,公共性のある学校法人であることから,京都情報大学院大学(以下 KCGI)が「.kyoto」の管理運営事業者に選ばれた。2012年4月KCGIは京都府から支持書を得て,地理的名称TLD「.kyoto」の管理運営事業者としてICANNに申請を果たした。新gTLDは全世界から約2000件の申請があり,「.kyoto」は1367番目であった。
2013年7月に管理運営事業者の審査を通過し,ICANNとの契約,権限移譲,接続テストを経て運用を開始し,2015年6月,日本文化の象徴ともいえる裏千家を登録第1号として迎えることになった。
世界的に有名な古都・京都は日本文化の育まれた場所として高い評価とブランド性をもっており,地域経済の大きな原動力にもなっているが,反面,それが損なわれることになれば京都全体の大きな損失になる。KCGIサイバー京都研究所(2015年6月けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)に設立)は「.kyoto」を社会教育事業ととらえ,「情報セキュリティセミナー」や青山学院と提携して「サイバーコミュニティのデザインとセキュリティ管理」講座を開催する一方,KCGIと京都府は2015年5月,けいはんな学研都市の活性化や「.kyoto」を使った京都ブランドの発信強化,人材育成やまちづくりなどを盛り込んだ,連携・協力に関する包括協定を締結した。
さらに京都府,京都市,京都商工会議所等からなる諮問委員会を立ち上げ,連携しながら,京都の品格・文化性を体現するよう安心安全な運営を目指している。
新gTLDは,2014年11月から順次運用を開始しており,既に1000を超えるgTLDが運用を始めている。「.kyoto」は2015年10月から商標権者優先登録(サンライズⅠ・Ⅱ)を開始し,2016年1月優先登録(ランドラッシュ),2016年2月から一般登録を受け付けている。また,「.com」や「.jp」では登録することができない3文字ドメイン「jtb.kyoto」,「oki.kyoto」,「kbs.kyoto」,「ysl.kyoto」等の企業ドメインや「pro.kyoto」,「run.kyoto」,「the.kyoto」等の一般名称の登録も好評である。また今後,京都と結びつくことで特別な価値がつく「gion」「kimono」等のプレミアムドメインや,これまでICANNにより登録が禁止されていた2文字ドメインの登録も計画している。