京都情報大学院大学の提携校のひとつである福建師範大学で講義・実習を行いましたので報告します。
福建師範大学は,2008年に創立100周年を迎えました。福建省の省立大学で,日本で言えば県立大学のようなものです。福建師範大学は省都福州市にあります。福建省は省都である福州市よりも廈門(アモイ)市という都市の方が有名です。
キャンパス(校地)は倉山キャンパスと旗山キャンパスの2ヵ所にあります。まず,倉山キャンパスは古くからあり,現在では大学院主体の研究室や教員室があります。京都情報大学院大学のための教員室もこちらに一部屋あります。昔からの学園都市で,福州市の中心部から少し離れた郊外にあり,近辺には大学や専門学校がひしめき合っています。さしずめ,東京の外神田から代々木にかけての中央線沿線のような感じです。
旗山キャンパスは倉山から10キロぐらい郊外にあり,近年になって大学の大規模化にともなって開発された学園都市です。ここには福州市の主要大学の第2キャンパスがあります。福建師範大学はその中心部にあり,学部課程がこちらにあります。また全寮制で学生は4人一部屋の共同生活をしており,約3万人の学生が所属しているそうです。
さて,私が滞在した宿舎は倉山キャンパスにあり,7階建てのホテル兼留学生寮になっています。そのおかげで日本人留学生と親しくなることができ,現地での生活ではかなり助かることになりました。
ここの留学預科学院の日本留学コースが京都情報大学院大学と提携しており,情報技術と日本語を学ぶようなカリキュラムになっている3年課程のコースです。学科はマルチメディア学科とネットワーク学科があり,複数の学院(日本の学部)の教員が教育に当たっています。日本語は海外教育学院,マルチメディア学科の情報系科目はソフトウェア学院(軟件学院),ネットワーク学科の情報系科目は数学・コンピュータ学院(数学与計算機学院),そして京都情 報大学院大学が教育に当たります。
2007年に提携して,秋に入学した学生が1期生で,本学へは2010年秋に入学する予定です。
2009年3月20日から6月17日までの90日間滞在し,講義を行いました。
講義の一つは,留学預科学院マルチメディア学科2年次の“Flash 実用教程”です。この講義では,はじめの2週間は教育助手として藤野莊基先生が入り,日本のアニメの需要を踏まえて,「どのようなアニメを作ればいいのか」というビジネス戦略を講義して,学生たちによってアニメ制作の方向性を議論しました。そのあと,私はFlash の実習を交えて,4,5人の学生グループでアニメを制作する授業を行いました。
もう一つは留学預科学院ネットワーク学科2年次の“Linux システム応用と開発”です。この講義では,Linux やネットワークの原理からウェブサーバの使い方を講義と実習を交えて行い,最終的には,グループでウェブサイトを構築しました。
2009年10月28日から12月4日までの38日間の滞在でした。
今回は,留学預科学院ネットワーク学科2年次の“Linux システム基本操作”と“Java オブジェクト指向プログラミング”,留学預科学院ネットワーク学科3年次の“ウェブプログラミング”を担当しました。
留学預科学院ネットワーク学科2年次の“Linux システム基本操作”ではLinuxのサーバのことやネットワークの仕組みとHTMLに関して実習しました。
“Java オブジェクト指向プログラミング”では,前半にはオブジェクト指向設計プログラミングの入門として,日本語プログラミング言語「ドリトル」を教材に使いました。日本語で記述するため,日本語の練習にもなり,勉強になったようです。後半ではEclipseという開発環境を使ってJava のプログラミングを行いました。
留学預科学院ネットワーク学科3年次の“ウェブプログラミング”では,PHPとMySQLを使ったウェブプログラミングを実習しました。最近ではXAMPP Liteという極めて軽量なサーバ構築環境があるため,容易に実習環境が整い,助かった次第です。PHPによるプログラミング,データベース設計,サーバ構築など,これまでの学習内容を総合的に利用する科目でしたが,学生たちは大変よく頑張って制作しました。3年次は通訳がつかなかったのですが,優秀な学生がボランティアでアシスタントとして手伝ってくれ,助かりました。感謝するばかりです。
通訳の方がIT用語をご存じないので,こちらがIT用語の日本語と中国語,場合によっては英語も用意しました。日本語のIT用語は英語からカタカナに直したものが多いため,通訳の方もかなり迷うようです。そこで,英語由来のカタカナ用語はすべて英語も併記しました。日中英の3ヵ国語をパワーポイントあるいは紙に併記することも多く,通訳の方の説明も「この言葉は英語の○○由来です」となっていました。ちなみに福建省は中学と高校(高中という)では英語が必修で,英単語の理解があるので,ITを勉強する障害は低いと言えます。
私は,休みの日や空いた時間はほとんど中国語学習に充てていました。結局,中国語がわからないと授業の予習に苦労するのです。予習には日本の3倍かかります。それでも,簡体字がわかるようになると,かなりストレスが軽減されました。中国のIT用語に関しては別の機会に触れたいと思います。
中国では,インターネットが日本ほど高速ではなく,また停電や断線もよくあることですので,ウェブアプリケーションよりはウィンドウズアプリケーションの方が発展しています。ちょうど10年前の日本のITのようです。したがって本学の専攻名になっている「ウェブビジネス」というのはイメージしにくいようですが,ウェブビジネスにつながるような観点で講義と実習を実践的に行いました。
近い将来,本学へ留学する予定の学生ばかりですので,早く日本で勉強する日がくることを楽しみにしています。