ガーナ共和国。西アフリカに位置するこの国は,カカオの生産国として有名で,金・ダイヤモンドなどの鉱物資源にも恵まれている。また,黄熱病の研究で世界的に有名な野口英世博士の終焉の地でもあり日本との関係も深い。
昨年,本学院の推進する国際情報教育振興事業を報じる新聞記事がきっかけとなり,ガーナ大使館からコンピュー夕教育支援の要請が本学院になされた。そこで本学院は,1991年度国際情報教育振興事業のひとつとして対ガーナ情報教育振興事業を行うことを決定し,早速実施することとなった(推進費用についてはチャリティコンサートと日本万国博覧会記念協会による国際交流資金援助で賄う)。
まず,学院所蔵のパソコン208台をガーナエ業科学技術省に寄贈するため,昨年6月学院教職員の見守る中,パソコン搬出作業が京都市内で行われた。当日,ガーナ共和国駐日大使ジェームズ・L・M・エミサ氏より,この事業にかける期待と学院のパイオニア精神を讃えるメッセージが本学院に届けられ,学院教職員ひとりひとりのなかに,国際交流への夢が広かった。
そして,パソコンが無事に到着したというガーナからの報告とともに,今度は現地パソコン講習会を開催するため学院教職員がガーナに渡った。今回は,米国MIT(マサチューセッツ工科大学)からも3名がスタッフとして参加し,現地で合流した。
講習会は首都アクラにあるガーナ共和国科学工業研究センターで,8月19日より約2週間にわたり寄贈パソコンを使用して行われた。
受講者は,ガーナ各地の大学・高校の教員の方々約30名。講習会初日,会場に入ると,受講者達が明るい笑顔で迎えてくれ,コの字型に並べられた机の上には,はるばる海を渡ってきた寄贈パソコンが置かれていた。
講習会に先だって,科学工業研究センター局長R・G・J・バトラー博士,技術移転センター長M・N・B・アイク博士による,参加者に対する激励のご挨拶があった。こうしてガーナ・日本・米国の三ヵ国からの参加者が国籍・人種の別なく交じり合う国際色豊かな講習会が始まった。
講義が始まると,会場のあちらこちらでは神妙な面もちでキーボードに向かう受講者とそれをサポートし,話しかける学院・MITスタッフのやりとりが見られた。講義は学院とMITが順番で受け持ち,それぞれ自らの持てるテクノロジーを伝えようと個性的なジェスチャーを交えて熱弁をふるった。
そのため,最初緊張気味であった参加者は,次第に打ち解けあい受講者からの質問も盛んになった。そして,休憩時間になると中庭で科学工業研究センターが用意してくれたコーヒーを飲みながら,それぞれの文化について語り合った。特に,日本の技術力に敬意を表し,日本についての憧れを語る受講者が多かったことには驚かされた。
また,講義について尋ねると「少々難しいけれど,コンピュータに接することのできる良いチャンスだから,一生懸命やります」と答えてくれた受講者もいた。さらに受講者の中には西アフリカの伝統的な料理フゥフゥの作り方や,ガーナの新聞を手に国内の時事問題を解説してくれる者もおり,情報処理技術を伝えるために参加した学院スタッフも,教える以上に学ぶことが多かった。
文化間の相違を乗り越えて国際交流を行う過程には,様々な難しい局面がありうる。しかしそれを克服し得た時の喜びは何ものにも代え難い。その意味で三ヵ国からの参加者が交流し合った,今回のアクラ講習会は参加者の心に他では得難い感動を与えたと言える。
私は京都コンピュータ学院がガーナ共和国の情報科学教育の振興のために200台のコンピュータ寄贈の申し出をなされたということを東京のガーナ大使館から知らされました。
また,東京のガーナ大使館によれば,日本万国博覧会記念協会より日本への研修生派遣費用として約43,000ドルを支出していただけることになったとのことです。
京都コンピュータ学院と日本万国博覧会記念協会がガーナ共和国における情報処理技術の発展のために好意あふれる貢献をされるに当たり,示してくださったパイオニア精神は,著名な日本人野口英世博士が,ガーナにおいて先駆的な科学研究に身命を捧げ,ガーナと日本の友好関係の礎を築いた伝統に連なるものであります。
ガーナ共和国政府と東京の大使館を代表して,私は京都コンピュータ学院,日本万国博覧会記念協会の皆様の貴重な貢献に対し深甚なる感謝の意を表します。この貢献は,私達の国をあげての独立独行に向けた努力を励まし続ける日本の姿勢を表わし,両国間のきずなをより緊密にする助けになると確信いたします。
ガーナ共和国を始めとする第3世界の国々は,競い合うようにコンピュータ時代への突入を果たす努力をしています。このことがこれらの国々の産業は勿論,科学技術の分野にも活力を与えています。
これに関連して日本の京都コンピュータ学院による200台のコンピュータの寄贈は大変有意義で賞賛に値することです。それはガーナにおけるコンピュータ科学の確立を促進するために役立つことでしょう。科学工業研究センターに属する政策研究所,技術移転センターが大学や総合技術専門学校あるいは他の研究所といった教育機関と協力しながら技術訓練のためにそのコンピュータを使用することになります。
我々は京都コンピュータ学院の寄贈に対して心から感謝いたします。その援助が実りあるものとなることを皆様にお約束したいと思います。