元Google日本法人社長兼米本社副社長の村上憲郎氏による講演会が2013年4月13日,KCG京都駅前校大ホールで開催された。村上氏は,グーグル社のこれまでの歩みを紹介するとともに,今後の同社の戦略,インターネットの潮流などについて分かりやすく解説した。KCGの学生に加え,大勢の一般の方々が聴講した。
ヤフーが創業してから3年後の1998年,グーグル社はスタンフォード大学大学院生により誕生した。村上氏は同社のビジネスモデルとして「世界中の情報を整理して,世界中の人が無料でアクセスできるサービスを提供しようというのが基本です。収入は広告のみ。今は多少,別の部分での売り上げも発生していますが,それでも売上高の約95%が広告収入です」と説明。「当初の設備は,いずれも社員自らが半田ごてやラッピングワイヤーを使って作ったコンピュータ。無料提供のためコストを重視するあまり,コンピュータを買うことができなかったのです」と話した。同社はインターネットの「検索エンジン」として世界で不動の地位を築き,同時にニュース,書籍,位置情報(Googleマップ・Earth),YouTube買収による動画など,次々とサービスの枠組みを広げていく。このうちYouTubeは現在,世界23ヵ国でサービスが提供され,月間10億人が利用しているという。
グーグル社はクラウドコンピューティングサービス対応のため,オバマ政権の「グリーン・ニューディール政策」に乗り,米国各地にコンテナ型のデータセンターを設置。同社の現在の取り組みについて村上氏は「データセンターは,冷却のためにかなりの電力を使いますが,『グリーン』を実現するためにはこの電力コストを抑えなければならない。グーグルは現在,この技術を磨くとともに,太陽光,洋上風力,地熱といった再生可能エネルギーへの取り組みを始めています。同時に,スマートグリッド(賢い電力網)の研究にも余念がありません」と紹介した。
また村上氏は「ICTの新地平」として「スマートウォッチやスマートメガネなど,ウェアラブル(直接身につけられる小さなコンピュータ)に続き,スマートテレビの時代が来ている」と述べた。スマートテレビは,従来のテレビにパソコンやインターネットの機能を加えるだけでなく,レイヤー(階層)構造を持たせた発展形とされる。「エコシステム全体を支えるレイヤーはグーグルをはじめ,アップル社やマイクロソフト社が担当することになるでしょう。実は現在,家電メーカーが受け持つ『物理レイヤー』(ハードウェア)と『コンテンツレイヤー』をつなぐ『アプリケーションレイヤー』部分が,全く手つかず。ここに大きなビジネスチャンスが眠っています」と説明。「米国の学生がチャンスをものにしたように,次は日本の,KCG・KCGIの学生の皆さんが第二のグーグルを目指してほしい」と呼びかけた。また,ビッグデータについて「今は1.0〜1.5の段階。米国国防総省ではAI(人工知能)技術の研究開発が急がれています。日本でもIT融合フォーラム有識者会議が発足するなど,着々と歩を進めています」と紹介した。