京都コンピュータ学院の海外コンピュータ教育支援活動は,今年で5周年を迎えた。かえりみて学院保有のパソコン2000台を途上国に寄贈し,コンピュータ教育の普及に貢献しようと考えたのは1989年春であった。その後5ヵ年の間に,プロジェクト対象国は,タイ,ポーランド,ガーナ,ケニア,ジンバブエ,ペルー6ヵ国に及び,いずれも各国教育省・科学技術省の積極的な協力を得て予期以上の成果を次々と上げた。私達は,各国から教育大臣賞,科学技術大臣賞などを受け,また現地の寄贈パソコン設置校(各国約15~20校)から多大の謝辞をいただいた。
しかし,このプロジェクトの意義を理解し促進してくれた各国現地政府の積極的な協力に対し,私達の方も,心から感謝せねばならない。なぜなら世界初と言われたこのプロジェクトの成功は,世界の情報教育パイオニアとしての本学院の輝かしい歴史創りとなり,また各国でのコンピュータ・リテラシーの普及の実りは,本学院の文化遺産として継承されていくからである。本プロジェクトのレポートをハーバード大学国際教育研究所へ提出したところ,来る3月末,ボストンで開かれる比較・国際教育の国際学会で取り上げられることになり,2時間1ルームのプレゼンテーションが,私達に与えられた。
さて,21世紀技術革新はマルチメディアの全面的展開から始まると言われている。アメリカでは1985年,マイクロソフト社がウインドウズを発表し,マルチメディア路線がスタートしたが,日本では,遥かに遅れて,1994年が日本マルチメディア元年と言われた。一方,米国ゴア副大統領の情報スーパーハイウェイ構想は世界的に大きなインパクトを与え,米国主導の下,国際情報スーパーハイウェイは,世界各国の熱狂的な支持で進められつつある。時代はまさに,マルチメディア,国際ネットワークの幕開けである。国際ネットが広域化し,ネットワーク系としてのマルチメディア社会が成熟し始めると,途上国ほど著しい発展が予想される。
情報の伝達が速ければ速いほど,入手可能な情報量が多ければ多いほど,技術文明の伝播,浸透は急速である。途上国はおそらく先進国が歩んできた工業化社会を飛び越えて,いきなりマルチメディア技術社会に突入するだろう。過去5ヵ年,本学院が支援してきた6ヵ国の国々に対して,さらに新しく支援対象国に予定されている4ヵ国も含めて,いつまでも私達は支援する側,指導する側ではないと思う。これらの国々と,国際コンピュータネットワーク上で,教育と技術の交流が対等の実力関係で,より活発化されていく日も近いだろう。本学院が「世界の中の日本」,「コンピュータ最先端国・日本」を代表するコンピュータ教育機関として,国際的に活躍する場は,まさに国際情報スーパーハイウェイ上にある。
その基礎がためとしての国際関係の確立という視点においても,本学院の海外コンピュータ教育支援活動の意義は大きい。
上記の肩書・経歴等はアキューム22-23号発刊当時のものです。