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Accumu Vol.16

IT を YouT へ-株式会社日本システムディベロップメント

KCGは,社長や役員を務めている卒業生が多い。コンピュータ業界の大手である株式会社日本システムディベロップメント(NSD)も,卒業生が役員を務めている。取締役執行役員を務めている西口嘉一さんにお話を伺うため,同社大阪支社を訪問した。インタビュー中に,次から次に同社で活躍するKCG卒業生の面々が集まってくださった。NSDではKCG卒業生の100人近くが在籍する。気がつけば,KCG同窓会。

大手有名企業で役員を務めるKCG卒業生

取締役執行役員・ITサービス本部本部長 西口嘉一さん
取締役執行役員・
ITサービス本部本部長
西口嘉一さん

大阪市の中心部,淀屋橋のオフィス街にNSD大阪支社はある。大手企業の立派なオフィスが軒を連ねているが,ひときわ目立つ最新のインテリジェントビルは,NSDの自社ビルだ。広々とした1Fロビーで,同社取締役執行役員・ITサービス本部本部長の西口嘉一さんが,直々に迎えてくださった。

西口さんは,KCGの卒業生(洛北校・情報科学科・1977年卒)。もともと「ものづくり」に強い関心があり,コンピュータに興味をもって,KCGに入学したという。

西口さんが在学していた1970年代といえば,パソコンはまだ存在せず,大型汎用機が全盛の時代だった。KCGの歴史を紐解くと,1972年に国産汎用機のTOSBAC3400(東芝製)を学内に導入して学生の実習用に開放し,大きな話題となった。1975年には,日本で最初に学生実習用にTSS(タイム・シェアリング・システム)が稼働するなど,KCGは情報教育のパイオニアとして時代を切り拓いていた。西口さんが実習で使用したTOSBAC3400は今でも学内のコンピュータミュージアムで保存されている。

西口さんは1977年に,NSDに入社。入社当初,西口さんがプログラマとして携わったのは,銀行端末のファームウェアの開発であり,その後銀行のオンラインシステムの開発を行った。「5年ほどやりましたね。オンラインシステムの開発は,一コマ,一コマの開発という感じでしたが,できればシステム全体を自分が把握して開発してみたいと希望していました。次に携わったのは,物流システムの開発です。これは全体を把握して開発する仕事でしたので自分の希望が実現しました。これが4年ほど。その後農協や地方自治体の総合システムの構築を5年ほど経験してから,開発現場を離れ,管理部門に移りました」

そして現在,西口さんは同社の役員として東京,名古屋,大阪を行き来しながら,忙しい日々を送っている。1969年に大阪で設立されたNSDは,順調に業績を伸ばしながら,東証・大証1部に上場。現在,東京に本社を一元化し,コンピュータ業界トップクラスの収益力を誇っている。

国内有数のSI企業として

株式会社日本システムディベロップメント

SI(System Integrator:システム・インテグレータ)という言葉がある。現代の企業は業種を問わず,コンピュータ技術に基づく情報システムの上に成立し,業務を遂行している。企業の基礎となる情報システムは,企業活動の根幹を支えているといえ,効率的効果的な情報システムの導入が,企業の命運を左右するといっても過言ではない。SIとは,顧客である企業の業務内容を分析し,その企業のニーズにあわせた情報システムの企画・構築・運用などの業務を請け負う職種。情報システムの企画・立案からプログラムの開発,必要なハードウェア・ソフトウェアの選定・導入,完成したシステムの保守・管理までを総合的に受け持つ。NSDは,日本有数のSI企業だ。

かつては,ハードウェアやソフトウェアの互換性が低く,結果として,ハードウェアのメーカーが自社製品を販売し,システム開発・運用を行うことが通例だった。しかし,1990年代以降,情報システムが一つのメーカーのハードウェア及びソフトウェアで完結しなくなった「オープンシステム化」の流れのなかで,様々なメーカーのソフトウェアやハードウェアを組み合わせて最適な情報システムを構築することが可能となり,特定のコンピュータメーカーの系列ではない,NSDのような独立系のSI企業の活躍のフィールドが広がった。

SI企業が具体的にどのような業務を行っているのか,おそらく一般の人にはわかりにくいかもしれない。NSDが開発に携わっている情報システムの例をとれば,金融機関のオンラインシステム,交通機関の予約システムや運行管理システム,テレビ中継システムや選挙速報・スポーツ中継システム,証券取引システムなどがある。いずれも私たちの日常生活に深く関わっていて,それらの情報システムなくしては,社会生活が成立しないだろう。NSDは,銀行や鉄道など様々な業種の企業を顧客として,システム開発に携わりながら,その結果として,わたしたちの日常生活を支えているといえる。

NSDのキャッチフレーズは,「IT を You Tへ」という。その意味について西口さんにお聞きした。「日本の産業界では,まだ情報技術の導入に乗り遅れている企業も多いのが現状です。経営陣のITに対する知識も乏しく,何をどうしていいのか,わからない場合も多い。ITを中々身近には感じられない状況にあるといえるでしょう。当社は,そうした企業様にも,ITを身近なものとしていただくためのサポートを様々な形で行いたいと思っています。You Tという造語には,ITをあなたの身近なものにしたいという我々の気持ちが表現されています」

IT・コンピュータ業界で働くということ

西口さんは,システム開発の仕事の面白さについてこのように語る。「醍醐味は,その達成感にありますね。お客様からの要求に応えるためには,それ相応の大変な局面もあるわけですが,それをクリアしてシステムが動き出したときの達成感は,他に替えがたいものがあります。最初に開発をして,プリンタに文字が表示されたときの感動,イメージしていたものが,実際に動き出したときの感動は,今でも忘れられません。ものづくりの面白さがあります」

システム開発の仕事は,社会の基礎を支えている。仮にシステムがダウンすれば,それは即ち,社会の混乱や場合によっては人命にすらかかわる。「私が管理している名古屋支社では,自動車関連の制御系のシステム開発をしていますが,これなどは,自動車ということもありますので,一歩間違えば,人命にもかかわるわけで,責任重大だといえますね。やはり開発者には高い倫理観が求められるといえます。それがプレッシャーともなりますが,仕事のやりがいともなります」

自動車や携帯電話など,私たちの身の回りのあらゆるものにコンピュータが組み込まれている。知らず知らずのうちに,私たちはコンピュータに依存し,それなしでは生活できない時代を生きている。この時代を支えているのが,コンピュータ技術者なのだ。

NSDの会議室で西口さんにお話を伺っていると,扉がひらき,次から次に人がはいってくる。その皆さんは,NSDで活躍しているKCGの卒業生だ。西口さんが声をかけてくださり,仕事の合間を縫って,会議室まで足を運んでくれたのだ。現在,NSDには,100人近い卒業生が働き,管理職など重要なポストで活躍する卒業生が多い。

そのうちのお一人に仕事のやりがいを尋ねた。その方は,企業の情報セキュリティの管理を担当している。「私が携わっている仕事では,何も起こらないことが,達成ということになります。普段から,何も起こさせないぞという緊張した気持ちで業務に携わっています。24時間,365日,社会を支えているということを誇りにしています」と。

「弊社には,一生客という言葉があります。創業以来,あるいは20~30年来の長い取引をしているお客さまのことです。一生客といえるようなお客様との関係が,NSDの強みです。やはり大切なのは,しっかりとした信頼を築くことですね。」と西口さんは言う。

求められる人材とは

ITサービス本部 ITサービス部 嶋津佐和子さん
ITサービス本部
ITサービス部
嶋津佐和子さん

会議室に続々とKCGの卒業生が入ってきて,和気藹々とした雰囲気になった。そのなかに2007年4月に入社したばかりの新人二人がいた。ITサービス本部 ITサービス部の嶋津佐和子さん(情報科学科卒)に在学中のことをお聞きした。「私の場合は,美術系の大学を卒業してから,KCGに入学しました。入学当初は,パソコンの電源の入れ方もわからない状況でした。KCGでの3年間を通じて,一からコンピュータについて学びました。自分の経験から言っても初心者の方でも大丈夫です。やはりIT・コンピュータの技術を持っていると有利に就職活動を進めることができるので,将来に不安な方にはぜひトライすることをお勧めします」。

ITサービス本部 運用サービス部 井上令さん
ITサービス本部
運用サービス部
井上令さん

もう一人,ITサービス本部 運用サービス部の井上令さん(情報科学科卒)に社会人になった感想を聞いた。「現在,運用の仕事に携わっているのですが,途切れることなく継続しなければならないので大変です。やはり社会に出て思ったのは,コミュニケーション能力の必要性ですね。もちろんコンピュータ関連の専門的な知識も必要ですが,やはり仕事では,人と関わることになりますので,きちんとコミュニケーションがとれないとまずいですね。KCG在学中には,どんな人とでも付き合えるように心がけていましたが,そうした姿勢で学生時代をすごした結果,自然とコミュニケーション能力を身につけることができたと思っています」。

時々,「プログラマ35歳定年説」という話を聞くが,実際のところはどうなのか,西口さんは「自分の経験から言っても,ナンセンスです。確かに,技術の進歩は速く,新しい開発言語をマスターするなど努力は欠かせませんが,基本的なシステム設計の思想などは変わることがありません。年齢や経験を重ねれば重ねるほど,設計思想に深みが出てきます。ですから35歳で定年というのは意味がないです。弊社にもスーパーSEといえるような存在が沢山いますが,そういう存在になるには,一定の経験や年齢が必要です」という。

日本の社会の基盤を支えるNSD,そこで多くのKCG卒業生が活躍をしている。出会った卒業生は口を揃えてこう言った。「どんどん優秀な後輩がNSDに入社することを待っています」

会社概要
株式会社日本システムディベロップメント

 
社 名:株式会社日本システムディベロップメント
本 社:〒163-0777 東京都新宿区西新宿2-7-1 新宿第一生命ビル
設 立:1969年(昭和44年)4月8日
資本金:72億500万円(2007年3月31日現在)
売上高:412億200万円(連結)
     365億700万円(単独)=2007年3月期
従業員数:3,632名(連結)2,474名(単独)=2007年3月31日現在
事業内容:システム分析・設計の受託,プログラム開発及び受託
     コンピュータ室運営管理,ソフトウェアプロダクト
上 場:東京証券取引所 市場第一部(1999年11月)
     大阪証券取引所 市場第一部(1998年9月)