本学院はこれまでに,タイ,ポーランド,ガーナ,ケニアなど,多くの国々にコンピュータを贈り,現地の教育者に対し情報教育の研修を行う海外コンピュータ教育支援活動を行ってきました。この活動以外にも,1994年より国際協力事業団(JICA)に委託され,海外からの研修生に対する情報教育の研修を行っています。これまでにメキシコ,サウジアラビア,タイ,エチオピア,ガーナ,ケニア,タンザニア,マラウイ,ザンビア,ジンバブエ,南アフリカの方々が本学院でコンピュータ技術を学ばれました。
国際協力事業団(JICA:Japan International Cooperation Agency)は通産省外郭団体で日本の発展途上国に対する政府開発援助(ODA)を担当する機関であり,資金,人材面で発展途上国に協力活動を行っている。JICAでは,海外から受け入れた研修生を会社,教育機関へ委託研修のかたちで派遣している。普通,研修先には大きな会社や,国・公立大学,公立高校などが選ばれ,本学院のように私立の専修学校が研修先に選ばれたのは初めてのことである。これはおそらく本学院が1989年から行っている,本学院所蔵のコンピュータを発展途上国に寄贈し,現地教育者に対し情報教育を施すという海外コンピュータ教育支援活動がJICAで評価されてのことだろう。1994年,サウジアラビアから来た研修生2名を皮切りに11カ国から延べ34人の方々が本学院にてコンピュータ技術コースを学ばれた。
このコースはコンピュータ技術全般にわたる講義・演習により構成され,特にプログラミングに力を入れ,ハードウェア,データベース,ネットワークに関する研修を行う。講義は英語の話せる学院スタッフが中心となって行うが,スケジュールの都合がつかないときなどは通訳を通して講義をする。このような研修では,コミュニケーションがうまく図れるかどうかで研修成果に大きく影響するので,英語のできるスタッフをそろえておくのはたいへん重要なことである。通訳を介しての講義は難しい課題であり,通訳といってもコンピュータに関する知識は持ち合わせていない場合が多いので,まず通訳の人を理解させてからということになり,スタッフは本来の講義以外にも相当の労力をはらうことになる。
このプログラムはアフリカの八つの違う国から派遣された合同の研修で,研修生の方々のバックグラウンドも大学で教えている人,大蔵省や大統領府などの官公庁で統計の分析をしている人,企業で働くプログラマなどさまざまであり,必要とする技術や知っている知識もまちまちである。したがって研修に対する満足度,講義の理解度は人によって違ってくる。ある人は特定のことに関してとてもよく知っており,理解も早いが,違う研修項目ではなかなか理解してもらえないことが起こる。しかしながら,私達はどの研修内容もよく理解してもらおうと熱心に対応するので,結果として研修に対する評価もおおむね満足のゆくものとして提示された。
8カ国からの研修生は皆気さくで,お互い仲良く勉強していた。とくにハードウェア研修で行ったコンピュータの組み立ての実習のときには,ああでもない,こうでもないとひとつのコンピュータに数人が寄り集まり意見し合いながら組み立てていた。皆,コンピュータを触ることはあっても自分で組み立てることなど初めてで,まるで子供が新しいおもちゃを与えられたみたいに眼を輝かせて勉強していた。
研修の一環として東京で開催されたビジネスショーを見学する機会があり,新幹線で東京へ移動したのだが,新幹線も初めてでとてもはしゃいでいた。きっと,休憩時間に校舎の窓から通りすぎる新幹線を毎日見ていて,あれに乗るのをとても楽しみにしていたに違いない。
メキシコからの研修生は女性2人であった。彼女達はマルチメディア技術を修得するために京都コンピュータ学院へ派遣されてきた。ほかの研修とは違い6カ月と長期の研修で,講義・演習以外にも,自主研究の時間を多くとり入れた。テーマとしては日本と京都の観光案内をインタラクティブな操作でブラウズできるCD-ROMコンテンツの作成を掲げた。京都は日本文化の中心地でもあり,彼女達は観光スポット,日本文化などの資料収集と研究に京都中を歩き回り,夜遅くまで資料をまとめていた。祇園祭にはビデオカメラを下げて1日中人ごみのなかに山車を撮影し,日本の歌手のCDを買い,手相のことを調べるなど,とても熱心に日本文化を研究していた。おかげで彼女達の作品はすばらしいものになり,JICAで成果発表をしたときには満場から拍手のくる満足のゆくものとなった。
サウジアラビアからは1人の研修生が来られた。JICAから派遣されるには英語が自由に話せることが条件なのだが,彼はそれほど達者ではなく,普段の簡単な会話でも苦労するくらいであった。彼は本国ではいわゆる官僚で位の高い人だったので,英語がうまくしゃべれないというコンプレックスと,プライドの高さから,最初は緊張しているようであり,いつもひきしまった冷たい印象を与える表情をしていた。サウジアラビアはイスラム教の国で,1日5回メッカに向かってお祈りをする。研修期間中も彼は欠かすことなくお祈りをしていた。我々が彼の信仰心を尊重し,ウェルカムパーティではイスラムの方法にのっとったハラール・ミートという特別な肉を注文して料理を作ったり,お祈りの間は研修を少し中断したりすることで,我々の彼に対する態度が理解してもらえたのか,研修を進めるうち徐々に気持ちも打ち解けてきてなごやかな表情になってきた。
期間中,彼をスキーに連れていくことになった。もちろん彼にとっては初めてのスキーであり,まずスキーブーツやスキーウェアをレンタルするところから,これはどうやって履くのか,ブーツは歩きにくいなどいろいろ疑問を投げかけてきた。いざゲレンデへ出てスキーをし始めるとなかなか運動神経が良い人で,初めてにしてはうまく滑れた。何度も何度もスキー板をかついではゲレンデを登り,滑って降りる。こちらが疲れてしまうくらいだった。このような勉強以外のところでも接触を持つことでお互いのことを理解しあえたと思う。研修が終わる頃にはすっかり私達と打ち解けて,最後にはスタッフ一人ひとりにお土産をプレゼントするほどであった。
私達は研修を通して国際協力を行ってきたわけだが,期間中さまざまなかたちで京都の街,文化を紹介することや,彼等といろいろなことについて話すことで国際交流にも貢献できたと思う。実際,学院スタッフのなかには英語が上手に話せない者でも毎日研修生と接するうちにすっかり打ち解けて仲良くなった者や,「おはようございます」と毎朝交すあいさつで慣れ親しみ合ってきたスタッフもいる。さまざまな国からそれぞれ異質な文化のバックグラウンドを持った人達であるが,本学院で学ぶうちに日本的なものの考え方や,日本人の人に接する態度を学びとってもらったようだ。イスラム,メキシコ,アフリカ文化,そして日本文化とそれぞれ異なる文化だが,そのときどきで相手のことを理解しようと努力することにより,異文化の壁は取り除かれ人間対人間のつきあいができる。この学院に学ばれた研修生の方々はみな異口同音にわれわれの彼等に対する態度や心遣いに感謝を表わしてくれている。
家族やカップルや友達同志が花見で楽しんでいるのがとても印象的でした。
人生とはシンプルなもので,あなたが正しい人と,正しいところで,正しいときに,正しいことをしているととても楽しいものです。それが京都コンピュータ学院でした。トレーニングはとても良く教育的でした。講師のいつもスマイルの表情が我々をアットホームな気分にしてくれました。
ここに来るまで日本の事はほとんど何も知りませんでした。日本人というのはとても元気な人達です。花見のとき,これがあの24時間・週7日いつも忙しく働いている人達かと信じられませんでした。私はいつも電車に乗ると聞こえてくる「茨木,茨木です。次は高槻に停まります。」を思い出すでしょう。
設備:とても良い。講義:良い。講師:とても良い。いつも辛抱強く我々の問題点を解決しようとしてくれる,そしてフレンドリー。
私の日本での滞在はとても興味深いものでした。いつでも訪れられるようなとても美しい場所がたくさんあります。私は日本人が電車の中などで親しい人以外は挨拶をしないことに気が付き,驚きました。ビジネスに関する日本人の態度は賞賛に値するものがあります。彼等はいつも時間を大切にし,遅れそうなときには走り出す人も珍しくありません。また,駅や京都コンピュータ学院がいつもきれいに清掃されているのにとても感動しました。彼等は何度も何度もきれいに保つため清掃しています。私は京都コンピュータ学院の環境がとても好きです。
私がここに来て3ヶ月が経ちました。私は皆さんがしてくれた様々な援助とトレーニングに関してお礼を言いたいと思います。すべてのスタッフに感謝します。
ケニアを代表して講師の方々,学生のみなさん,すべての関連スタッフのみなさんに対し,ご協力ご尽力してくださって感謝をいたします。短い期間でしたけれどもスイートな,思い出深い滞在でした。
コンピュータ技術者として私のコンピュータに関する知識と技術は,以前よりたくさん修得することができました。もう少し期間が長ければ,もっと京都コンピュータ学院は我々にたくさんのことを与えてくれたでしょう。
すばらしい設備を提供してくださいましてありがとうございました。京都コンピュータ学院の講師はベストで,彼等からたくさんのことを学びました。私は京都コンピュータ学院のすべての人達をなつかしく思うでしょう。