本日は,ご多忙の所,京都情報大学院大学開学記念式典にご出席くださいまして,心から御礼申しあげます。
さて,コンピュータ,インターネットの急激な発展・普及により,企業形態,ビジネス・プロセス,ライフスタイルは,ここ十数年間で大きく変容してきました。この変容をおこし,促進させた技術革新は,人類史上に例をみないほど,めざましいものでした。この技術開発はほとんどアメリカの独壇場でしたが,その後,これを受けて,世界の各先進国は,IT教育の時代即応と変革に挑み,IT人材の開発を活性化していきました。日本はこの間,経済不況にあえいでいたことにもよりますが,日本のIT教育の時代即応と変革は遅々たるものでした。従って,日本高等教育改革の一環として,専門職大学院が法制化された時,私たちは暁光を見る想いで,京都コンピュータ学院を母胎としたIT専門職大学院として,京都情報大学院大学の設立に着手したのです。
京都コンピュータ学院は,日本最初のコンピュータ教育機関として,41年前に創立され,以来,進化の激しいコンピュータ分野において,先駆的,革新的教育により,3万6千人以上の人材を情報化社会に供給し続けております。この伝統と実績において,日本最初のIT専門職大学院を設立することは,「選択」ではなく「必然」でした。
専門職大学院開幕という歴史の大きな節目にあって,この新しい波をどう受け止め,どのように波に乗るべきか,トップランナーには重大な社会的,時代的責任が課せられます。
しかし,京都コンピュータ学院には,文部科学省の護送船団に加わることなく41年の風雪に耐えてきた「経済の自立・精神の自立」の歴史があり,また,熟成してきた独自のアイデンティティと,先駆的革新的なIT人材育成の日本最長の経験があります。新しい波に乗るべき自信は,これら堅固な知的基盤から生じました。
IT社会の高度かつ多様な人材ニーズに応え,さらに来るべきユビキタス時代のビジョンにおいて,従来以上の高度な技術,幅広い知識を有した高度なIT専門家を供給することは緊迫した課題です。それは,日本高度情報化社会の実現と,日本経済再生に大きな貢献をもたらすでしょう。私たちは,ここに今回の専門職大学院の意義を認め,その実現を自己の責務として受け止めました。
私たちの建学の理念と情熱は,有能な人材を渇望する多方面の業界や,高等教育改革を望む数多くの大学教員の支持を受け,新しい専門職大学院の設立は,現況の大学に関連する諸問題に対するソリューションとして構想が展開されました。
日本最初のIT専門職大学院設立にあたり,従来の大学と業界の乖離を改善すべく,「業界オリエンテッド」の視点・社会ニーズの重視を研究・教育の指針とします。そのため,教育哲学は,「実用と実践のための学問・技術」に価値をおくプラグマティズムに立脚し,業界で役立つ学問・技術の研究・教育に徹します。
IT時代が要求する専門領域は,大学の専門分化システムと対応しないため,従来のいくつかの専門分野を「情報」という視点で再編成し,新しくできた融合領域・境界領域に専門学科をまったく新しいカリキュラムにおいて設立し,時代・社会が求める,より高度な実践技術力を持ったプロフェッショナルズの育成を目指します。
来年以降,類似のIT系専門職大学院が次々と誕生していくでしょう。しかし,プラクティカルな「即戦力養成」を目標とした,いわば「職業技術訓練校の高度化」と,本来のプラグマティックな専門職教育とは一線を画すものです。私たちが意図している専門職大学院では,実践志向教育といえども,単なるプラクティカル教育でなく「実用のための学問,実践のための技術,そしてその効果」を重視するプラグマティズムに立脚した研究と教育を目指しております。その源流は,ハーバード大学やコロンビア大学をはじめとするアメリカの高等教育機関に求められるものです。
ここ十数年間のめざましいITの開発と活用が,ほとんどアメリカの独壇場であったのも,アメリカにおける有史以来のプラグマティズム教育基盤あってこそと分析されます。従って,私たちは,ITの先駆的教育構築の照準をアメリカに定め,ロチェスター工科大学,コロンビア大学,イリノイ大学との連携において,研究・教育の開発,発展を進めます。
さらに,IT専門職大学院として発展していく過程で,私たちは,IT高度技術の研究・教育に加え,IT高度技術の途上国への普及にも情熱的に取り組む所存でおります。京都から世界へ向かっての情報文化発信は京都コンピュータ学院の伝統であり,京都情報大学院大学においても,それを継承し,地球サイズのIT化実現に努力します。
以上,簡単ですが,新設大学院に臨む私たちのスタンスを述べさせていただきました。
IT系では最初でかつ唯一の専門職大学院として認可されました。私たちの大学院大学が一つのモデルとして,疲弊した日本高等教育界に新風を送り,社会的に機能する大学・大学院が次々と生まれていく導火線ともなれば,私たちにとって無上の光栄と喜びになるでしょう。
小さな大学院ではありますが,燦然と輝くダイヤモンドの輝きを目指します。
皆様方の温かいご支援,ご指導のほど,どうぞよろしくお願い申しあげます。
上記の肩書・経歴等はアキューム22-23号発刊当時のものです。