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Accumu Vol.1

上空700kmからの視点 創立25周年記念式典式辞

京都コンピュータ学院情報科学研究所

所長 上野 季夫

上野 季夫

私は,今ご紹介いただきました上野でございます。

ただ今から,本学院の先程のお話の補足と情報科学研究所のご紹介をいたします。本学院の案内書をご覧になりました方は,その冒頭の数ページに宇宙物理学に関するところのきれいなグラビア版をご覧になったことと思います。これは,本学院の学院長が京都大学理学部宇宙物理学教室の女子学生の第1号として,それから大学院に進学されまして,この宇宙物理学に非常に関心を持たれたことによると思います。学院長は学部の在学中において,大変優秀な成績を修められました。また,大学の博士課程在学中におきましては,非常に興味のある,また,学問的に価値のあるいろいろな研究をされましたが,その内の一つはこの恒星大気における輻射の輸達の問題でございました。学院長の女子学生の第1号に続きまして,私が京大を辞めます14年前までの間に数人の女子学生の方が大学院の博士課程を修了しました。そして今は,各大学の教授になっておられると聞いております。

なお,この宇宙物理学が,本学院コンピュータ・センターパンフレットの冒頭のページを飾っておりますけれども,これは宇宙物理学だけではなく,今日におきましては,地球物理学及び物理科学の各部門におきましても,非常に高速の電子計算機によるところの数値計算を必要としておると思います。

今から30年前の学院長をご想像になることができるでしょうか。皆さんの中にはまだ,その頃にはお生まれになってない方もおられると思いますが,30年前の学院長は,非常にかわいい,そして,しかし芯のしっかりした女子学生でございました。

次にこの情報科学研究所のご紹介をいたします。昨年私が金沢工業大学から移りました時に,この情報科学研究所を創っていただきまして,ただ今,お世話をいたしております。なお,同名の情報科学研究所が金沢工業大学に私が14年前にまいりました時に創っていただきまして,13年間お世話をしてまいりました。

それではこの情報科学研究所で何をするか,その研究の遂行の特色が何であるかということをご紹介いたします。理論的に申しますと,多重散乱問題の確率論的な,及び解析的な研究をいたしております。少し説明をいたしますと,これは,数値解析におきまして,2点境界値問題を初期値問題にいかに効率的に転換するかという問題につながるかと思います。その他,それの応用といたしまして,我々は今,約700キロメートルの上空におきます人工衛星から撮った画像の補正,分類,解析を主としていたしております。その応用は何であるかと申しますと,土地被覆の分類,土地利用,それから地図の校正,及び植生環境の改善に役に立っていると思います。

次に,その研究の遂行の特色でございますが,これは共同研究にあるといってさしつかえないと思います。この共同研究は,これを国際的及び国内的と分けることが出来るかと思いますが,国際的な共同研究と申しますと,31年前にパリの天体物理学研究所において始まりました。しかし,実際の活発な共同研究というのは,28年前に,動的計画法創設者で有名なリチャード・ベルマン博士にランド研究財団に呼ばれまして,同時にカリフォルニア大学ロサンジェルス校の気象の教室にご厄介になった時から始まりました。

それから,14年前,金沢工業大学にまいりますまで,数名の著名な米国の研究者とご一緒に仕事をいたしておりました。通算は約6年でございます。しかし,この国際共同研究と申しますのは,日本におりましても出来ましたので,その一つは京大におりました時に,それから金沢工大におります時に,日本学術振興会から,日米の共同利用の研究という項目で,それぞれ約3年間,研究費を頂戴しておりました。その時には,勿論日本におきますところの共同研究者は,国内の共同研究者の一人でございます。通算約12年程国際共同研究というものはしておったわけでございます。

しかし,国内共同研究というのは,もっと歴史がございまして,私が戦後復員して,宇宙物理学教室に戻ってまいりました時に,当時旧制の大学院の学生の方がおられまして,ご一緒に仕事をいたしました。しかし,その方の1人はもう東大の教授になりまして,2,3年前に引退しております。しかし,実際の最近の共同研究というのは,私の講座を出られた方が,それは学院長の後輩でございますが,そういう方々と10人程でございますが,一緒になりまして,今でも共同研究をいたしております。しかし,その勤め先はいろいろでございまして,金沢工大,岐阜大学,東京理科大とか,あるいは国立の気象研究所におります。勿論,天体物理に関しましては,未だに宇宙物理学教室の方々ともお話しをいたしております。

以上のように,私どもの研究と申しますのは,単独でいたしますものはごく理論的なものに限られまして,大部分は,国際的及び国内的な共同研究をいたしております。以上のようなところで,大体のご説明を終わります。

どうもご清聴ありがとうございました。

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上野 季夫
Sueo Ueno
  • 京都大学理学部卒
  • 理学博士
  • 宇宙物理学専攻
  • 元京都大学理学部教授
  • 元金沢工業大学教授
  • パリ天体物理学研究所及び米国航空宇宙局客員研究員
  • カリフォルニア大学ロサンジェルス校客員教授
  • 南カリフォルニア大学客員教授
  • マサチューセッツ州立大学客員教授
  • 現在京都大学名誉教授
  • 金沢工業大学名誉教授
  • 京都コンピュータ学院情報科学研究所所長

上記の肩書・経歴等はアキューム2号発刊当時のものです。