今世紀の人類文明の急速な発展が,地球環境の破壊をもたらしているのは,ある意味では事実である。しかし最近,巷間よく話題に昇る所謂地球環境論は,70年代の公害論争に散見された幾つかの事例と同様に,政治・経済に対する単純な批判ブームの轍を踏んでいる様にも思われる。
一口に環境の破壊というならば,地球に人類が誕生して以来,数万年の歳月を経て来た中で,何時の時代も人類は地球環境を破壊し続けて来たのだとも言えるだろう。
肝要なのは,それぞれの時点に於いて,我々の営為の基盤である地球が,どのような状況にあるのかを客観的に認識することであり,いたずらにその原因や責任を批難すること無く,ともに未来に向って対処を考える姿勢であろう。
ここでは唯,厳密な科学的見地からの研究報告を通じて,現時点での地球環境に関連する諸相を正しく伝えることを目的とした。判断の前には考えねばならず,考える前にはよく知らなければならないのである。