祇園祭り宵山の熱気もさめやらぬ2007年7月20日(金),21日(土)の両日,オープンソースカンファレンス2007関西(OSC2007 Kansai)が京都コンピュータ学院京都駅前校で開催された。OSCは,その第一回を2005年3月に東京で開催して以来,北海道,沖縄,新潟などを会場としてきたが,関西での開催は初めてのこと。そして,今回は,初日を金曜日とし,特別講義枠を使うなどKCG学生の参加を積極的に奨励した。参加者数は,両日とも1000名を超え,主催者,参加者ともおおいに満足のできる結果であった。
オープンソースの活動は,ひとつの知的生産の形態として社会的認知を得ており,従来型の企業中心のソフトウェア開発へのカウンターパートとして,年々高まりを見せている。オープンソースのコミュニティは,おもにネットワークを活動のツールとしているが,適宜カンファレンスを開催し,展示も併設し,密な情報交換や広報活動を行っている。もちろんコミュニティメンバの親睦もカンファレンスの重要な目的のひとつである。
今回のカンファレンスもプログラムは盛りだくさんであった。オープニングを兼ねたセミナーは,「仮想化」をテーマとするものであった。まず日本仮想化技術株式会社 代表取締役社長兼CEOで,本カンファレンスを主宰する株式会社ビギネットの代表でもある宮原徹さんが,現在急速に注目を集めているサーバ仮想化の技術を,仮想化の基本から活用方法まで,分かりやすく解説した。そのあと日本ヒューレット・パッカード株式会社から具体的な仮想化ソフトウェア Xen, SUSE の概要からライブマイグレーションまで仮想化技術のエッセンスとなる部分のデモを交えての紹介,および,住友電気工業株式会社から企業の情報システムのBCP(事業継続計画)への高まるニーズと,700台以上のサーバを抱える住友電工でのディザスタリカバリサイト構築に向けた仮想化技術の導入ポイントの紹介が行われた。
広範なプログラムの詳細を紹介する紙幅はないが,2つだけ取り上げたい。まずは,Ruby。ソフトウェア開発においては必ずしも世界をリードできていない日本であるが,世界的な注目を集めている貴重な日本オリジナルのプログラミング言語である。これに関しては,「Ruby on Rails ハンズオンセミナー」として,ウェブサイトの構築実習が行われた。筆者自身も参加したが,極めて容易にBBSサイトが構築できた。もうひとつは,「オープンソースと社会」セミナー。特定非営利活動法人アインシュタインプロジェクト(ESP)が担当し,京都ノートルダム女子大,一橋大,サイバー大の各先生方より,オープンソースによる技術開発の社会貢献のあり方に関して興味深い議論が行われた。この中で,OLPC(One Laptop Per Child)プロジェクトの進捗状況が紹介され,現物を使ったプレゼンテーションが行われた。OLPCは,100ドルPCを発展途上国の子供たちに配布し,教育に活用しようというプロジェクトであり,MITメディアラボのネグロポンテ元所長の発案によるものである。
KCG,KCGIからもセミナーおよび展示にプログラムを提供した。KCGからは,Eclipse上でソースコードを共有することにより共同開発を可能とするプラグインの開発,KCGIからは数学ソフトウェアScilabのASP化に関する発表および京都大学と共同で,JavaScriptの最新情報の提供を行った。
プログラム最後のライトニングトークは,再び6階ホールで200名あまりの参加者を集めて行われ,各コミュニティから5分という短い時間での趣向をこらした近況報告があった。音響効果に優れるホールは,しばしば起こる爆笑をさらに楽しいものにしていた。最後に抽選会が行われ,デュアルコアデスクトップPCやTシャツなど多くの景品が参加者の手に渡った。その後100名ほどの参加者は,京都駅前カフェ・ルネサンスでの懇親会で,さらに親睦を深めた。カンファレンスには家族連れの参加も少なくなかった。祇園祭りも町衆のオープンコミュニティ活動であり,オープンソースカンファレンスもそれに負けない夏のお祭りになればと,懇親会でワインを飲みながら願った。