学生の頃に暮らしていた京都。久しぶりに帰ってきて,お決まりの寺院や観光地めぐりもいいけれど,一日ぐらいひと味違った京都観光を楽しんでみませんか。今回は,「京都で一番」なものを探して訪れてみました。
出てきたカレーを見て,言葉を失った。うずたかく盛られたライスの山は,ゆうに20センチを超えて,ふもとにはルーの海が広がっていた。カレー専門店「久留味」のジャンボスペシャルカレーは,ライスの量なんと1升。総重量は3.2キロにもなる。
学生相手の量が勝負のカレーと思っていたら,めちゃくちゃうまい。30種類のスパイスをブレンドし,具の形がなくなるまで煮込んだルーはピリッと辛いが,野菜の甘みで後味がマイルドなため,スプーンを口に運ぶ手が止まらない。これで1200円は安すぎる。ただし,このカレーを食べるには,事前にカツジャンボカレーを一度で2人前食べるのが条件なのでご注意を
久留味は,京都コンピュータ学院と縁がある。最初の店を構えた場所に,25年前に百万遍校が開校しているのだ。現在の店舗は左京区高野にあり,鴨川校や洛北校の学生もよく訪れているという。
久留味のカレーを食べて勉学に励んだ卒業生もいるはず。値段も味も当時のままだ。京都を訪れたときは,学生気分にもどって訪ねてみてはどうだろう。
太秦の閑静な住宅街の中にある蛇塚古墳は,京都最大の横穴式石室。全長17.8メートル,高さは周囲の住宅に並ぶぐらい。玄室(棺を納める部屋)は16畳もあり,奈良県の石舞台古墳に次ぐ大きさだ。7世紀頃,この辺りを支配していた秦氏(はたうじ)一族によって造られたと考えられ,規模や形からかなりの権力者の墓といえる。本来は75メートルもある前方後円墳だったが,土がなくなって石室だけになった。インターネットの航空写真で確認すれば,かつての古墳の形にそって家が建っているのがよくわかる。事前に京都市文化財保護課に申し込めば見学もできる。
1泊素泊まり1000円のホテルの名は「Kyoto Cheapest inn 京都っ子」。旅好きの仲間が集まり,4年前に開業した。公園で野宿できない旅行者のことを考えて,この価格を打ち出した。1000円なのに,コーヒー,紅茶は飲み放題で,シャワー,コインロッカー,インターネットの利用も無料だ。屋上からは市内を一望でき,暖かい季節にはデッキチェアーに寝転がって,のんびりするにはもってこい。
1年前に改装したばかりなので,快適に宿泊できる。ただ,2段ベッド利用で寝具はないため,寝袋は必携。寝具付きや個室もあり,別料金だがそれでも2300円と破格値である。
「マナーのよい利用者ばかりで,本当にきれいに使ってくれています」とスタッフのミキさん。二条城から徒歩5分と立地条件もいいので,学生の頃に戻って貧乏旅行気分を味わってみるのもいいかも。
アテネ五輪金メダリストの野口みずき選手が走っていたことで有名な京都三条会商店街は,京都一長いアーケード商店街だ。いまや一般ランナーの聖地になっていて,別名「金メダルロード」とも呼ばれている。
千本通りから堀川通りを結ぶ全長約800メートルで,日用品から食料品,喫茶店などさまざまな180の商店が軒を連ねている。
商店街ができたのは大正の初め頃。近年になって客足が減った時期もあったが,組合員が力を合わせ,月1回のイベントやお買い物スタンプ活動を積極的に行い,確実に客が戻っているとか。若者の出店も多く,若い客の姿も目につく。また,地元小学生が商売体験をする店を提供するなど,地域との関わりも大切にしている。
京都駅に日本一長いホームがあるのは有名な話。JR京都駅の0番と30番ホームを合わせたもので,558メートルもある。ホームの端から端まで歩いてみると656歩もあり,5分もかかってしまった。
東側に位置する0番ホーム(323メートル)には,北陸方面に向かう特急や,草津線方面への列車などが止まる。30番ホーム(235メートル)は西側にあり,特急「はるか」専用のホームになっている。
明治13年(1880)に大津方向に線路が延び,明治30年(1897)に今の山陰線が京都駅につながって,現在のホームの原形ができたと言われている。
「村上開新堂」(寺町二条)は明治40年(1907)に創業した京都で一番老舗の洋菓子店。
名物の好事福盧(こうずぶくろ)とロシアケーキは,初代が大正時代に考案したもので,3代目の主人が変わらぬおいしさを守り続けている。
好事とは「よいこと」,福盧は「かんきつ類」を意味し,おめでたいみかんのゼリーとして進物に人気とか。11月~3月までの期間限定の予約制で,質のいいみかんがなければ作らないというこだわりようだ。
ロシアケーキは,予約なしでも購入できる焼き菓子。口に入れると舌の上でホロリと砕け,上品な甘みとバターの香ばしさが広がって,至福のひとときが訪れる。
「大量生産して味を落としてしまっては申し訳ないですから」と3代目のご主人が,すべて手作りしている。ロシアケーキは2週間と日持ちもするので,京都土産にもぴったりだ。
東福寺の風呂は京都最古。本堂から見て南東の位置に建つ,単層本瓦葺の建物の中にある。奥行き約6メートル,幅約8メートルの禅宗式浴室で,1459年に造られ,1732年頃まで使われていた。
風呂といっても,今のように湯につかる浴槽はない。水を張って薬草を入れた窯を沸かし,その上の竹でできた床の上に座る。蒸気で体を温める蒸し風呂で,体の汚れや垢をとったそうだ。
竹の床は,6人が座れるほど広い。直接座るとやけどするので,布を敷いたそうだ。これが「風呂敷」の語源である。
風呂といえども修行の一部だったため,私語は一切禁止されていた。東司(トイレ)と禅堂(座禅場)も同じように「三黙道」と呼ばれている。
この浴室は重要文化財であるため,残念ながら外観しか見ることができない。ただ,2007年1月に公開されているので,次に見学できる機会もあるだろう。
東司も日本で最古最大で必見。こちらは,格子戸の間から中を見ることができる。ずらりと並ぶトイレは圧巻だ。
四条河原町から西へ歩いていると,多くの人が出入りする不思議な洋品店がある。実は,店の中に通路があり,京都一短い商店街へと続いているのだ。「花遊小路商店街」は全長わずか60メートル。京都土産の代表格「よーじや本店」をはじめ,江戸焼うなぎの名店「江戸川本店」,“ご存じ最中”で有名な和菓子の「仙太郎」など,26の個性的な店が並ぶ。最近では町家を改装した「喫茶さらさ」が人気で,若者の姿も目につく。
早足で通り抜けるなら30秒もかからない商店街。しかし訪れた人は,つい足を止めてしまうので,京都一滞在時間の長い商店街かもしれない。
がんこ三条本店にある寿司カウンターの長さは京都一。全長13メートルで,なんと市バスよりも長いのだ。26人も一度に座れるロングカウンター席は,すらーっと伸びて,表面は鏡のように輝き,実に美しい。
カウンターの食事でできるだけ避けたいのが,知らない客同士が隣り合うこと。ヒジでも当たれば,楽しい時間が台無しになってしまう。でもここなら,よほど混雑しない限り,ゆったり座れる。また,ネタを入れるガラスケースが低いので,職人の仕事ぶりがじっくりと見られ,気軽に話せるのもいい。
おすすめはサバの棒寿司。一尾の片身が丸々のっていて1150円。「この大きさで,この値段は京都一でしょう」と浜田支配人。だしの味がきいたふわふわの玉子のにぎりも自慢だ。ネタは名刺ほどの大きさがあり,食べ応え十分。これも京都一大きいかも。こうした料理に魅せられて,20年も通っている常連がいるんだとか。この店はカウンターだけでなく,客との付き合いも長いようだ。