萩原宏先生のご逝去を悼み,ここに哀悼の意を捧げます。
私が萩原研究室に学生として加えていただいたのは,昭和43年(1968年)の5月と記憶しているので,かれこれ46年ほど前の話である。ディジタル電子計算機に特別な興味を持っていた訳ではない。私が京都大学の教授に抱いていた期待,一見恐そうで,凛としているという雰囲気を感じたからである。
ここでは,萩原先生の素晴らしい温かさと人間味あふれる側面をお話ししたいと思っている。修士の学生である私の机が萩原先生の隣の部屋に配置されることとなり,萩原先生の指導を受けやすい環境にあった。
修士論文のための研究を始めるにあたって,4回生の卒業論文の分野と異なることを,もっとコンピュータに近い,現場的な研究をしたいとご相談に行った。先生は「あ,そうか」と言われ,4,5日後に,「コンピュータの性能評価,特に,大型計算機センターのコンピュータの性能評価と改善予測をシミュレーションで行っては」と助言いただいた。研究の途中でも,シミュレーションの終わり方に注意するようにと指導いただいた。院生の研究に絶えず目を通していただいていたことに,今も,有り難く思い,感謝している。
萩原先生はドライブが大好きで,このシミュレーションの研究結果を発表するため箱根まで車で行ったとか,大阪万国博や常照皇寺の桜を観に連れて行っていただいたとか,懐かしい思い出である。
萩原宏先生,安らかにお眠りください。
合掌
上記の肩書・経歴等はアキューム22・23号発刊当時のものです。