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Accumu 「初音ミク」の生みの親・伊藤博之氏がKCGI教授に

「初音ミク」開発の裏側を紹介!伊藤博之教授が京都で講義

京都情報大学院大学(KCGI)の伊藤博之教授の特別講義が,2013年12月6日,京都コンピュータ学院(KCG)京都駅前校6階ホールで開かれた。伊藤教授は「初音ミク」が世界中から愛される存在になった歩みや,さまざまなジャンルとのコラボレーションに加え,2013年9月に発売された新ソフト「初音ミク V3」について紹介。「〝初音ミク〞が,これからも創作活動を通じて,国際貢献に寄与できる存在になれば」と話した。全世界から注目を浴び,時の人となっている伊藤教授の講演とあって,KCGやKCGIの学生たちは真剣に聞き入っていた。

身長158センチ,体重42キロ,16歳という「初音ミク」は2007年に誕生。楽曲は10万曲,動画投稿数は100万件(YouTube),公式Facebookページの「いいね!」数は160万件を超え,世界各地で開催される3Dコンサートはチケットが常に売り切れという人気者。伊藤教授は「電子音楽や音声合成の技術そのものは新しいものではなかったのですが,それにキャラクターを融合させるという例はありませんでした。キャラクターとしてのボーカロイドとして親近感が持たれたのでしょう」と誕生当時を回顧。「ある種のインターフェイス」(伊藤氏)である初音ミクは,二次創作,三次創作と段階を踏み,「創作の連鎖」として動画からコスプレ,イラストからフィギュア,3Dモデルからアニメーションなどへとその表現方法が拡大していったと説明した。

当初は著作権についての課題があったといい,伊藤教授は「二次創作物を第三者が使用するにあたって,クリプトン社や二次創作者らの許諾をいちいち受けていたのでは負担が大きいと感じました。そこで,コンテンツ投稿サイト〝piapro〞を立ち上げて,非商用に限り,マナーとして創作者に感謝の意を伝えれば自由に使ってよいようにしました。クリエイターたちが萎縮することなく,積極的に創作ができるような場づくりに努めました」と説明した。その自由さが世界中のクリエイターに親しまれ,ファンが拡大していった大きな理由と言えそうだ。

「初音ミク」はその後,商品化が続き,イラスト集などの書籍,フィギュア,コンビニエンスストアとのタイアップ,レーシングチーム,ゲームといった,たくさんのコラボレーションを実現させた。2009年8月に東京で開催されたコンサートでは,透過スクリーンを用い3Dアバター「初音ミク」が初めてステージに登場。この模様は世界各地のTVニュースでも報道されたという。世代では13〜17歳,性別では女性からの支持を多く集め,中国のポータルサイトでは日本人〝歌手〞として,不動の人気を誇り,トップに君臨。このほか伊藤教授は▽オーケストラ▽アート▽ファッション▽人形浄瑠璃など日本の伝統文化▽社会活動—などさまざまな分野で「初音ミク」が活躍していることを紹介,「(クリプトン社の本社がある)北海道では,さっぽろ雪まつりのSNOW MIKU,新千歳空港における展示コーナー,電車のラッピングのほか,音楽・映画祭といったイベントにも登場し,集客,地域の盛り上げに一役買っています」と話した。

発売されたばかりの「初音ミク V3」については,「登場以来6年が経過し,ファンの皆さんから強く言われてきた要望は▽歌以外はどうすればいいの?▽Macにも対応してください—の2点。〝誰もを音楽クリエイターに〞を開発コンセプトに据え,これらに応えたオールインワンソフトの発売にこぎ着けました。その後,英語版もリリースされ,これまで以上に世界でさまざまなクリエイションを生み出してくれることを期待しています」と説明。自らが観客側を中心に撮影した台湾でのコンサートの映像を披露し,「現在,近隣諸国とは政治的な摩擦が生じていますが,クリエイターによる創作や,民間レベルの活動とは全く関係がない。創作活動を通じ,国際貢献を続けていきたい」と強調した。質疑応答では,学生から多くの質問が出され,伊藤教授は一つひとつ丁寧に答えていた。


「初音ミク」の歩みや思いについて熱く語る伊藤教授(京都コンピュータ学院京都駅前校6 階ホール)