バスには乗らない
ハンドルさばきはブルースブラザースみたく荒っぽいし
運ちゃんはだいたいつっけんどんだし
歩いてもけっこういけちゃう街だし,京都は
でも
きょうは
おもいもよらないひとたちと
ばったり会ったり電話が鳴ったり
なんだかうきうきだったので
西大路四条から
ちょうどやってきたバスに乗ったのだ
一万円しか持ってないおっちゃんを怒ったり
おばあちゃんの足元を気遣ったり
澤田さんが
隣りのお姉さんみたくしゃべるのにおどろいた
そう
澤田さんというひとが
ぼくを堀川今出川まで運んでくれています
ひなたの湿り気に似たこえでしゃべる
彼女のおなかのなかをゆられているきぶん
あやうくうとうとして
ガラスに頭をぶっつけた
澤田さんは走る
澤田さんのバスは走る
澤田さんのバスにのっかった有象無象も走る
ちいさな口もとをぎゅっと引きしめて
前を向いている澤田さん
ぼくあなたのバスに一生乗ってたいです
市内をずっとぐるぐるまわって
しまいにはバターみたくとけちゃっても
ても
二百三系統は堀川通をこえて
リカーマウンテンの前で止まった
なんだかきょうはおもいもよらない日
しっかりトラフィカを買いました
またバスに乗ります
澤田さん
ごきげんよう
詩人。1984年京都市出身,在住。
中学生時代から詩人を名乗りはじめ,執筆,パフォーマンス(ポエトリー・リーディング),イベントプロデュースなどその活動は多岐にわたる。
メディア露出も多い半面,京都chでは「京のプリンス」,SmaSTATION!!では「京の御三家」と呼ばれるなど,もはや自分のジャンルがわからなくなりはじめた模様で,最近ではVOXhallというライブハウスで企画制作を務める。
詩のある生活を提案するプロジェクト「ふるて」代表,狂言師・茂山童司とのユニット「chori/童司」所属。
主な著書に「chori」(青幻舎)など。
一度きりの人生,棒に振ってみたいとおもっている。