財団法人・情報処理学会より「情報処理技術遺産」の第一号「認定機器」とされた「TOSBAC 3400」は,KCGで1970年代から80年代半ばにかけて,プログラミングなどの教育用に利用された往年の名機だ。日本で最初のマイクロプログラム制御計算機・KTパイロットをベースに開発されたこの「TOSBAC 3400」は,元KCG情報学研究所長で,日本最初のIT専門職大学院・京都情報大学院大学の初代学長を務めた萩原宏博士が,京都大学工学部教授時代にKTパイロットの基本設計や,ソフトウェア開発などを担当,現在の株式会社 東芝とともに開発した。KCGが進めるコンピュータ博物館建設構想について萩原博士は「日本が将来,科学技術の面で他に後れを取らないためにも,国は戦略を誤ってはいけないと思います。コンピュータ博物館のような施設はぜひとも必要で,技術を末永く後世に残していかなければならないでしょう」と話している。
萩原博士は,政府が事業仕分けによりスーパーコンピュータ開発予算を削るとの方針を出したことについて「スーパーコンピュータはもう少しで出来上がるという段階。予算が削られるようなことになれば,日本の将来は暗い」と悲観。「米国はもちろん,中国にも優秀な人材が多く,日本は技術の面で大きく立ち遅れてしまう。資源がないがために技術立国として発展してきた日本。科学技術を軽視してはならない」と警鐘を鳴らす。
そのうえで,コンピュータ博物館構想については「以前の機器はいずれも大型。メーカーや研究・教育機関にとっては,コストなどを考えると,残しておくことは難しいかもしれない。だからこそKCGがそのような取り組みをしていることは,大きな意義を持つ」と話している。
上記の肩書・経歴等はアキューム18号発刊当時のものです。