1. 情報産業とコンピュータ技術者を必要とするその他の産業部門における優秀な労働力の急速な需要の増加に対応するために,イギリスの総合大学や工科および単科大学は,履修コースの開発と学生の募集において大いに成功してきた。学生がすぐに職を得ることができることを見れば,その成功が伺えるというものである-コンピュータコースを提供する大学への増え続ける需要とこの成長する教育訓練コースへのイギリス高等教育機関の貢献による経費削減効果。この論文はイギリスの高等教育機関におけるコンピュータと情報技術教育について述べる。
2. 情報技術は,情報の収集と伝達,処理,記憶,回復を実現するシステムに関わるものである。従って,情報技術という用語は,コンピュータとそれに関連するソフトウェアは言うまでもなく,通信,また工業と事務,軍事分野の応用で使用される広い範囲の事務設備やコンピュータを包含する。1970年代には情報技術の供給と製造面が強調されたが,今では工業と商業,政府による効率的使用に関心が移っている。現在,情報技術は,個々の企業ばかりか国家の経済的成功にとっても重要なものと考えられている。
3. コンピュータサービス産業は,約20%の年成長率を持ち,イギリス経済で最も速く成長している部門の一つである。この産業はソフトウェアハウスとシステムハウスからなる。ソフトウェアハウスの業務は,特注のソフトの作成,汎用性のあるプログラムパッケージの生産,コンサルタント業,設備の運用やデータ処理を含んでいる。一方,システムハウスはまとまったハードウェアとソフトウェアのシステムを提供している。一つの企業がソフトウェアとサービス産業を独占してはおらず,この部門のたいていのイギリス企業は小さくて,イギリスや外国市場で技術的能力を充分有効利用するだけの商売の能力を持ち合わせていない。しかしながら,イギリスのソフトウェア産業は多くの成功を導く能力を備えている。
ソフトウェア工学法,品質保障,コンピュータデザイン,安全を第一にするシステムを含む応用分野における一連のパッケージの開発,そしてコミュニケーションの標準としての英語の世界的普及などにイギリスのソフトウェア産業の強みがある。コンピュータサービス産業の総取引高は25億ポンドであり,約5万5千人を雇用している。さらに,10万を越える大卒を含む50万人ほどが,全商工業にわたる他の企業で情報技術の分野の仕事に従事している。
4. 情報技術の有効利用とイギリスのその部門の発展は,情報システムの開発,設置,維持及び操作に必要な技能を持つ人材をいかに有効的に活用できるかにかかっている。情報技術者への増え続ける今後の需要が満たされるためには,情報技術の認知,技能の強化,有能な人材を増やすためのプログラムに,すべての教育関連業務が取り組む必要があることをイギリス政府も認識している。
5. 情報技術教育を提供するためにイギリス政府の機関が始めたプログラムには以下のようなものがある。
* 通商産業局の「学校にマイクロコンピュータを」という計画。
* 教育科学局の「マイクロ電子工学教育プログラム」と「それの学校での創始」
* 職業訓練局の「技術職業教育の創始」
これらのすべての主導的活動は,学校の設備を充実させるとともに,教育と学習で使用されている情報技術の有効性を増進させることを意図している。その目的は,生徒全員が情報技術を知り,実務上で将来必要になる技術を発展させられるようにすることである。
6. 中等教育レベルにおいて,教師のためのスタッフ開発の支援と教育で使用されるソフトウェアや教材の開発の促進に資する政府教育援助交付金計画の中で,情報技術は優先的に取り扱われてきた。高等教育において情報技術への援助は様々な方法で与えられてきている-教育に携わらない援助スタッフのプログラム,公共部門高等教育の前国家諮問機関の出資による研究プログラム,大学でのコンピュータ委員会のプログラム,工学技術プロジェクト,高等教育情報技術科によるプログラム,高等教育部門に入学する資格を持つが工学の学位に伝統的に要求される学科目における教育修了証書を持っていない学生のための準備コースの促進プログラム-中等および高等教育において,スタッフ開発援助は,教師用教育訓練交付金計画を通じて与えられてきた。
7. 高度の情報技術とコンピュータ技能を備えた有能な労働力の大規模かつ拡大する需要は,工科および単科大学の双方によって認識されてきた。長年にわたりこれらの大学は,学生や現在および将来の雇用者の要求を満たすために,学士や初級コンピュータコース,実務経験後コースおよび大学院レベルの情報技術とコンピュータコースの分野を作り出した。工科大学初級コースのコンピュータサイエンスの1988年度の卒業生の89%がイギリスで6ヵ月以内に常勤雇用を獲得している事実は,これらのコースの成功を裏づけている。これは,工科大学卒業生の平均雇用率61%と比較してみれば明らかである。初級コースおよび学士の証書をもつ卒業生はたいていプログラマになる。大学院修了者はジュニアアナリストの職を得ることが多い。有能な技術者の不足のために,多くの企業が,私立の教育訓練機関によって提供されるパートタイムや短期コースを通じて,情報技術を専攻しなかった卒業生に対して情報技術の訓練をするようになった。
8. コンピュータと情報技術の全日制およびパートタイムの高等教育はイギリスの約80%の機関で提供されている。プログラムの大部分は,35の大学と25の工科大学,五つの単科大学でみられる。最近の25年間,とりわけ1983年以来すべての教育レベルにおける情報技術コースの数は急速に増大してきた。1988-89年度イギリスのコンピュータと情報コースの学生は約2万8千人を数えている(表1,表2)。これらの約3分の2は総合大学でない高等教育部門,主に工科単科大学基金によって出資を受けている工科および単科大学に属している。
9. 総合大学の初級コースの学生の85%は全日制の学生である。これに対して,工科および単科大学の主要な学習形態はサンドイッチ-通常1年の実務実習を持つコース-(38%)とパートタイム(35%)であり,そのうち初級コースへの入学が全コースの約38%を占める。大学院への入学者は総合大学では,工科および単科大学ではコンピュータと情報技術を専攻としないコースの一部として他の科目と組み合わせて学習されることもある。またコンピュータおよび情報技術は,経営学や工学,理学,図学のコースの重要な要素としての特色を持っている。
10. 工科および単科大学における卒業証書や初級,職業訓練コースの構成は(たいてい全日制,サンドイッチ,パートタイム)コースと三つの様式の間の進行を容易にさせるように組まれている。工科および単科大学に与えられる自主運営権と共にこの多様な構成はコースへの接近と参加を拡大するのに役立っている。この自主運営権の取り決めは比較的最近の展開であり,従来は教育の後半に与えられていた学位,高等国家証書(HNC),高等国家資格証(HND)を早い段階で付与することを許されている。
11. 確かに総合大学の方がより多くのコンピュータ専攻の大学院生を抱えているが,約20の工科および単科大学もコンピュータと情報技術の39の大学院コースを提供して,実質的な貢献を果たしている。大学院のこれらのコースは全日制,パートタイム双方の様式で提供され,人口の集中するたいていの所で利用可能である。大学院の授業コースだけでなく,工科および単科大学は有能な院生のために大学院での研究の機会も提供する。また実務経験者コースもあり,それらのうちのいくつかはイギリスコンピュータ学会といった専門学会の資格証明書を授与している。
12. 工科および単科大学にとって,国家学術評議会,専門学会や商工業教育評議会などが,大学院や初級,職業,学位コースの主たる許認可機関である。
13. 高等教育におけるコンピュータと情報技術コースは三つの主要なカテゴリーに分かれている。
* コンピュータと情報技術専攻コース
* コンピュータと情報技術を副専攻にするコース
* 大学院および実務経験後のコース
コンピュータ,情報技術そして数学もまたその他の多くの専攻コースにおいて補助的な科目として特徴づけられている。
14. このコースは,3年間の全日制コースまたは3年次に1年間工業,商業および公共団体に配属される4年間のサンドイッチコースである。これらのコースは,工科および単科大学により立案され,国家学術評議会に承認されるか,いくつかの単科大学の場合には総合大学により承認される。全工科大学は,国家学術評議会の規制の範囲内で,コースを承認し再吟味することを認められている。たいていのコンピュータと情報技術の学部レベルのコースには,入学のための特別の資格をあらかじめ要求されてはいない。とはいえ,入学者は少なくとも2科目の一般教育A標準レベルを取得していることを期待されている。
15. 高級レベルにおいては,HNCやHNDの賞を授与されるコースがある。これらは商工業教育評議会により承認を得ている。HNCは2年間のパートタイムのコースであり,たいてい各週昼間,夜間1回ずつの授業がある。HNDは通常2年間の全日制授業,3年間のサンドイッチコース,あるいは多くはないが3年間のパートタイム授業である。商工業教育評議会がコースの長さと構成,評価の様式,内容についてのガイドラインを出す。進級と転学を容易にするため,工科および単科大学では,提供されるコースと両立するように通常立案されると共に上記のガイドラインに基づいて独自の計画を作り上げる。
16. コンピュータの初級コースは通常コンピュータサイエンスの学士という名を冠せられている。その他,データ処理学士,コンピュータ学士,あるいは情報工学士といった種々の名称がある。これらのコースは,コンピュータ関連の職業を将来とも続けようと意図している人々にとっての良好な準備を提供する。すべての主たるコンピュータ科目を包含する。具体的には,
* コンピュータプログラミング
* コンピュータシステムアーキテクチャ
* システムの分析と設計
* データベース管理
である。より進んだ研究を実行するためにその他次のような授業が提供されている。
* 知能知識ベースシステム
* グラフィックス
* ソフトウェア工学
* 人間とコンピュータのインターラクション
これらの補助的または援助的コースの特色は,経営,数学及び通信といった研究を含むことである。たいていコースの選択を通じて学生が自らの特別の関心と志望に応じてプログラムを適合させることが可能である。通常これらのコースは1年間の実務実習と統合的研究としての最終学年の卒業研究を含んでいる。卒業生はイギリスコンピュータ学会員になるためのすべての試験を免除される。
17. 全日制のHNDコースは,商工業データ処理に従事しようとする学生のためにふさわしいように設計されている。一方,パートタイムのHNCコースはデータ処理業務に既に従事している人々,あるいはその業務のために再教育を志す人々のために設計されている。通信,数学および経営学だけでなくコンピュータプログラミング,コンピュータシステムアーキテクチャとデータ処理システムを含んでいる。卒業研究もまた通常HNDにおいて実施されている。商工業教育評議会は,情報技術と商業情報技術におけるHNDの運営のためのガイドラインを作った。情報技術コースは,コンピュータと情報技術の技術面とその応用に重点を置いている。これに対して商業情報技術コースは,技術面にそれほど重点を置かず,組織論や経営問題への情報技術の応用を強調する。コンピュータと情報技術のHNDの取得者は,イギリスコンピュータ学会の試験要項の第一部を免除される。
18. 授業時間はコースによって非常に異なる。学位取得のために計画されている時間は通常初年度は1週あたり約18~20時間であり,最終学年までに約12~16時間に減少する。授業時間の3分の1から半分は指導教官のついたコンピュータワークショップでの活動にあてられる。コースの初期の段階での指導教官との密な接触は,学習したいことを確実にし,新しい主題を導入する必要性を反映している。授業時間外に完成させなければならないコースワークが重要な割合をなすところでは,授業時間はそれに応じて減少される。HNDコースの授業時間は学士のそれより多く,1週にあたり22時間にまで及ぶ。そのうち50%は指導教官つきのコンピュータワークショップ活動にあてられる。学士コースの学生に比べて一般的に学力が少し劣るHNDコースの学生が教官に接するより多くの機会を与えられていることから見ると,この処置は適当なものといえる。HNDの学生は,課題や卒業研究との関連で,自分の時間の多くをワークステーションの利用に使うことができる。
19. コンピュータと情報技術の学士およびHNC,HNDコースはしばしば人間性の技能を開発させる目的をもった授業を含んでいる。これらの要素は,学生に産業構造の知識を与えると同時に意思伝達技能やチームの中で能力を発展させる目的をもつ。これらはしばしば明白な形でプログラムの中に含まれているし,場合によってはモデル化,問題解決やケーススタディといった実際上の要素の中に含まれる場合もある。
20. 卒業研究は通常かなり実のある仕事であり,学士とHNDコースのいくつかやたいていのコンピュータと数学の優等コースの最終学年に組み込まれている。卒業研究を通じて学生は,問題解決にコンピュータを頻繁に利用しながら,一つのトピックをある程度深く追求することができる。卒業研究を行うときには,学生はふつう一人の先生に指導される。実務配置の期間の仕事の中からよく卒業研究の主題がでてくる。実務にかかわらず,卒業研究については実務上のチュータとの連係が続けられる。卒業作品と卒論の双方が評価される。時には口頭での発表も要求されることがある。卒業研究は,評価計画の中で最終学年の学科と等価とみなされる。
21. 単一の名称を与えられた学位取得の道をひらかれているものもある。これらの副専攻コースによって,学生は他の学科目と組み合わせてコンピュータと情報技術を学ぶことができる。このコースにおいては,コンピュータ,情報技術または数学は,主要素,同等,または副次的要素として学習される。
22. 副専攻コースのコンピュータと情報技術の内容は専攻コースのそれと大筋において変わらない。必然的に個々の学生は専攻コースよりも少ないコンピュータと情報技術のトピックを学習するのであるが,一般的に学生が自身のプログラムを選択する幅は広い。一般的には文脈研究にあまり重点は置かれない。学生は副専攻のモジュールの選択の際には相談にのってもらうことができ,多くのコースには過去と現在の学習プログラムに基づいて選択を制限する規則が存在する。個々のモジュールは全く異なる経歴を持ち学生が選択する。そのため,規則やカウンセリングがあるにもかかわらず,モジュール内あるいはモジュール間の統一性や進行にかかわる問題に時々遭遇する。これらの問題は,科目が学習経歴に充分基づいているとは言えないために顕著になることもあるし,学生が達成する成果も専攻コースの学生のそれに比べると見劣りすることにもなる。
23. コンピュータと情報技術は,他の科目が学習分野の主題となるコースプログラムの中で重要な要素である。10年前であればコンピュータはコンピュータ専攻コースやいくつかの経営学分野,工学や理学の分野でのみ注目を得てきたが,現在ではほぼすべての高等教育コースにおいてコンピュータと情報技術は重要な要素となっている。学生の主題に関係のないコンピュータや情報技術の概論コースを学生が学ぶ場合もある。しかし実際にはこの概論コースは情報技術の適切な実際の応用例に基づくものが多い。
24. すべての工学プログラムにおいて情報技術の応用面に重点を置く傾向が強まりつつある。たとえば,コンピュータによる数値制御機械の学習と使用,ロボット,それにコンピュータによる設計。情報技術の応用はすべての電子通信工学や技官のコースに含まれている。電子回路の設計は目下設計用のワークステーションを主に使用しての授業である。これらを通じて学生はある程度複雑なシステムを設計し,その設計を完成させることができるのである。従来は,情報技術が,電子通信工学と関連のない工学領域における学習の補助器具として開発されることは少なかった。しかし今では,たとえば相互作用の能力をもつビデオディスクの使用において有益な開発が実現しつつあり,ケーススタディの材料を使う学生が,設計製造の決定にかかわるネットワークから出る結果の一部を観察することが可能になっている。
25. すべての経営学のコースにはビジネスコンピュータのコースがあり,今では学生がコンピュータ情報システムを専攻できるコースも多い。会計学やマーケティングのようなビジネス科目の学習では,財政やマーケティングシステムにおけるコンピュータの利用に大部分の基礎を置くコースもいくつかある。しかしながら,経営研究の多くのコースにおいては,コンピュータの応用は,中心課題というよりはむしろ補助的なものとして教授されるのが現在でも普通である。
26. 土木工学,建築,調査,計画コースにおいては,情報工学がカリキュラムの中にほどよく組み込まれている。主たる制約は,たいていの場合,ワークステーションの台数と建設の応用のためのソフトウェアが入手できるかどうかである。多くの例において,情報技術の応用の成否は,学科や学部の方針の存在よりもむしろ個々の講師の熱意と専門知識に大いに依存する。情報技術を利用する機会が与えられると学生は熱心に情報技術を利用するものである。
27. 理学系の学生がたいていの高等教育機関で利用可能なコンピュータと情報技術の資材を活用する程度は様々である。実験室でのデータ収集と分析用のマイコンの利用がすばらしくなされている場合もある。学生は定期的にデータ処理やレポート作成のために学科あるいは中央のコンピュータを使用する。一方,講師の側は,授業を向上させるために情報技術を創造的に利用する。他の場合には進歩はほとんどなされていない。これは,資材の不足と同程度に,教える側の興味や専門知識の不足を反映していることが多い。
28. 学生の専攻分野への入門またはコンピュータ実習を学生に教えるのに成功しているコースでは,コンピュータの特殊な応用の数と多様性の劇的な増加が起きてきた。具体的には
* 社会科学や財政管理のプログラムでの統計パッケージの使用のような数学的に方向づけられた応用分野
* 創造的作文のための文書作成や司書コースでの情報回復といった言語関連の応用分野
* コンピュータを利用する美術と図案における設計や小規模出版,工学,織物コースを含むデザインの応用分野
* 電子音楽や理学領域のコンピュータ利用の工学実験管理などの制御の応用分野
これらはますます成長をとげつつある長い応用リストからのほんの数例にすぎない。
29. コンピュータと情報技術の分野において,単科大学の多くや単科大学の中でもいくつかのものは,修士や博士の学位につながる研究プロジェクトを指導し,またコンピュータや人工知能の修士のような大学院レベルのコースを提供している。しかし,コンピュータと情報技術の大学院や理学修士のいくつかのコースは,他学科の卒業生がコンピュータの学習を実行するための転学コースとして特別に用意されている。このようなコースの後で基礎的なコンピュータ科目のカリキュラムが続く。また卒業作品や論文も含まれる。これらのコースはイギリスコンピュータ学会の職業試験の第一部を通常免除される。
30. たいていの高等教育機関において種々のコンピュータ技術と応用ソフトの利用の訓練をする短期コースとして確立されたプログラムがある。プログラミングなどの基礎的技能を含むコースもあれば,標準パッケージや特別の専門的ソフトウェアの利用といったコースもある。講師の研究の興味を利用したり,統計的プロセスコントロール,最適化,システムダイナミックス,エキスパートシステム,画像処理,システム方法論という領域での現在の研究に重きを置くコースもいくつかある。これらのコースは商工業によって,スタッフの更新や実務経験後の訓練の一部としてしばしば使用される。短期コースは一般に資格を得るわけではないが,資格を提供する成績累積システムの利用の可能性を探求し,これによって主たる資格試験の部分的免除が得られるようにしている工科大学もいくつかある。
31. 国家学術評議会と商工業教育評議会といった承認機関は,通常5年に一度定期的に,カリキュラムやコースの実際についてモニターにしたり再吟味を要請したりする。工科および単科大学は,同僚あるいは産業の代表者,専門団体などとともに,雇用者のニーズの変化,コースの進行,それに新しい教授法に関連してカリキュラムの評価にたずさわる。承認機関のガイダンス,産業界との協議やサンドイッチ訓練での講師の参加が,コースが適切でありつづけ,しかるべき注意が学生の人間的,あるいは専門的成長に向けられることを保証してきた。ほとんど例外なく,提供されるコースは,現今の技術や方法を包含する教育を施し,学生を就職やより進んだ研究にふさわしいものにさせている。
32. コースの内部評価は,まず,コース委員会が提出するコース年次報告を考慮する学術委員会によって普通行われる。コースの重要な特徴を要約するこの報告には,評価および実施され提案されたことへの評価と指摘が含まれる。一般的にこの報告システムは学生の進度や資材に関連する問題の所在を明らかにするのに効果的であるが,カリキュラムの問題に関してはしばしば有効性が弱い。コースの個々の構成要素は充分頻繁に吟味されているわけではなく,授業の質はめったに監視されない。いくつかの単科大学,とりわけ二つ以上の学科が含まれる場合には,学科とコースのチームが公式に授業と評価戦略を討議するための会合を設けることがあるが,多くの単科大学では,カリキュラムの問題は非公式,あるいは必要に応じて取り扱われている。学科グループが監視や授業の評価の仕事の責任を負う教育機関でさえも,これらの問題を討議したり,所在を確認された問題を述べる委員会があるのはまれである。
33. コンピュータと情報技術は,年率約15%の堅実な成長率をもつ,世界的に最速の成長をとげている産業分野である。イギリスにおいてコンピュータと情報技術は将来の発展にとってきわめて重要なものと認識されている。10万人をはるかに越える大卒を含む約50万人がイギリス商工業の全域にわたってコンピュータと情報技術の活動に従事している。したがって,コンピュータと情報技術の能力をもつ学士や技官への商工業分野からの拡大する需要がある。この需要に応ずるために,工科および単科大学は,高級技官,初級コース,職業および大学院レベルの一群のコースを生み出してきた。コンピュータのコースは,コース修了後容易に職が得られることから優秀な入学希望者たちから大いに応募をうけている。
1934年生まれ。リース大学(化学専攻)卒業。
3年間,化学者として研究に従事し,教育機関でのポストを歴任したあと,1974年に検査官に就任。1984年,高等教育機関の主任検査官に任命され,現在は高等教育(ポリテクニック,カレッジ,教育委員会管轄),刑務所での教育を含めた生涯教育の全政策に関して文部省に助言を与える立場にある。