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Accumu Vol.15

韓国のユビキタス社会実現に向けたセキュリティ対策

Security Policy for Ubiquitous Society in Korea

韓国情報保護振興院(KISA) Kyoung Sik Min 博士

韓国情報保護振興院(KISA) Kyoung Sik Min 博士

韓国はIT分野での世界的評価が高い。国ごとの競争力ランキングをみると,2005年のデータではあるが,テクノロジカルインフラストラクチャーでは2位,ブロードバンド普及率では1位,ブロードバンドのコストは2位に位置している。より詳しくみると,韓国内のブロードバンド普及率は2004年12月の統計で77%。ほとんどの家庭にはパソコンがあり,インターネットを利用している。毎日の生活がインターネット中心になっているといえる。日本はモバイル中心だが,韓国はパソコンのほうが多い。携帯電話の普及率は76%。電子政府の面でも世界トップ水準を誇っている。経済的な分析をしてみると,IT産業は韓国の全産業における経済成長を支えている。GDPへの寄与率は2005年度で47.5%にまで及んでいる。2001~2005年の経済成長率は3.8~7.0で,ITの寄与率は2004年を除いて半分を占めている。韓国は情報セキュリティ水準も高く,年々向上している。この分野においては韓国情報保護振興院(KISA)が日本と2005年から共同研究をしていて, 最終的にはOECDなどに国際的なインデックスとして提案してみたい。


IMD World Competitiveness Yearbook 2005

これまでの情報化社会とユビキタス社会とは,どのように違うのか。情報化時代はネットワークが中心だったが,ユビキタス時代はセンサーとモバイルが中心となる。ユビキタスは,すべてのものに小型のチップを付けることにより,それが知能化する。知能化とはある程度の判断をするということで,バーチャル世界を実現できることになる。これらは情報家電,自動車など非IT分野の産業にも適応される時代になる。政府としても,国民向けに一方的に提供するポータルサービスが中心だったのが,リアルタイムに国民一人ひとりにたいしてオーダーメードサービスができるようになる。企業としては,主に電子商取引が中心だったのが,生産,流通,在庫管理など商品の履歴管理もできるようになる。韓国でのアンケート調査で面白いものがある。2005年6~7月,1700人を対象に聞いたところ,「ユビキタスは何か」を知っているのは68・3%。ただ,これは「言葉を聞いたことがある」という程度のものも含まれている。次に,ユビキタス社会が今後どうなるか,という質問には,2~3年後,5~10年後に実現されるとしたのが約87%と,比較的楽観的にみていた。ユビキタス社会が訪れる際の障害要因は,やはり個人情報の流出,ハッキングの不安,詐欺や悪徳商法の被害など情報化社会の影の部分に当たることが多数にのぼった。情報化社会の副作用というべきものが問題になりそうだ。


Establishment of National IT Strategy

韓国の政策も時流によって変化してきて,本格的なユビキタス社会到来に向けたu-KOREA基本計画が2006年5月に発表された。これは先進国としての韓国の土台を構築するひとつの計画だ。世界最高水準のIT社会実現,世界のリーダーとなるべき戦略である。u-KOREA計画とは,ITを通じてさまざまな問題を解決していこうという姿勢が基本である。韓国も日本と同じように高齢化・少子化の問題もある。また,ソウルや釜山といった大都市中心から均等発展のためにITを使う。国の文化的財産を世界に発信することなどで国家レベルを上げるという狙いがベースにある。

最近の韓国の情報セキュリティ環境には多くの問題がある。個人情報の漏洩,有害情報のほか,インターネット中毒という問題も発生している。子どもが1日中,インターネットでゲームをやっている。親が共働きという家庭が多いという背景もあるが深刻だ。さらに,韓国では住民登録番号というものが国民一人ひとりに与えられている。ゲームサイトなどに入る際,この番号を使うわけだが,これが流出するケースもみられる。携帯電話など移動通信機器の解約のときなどにも,個人情報の流出,不正使用などがある。これらの相談も関係機関に多く寄せられている。ユビキタス社会が到来すると,通信,放送,インターネットなどの融合により情報デバイスが多様化する。便利にはなるが,ひとつの事件が発生すると,被害の拡大を招く。ハッカーが攻撃する対象も,これまではパソコンだけだったものが,ネットワークにつながっている家電製品などにまで広がる。そこで,韓国では,3~5年先を見越した中長期情報保護ロードマップを昨年発表した。「より安全でぬくもりのあるデジタル世界をつくる」ことを狙いに,①安定的なインフラネットワークの構築②信頼性のあるサービス提供と安全な情報機器の開発③情報保護の基盤整備─の3点を柱に据えた。訪れるユビキタス社会のさまざまな事象を予測し,対策を講じていかなければならない。情報化社会の技術発展は非常に速い。しかし,使い手の認識が追いつかず,さらに起こりうる問題も予測できない。ネット被害への対策が困難な低所得者や中小・零細企業といった弱者層への支援も求められてくる。一方,ネットはグローバルなものである。そのため世界的なレベルでのマナー確立などの対策も必要になってくる。KISAはこれらあらゆる分野への対策を講じている。情報を守ろうという「文化運動」を国内だけでなく,全世界に展開していかなければならない。すべての問題は「人」が引き起こすことだ。そのため,情報保護に関するマナー,教育の面が非常に重要になってくる。自分たちにとって便利な社会をつくろうとしているとき,情報セキュリティが伴わないといけない。みなさんも企業などで他人の個人情報を扱う際,自分の家族のもののように大切にしてもらいたい。

(2006年10月16日,京都コンピュータ学院京都駅前校6階ホールで行われた講演の概要)


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Kyoung Sik Min
Kyoung Sik Min
  • 韓国情報保護振興院(KISA)

上記の肩書・経歴等はアキューム15号発刊当時のものです。