1996年3月,マルチメディア芸術工学で著名なニューヨーク州 ロチェスター工科大学(RIT)より,副学長・教務部長 スタンレー D.マッケンジー博士,画像科学センター・ディレクター ハーヴィ E.ローディ博士,視覚芸術科学部ディレクター C.ハロルド・ガフィン博士,他1名を加えて4名が来校し,本学院との姉妹校提携が調印された。
RITは1829年に創立され,Alive,Dynamic and Vibrantを理念として発展してきた。すなわち,生きた学問を研究し教授し,ダイナミックに活用させ,グローバルに伝播させていくことを理念としており,up-to-dateの社会のニーズに即応した研究・教育の活性化において,まさにアメリカ屈指のプラグマティズム大学を代表している。
本学院は,日本における似非アカデミズムの大学の乱立を是とせず,コンピュータ教育における理論面,実践面を共に重視して,創立時よりプラグマティズムに基づく教育を貫いてきた。一専修学校である本学院と,アメリカ一流大学RITとでは,その規模においては格段の開きがあるけれど,規模よりも教育思想における同一性こそが二者間提携を可能にする基本条件であると,私は考えていた。さらに私がRITに対して強い関心を抱いたのは,プラグマティズム思想より生まれた芸術と工学の融合領域におけるコンピュータ活用の先駆性であった。
かねてより私は,次世代マルチメディア高度情報化の促進に非常に有利に働くアメリカの社会的背景に注目していた。
単一民族国家と言われ,一様な考え方,共通の価値観のコミュニティ,没個性・画一主義教育の日本社会に比し,多民族国家,多重文化混在のアメリカ社会には,多様な考え方と価値観より生まれる感性のバラエティ,アイデアの斬新性と多様性が存在している。必然的に,これらはマルチメディア開発育成の土壌として働くに違いない。
そこで,日米間に10年の開きがあるといわれているマルチメディア領域において,その教育面で本学院が即応するには,アメリカRITのマルチメディア文化土壌の学院内への移植醸成が最も効率がよいだろうと判断したのである。
1994年,RITを卒業した私の次男 長谷川晶の尽力により,RITの芸術科学の教授達のサポートを得て,カリキュラムが作成され,RIT出身者達を講師陣にそろえて,1995年,本学院に芸術情報学科が創設された。さらに晶氏が奔走して,同年夏,本学院生を対象とするRIT短期留学セミナーが実現した。次いで,1996年,RIT出身の講師陣のより一層の充実により,感性情報学科が創設された。
これら一連の交流の延長上に,1996年3月,RITと本学院との姉妹校提携が調印されたのである。同年夏,本学院生対象のRIT短期留学セミナーも,前年同様実行され,今後も定常化されていくはずである。
また,RIT学生を対象とした,「日本文化セミナー(本学院での短期留学)」も準備進行中であり,RIT教授の本学院への長期招聘も懸案されている。
交流による一層の教育上の実りを期待すると共に,卒業生達が次世紀・日本マルチメディア情報化社会の推進力となるよう願ってやまない。
京都コンピュータ学院は,RITと姉妹校提携しました。すべての学院学生はRITへの短期留学の機会が与えられています。今年もアート系学科のみならず他学科の学生も多数参加し1996年8月3日~8月22日の2週間アメリカを満喫してきました。
ロチェスター工科大学への短期留学は同大学と本学院の教育提携により行われるプロジェクトです。
この独自のプロジェクトにより本学院学生はマルチメディアの本場アメリカで芸術的センスを身につけることができます。
上記の肩書・経歴等はアキューム22-23号発刊当時のものです。