萩原先生の知遇を得られた方々と共通する感慨であろうが,寡黙な先生が折々に述べられた物事の本質を鋭く見抜かれた警句は,ともすれば眼前の課題を追うことに汲々としがちな我々後輩に,時流とは独立した普遍的価値の存在を悟らせるものであった。先生の京都大学ご退官とすれ違う形でアカデミアの住人となったため,残念ながら学問や研究に関するご叱責をいただく機会は数少なかったが,「中島君,学問と言うものは…」という柔らかくまた厳しいご叱声が泉下から聞こえてくるようで,身の引き締まる思いを新たにした恩師の訃報であった。