萩原宏先生が1月に急逝された。いろいろとご指導いただいてきただけに大変残念である。以前,国立科学博物館のコンピュータの歴史調査で,百万遍の京都情報大学院大学の先生のお部屋をお訪ねしてKT-Pilotのお話などをお聞きしたことがある。KT-Pilotはわが国最初のマイクロプログラム制御方式のコンピュータであるが,「とにかく高速にするために非同期方式,シリコン・メサ型トランジスタ,磁性薄膜記憶などの最新の技術をすべて取り入れた」と熱心に話されたのが印象的であった。KT-Pilotの成果に基づきTOSBAC-3400が商品化され,その実機は京都コンピュータ学院に保存されているが,KT-Pilotはもうないものだとあきらめていた。帰りがけに「ものはもうないですね」とお聞きしたところ,先生が「あれは東芝科学館にあるはずだよ。」とおっしゃったので驚いた。東芝OBの方にもご協力いただいて調べていただいたら,東芝科学館の資料庫に保存されていた。KT-Pilotは2008年に国立科学博物館の第1回未来技術遺産に選定され,現在は今年の1月31日にリニューアルオープンした東芝未来科学館に未来技術遺産の楯とともに公開展示されている。先生にこの展示を見ていただけないのは残念である。
萩原宏先生のご冥福を心からお祈りいたします。