ロボットクリエイターの高橋智隆氏による講演会「ロボット時代の創造」が2013年6月22日,KCG京都駅前校大ホールで開かれた。高橋氏は自らが開発した「EVOLTA(エボルタ)」と「ROBI(ロビ)」を持ち込んでデモンストレーションを披露。年内にロボットが宇宙飛行をする計画があることを紹介するなど,ロボットに対する情熱と未来に向けた可能性を語り,大勢の聴衆を魅了した。
高橋氏は,ロボット科学者を目指したきっかけとして「小学生のころマンガ『鉄腕アトム』を読んで,ロボットを作るシーンが数多く出てくることに刺激された」と説明。その 後しばらくは他の趣味に没頭し,ロボットについて考えることは少なくなったというが,立命館大学産業社会学部を卒業後に就職活動をする中で子どものころの夢を思い起こし,京都大学工学部に再入学。在学中に開発したロボットが,ベンチャーコンテストやアイデアコンテストで次々と入賞し,メーカーに持ち込んで製品化されるなどしたため,卒業後に京都大学入居ベンチャー第一号としてロボ・ガレージ社を起業した。
その後,開発したロボットは30あまりを数える。その中で,某電機メーカーの乾電池の耐用度をPRするCMに採用された17センチの「EVOLTA」は,グランドキャニオン の崖をロープを伝って約530メートル登り切ることに成功。他にもル・マン24時間走行や東海道五十三次の53日間での踏破,ハワイのトライアスロン(水泳3.8キロ,自転車180キロ,マラソン42キロ)完走などを果たした。講演ではロープを用意し,「EVOLTA」がグランドキャニオンを登る姿を再現した。また,ヒューマノイドロボット「ROBI」(34センチ)のデモンストレーションでは,会話ができることや歌ったり踊ったりする様子を披露した。
また,年内に,ヒト型のロボットとしては世界初となる宇宙飛行の計画があることを紹介。「14項目に及ぶ安全試験をすでに終え,年内にも宇宙に飛び立って,若田光一宇宙飛行士の実験アシスタント役などとして活躍してもらいます。ロボットは今や,人とコミュニケーションできるものであるということを世界に発信したい」と強調した。さらには「近い将来,1人1台ロボットを持つ時代が来ると確信しています。それはモノづくりの力が圧倒的に強い日本から始まるでしょう。ロボットは無限の可能性を秘めています」と締めくくった。
高橋氏は,2004年に自作ロボット「CHROINO(クロイノ)」が米タイム誌の「最もクールな発明」に選ばれるなど「ロボットの天才」と呼ばれ,世界で注目を浴びている。サッカーの試合で技術力を競うロボカップ世界大会では,2004年から5連覇を果たした。「2050年ごろには,サッカーW杯の優勝チームにロボットチームが勝ってしまいたい」と話している。