毎年7月にフランスで開催されるジャパンエキスポは,日本をテーマとしたイベントとしては世界一の規模と考えて問題無いと思う。規模が日本で開催される一般的なイベントより遥かに大きい。4日間の開催で25万人が参加する。参加者の構成は,多岐にわたる。家族連れや友人グループ,コスプレイヤー等。年齢の幅もかなりある。祖父母に連れられた子供も多い。
その参加者の全ては「日本が好き」なのである。マンガ,アニメファンに限らず「日本ファン」が集う。ゲームブースにはかなりの人数が群がっているが,マンガ,アニメグッズ以外にも,コスプレ用品や模造刀(洋の東西を問わず),着物や陶器,お茶や日本製菓子など。たこ焼きやおにぎりなどの日本のマンガ,アニメに出てくる食品の販売もあり,連日の盛況であった。特にたこ焼き屋台の行列は4日間の期間中,途切れることはなかった。
ステージは,和太鼓の演奏や2.5次元舞台まで多くの種類があり,特に殺陣のステージに人気が集まっていた。着物の着付け,三味線や篠笛といった楽器なども人気である。これらを見るに日本のマンガ,アニメだけでなく映画や実写ドラマへの関心は高いと思える。実写では,特に時代劇,忍者もの。
日本からブース参加している個人も多く,手作り和モノ商品から,オリジナル作品まで多岐にわたる。いわゆる「一坪ショップ」のようなものが多数出展。地方の自治体が参加しているが,その数は少ない。目撃したのは,金沢,沖縄,飛騨高山などである。(それ以外も数点あった)また,ブースも小さくポスター展示やチラシ配布程度である。飴細工などの実演展示をしているブースは人気があった。
マンガ,アニメの出店に関しては,日本からの出店はほぼ無い状態。欧州のディストリビューターが出店し展示,販売している。アニメでの一番人気ブースは,「アフレコ体験ブース」で長蛇の列ができていた。マンガ,アニメ,ゲームに関しては作品等の展示,体験,販売があり特に失望はない。
マンガ,アニメはともかく「和もの」に関しては一番の存在である京都のブース展開が広い会場を見て回ってもどこにも無かったのが,不自然であった。印象としては,日本というコンテンツのごっちゃ混ぜ感があり,日本の「ここを見ろ」感がなかったこと。「なんちゃって和もの」が多く販売されていたこと。
日本的な物を代表するのが「和もの」であるとすれば,それは「京都」的なものであるのは誰でも思うところである。「和もの」の展示や販売が多い中で,京都の存在感がほぼ無かったことである。つまり「本物」が不在なのである。「日本」の象徴都市のひとつである「京都」の出展の必要性が,強く感じられた。
ジャパンエキスポのテーマはもちろん「日本」である。参加者の多くは「日本」を求めて参加する。おそらく多くの参加者は,日本に行ったことがない人達だろう。
それでも「日本」を求めてジャパンエキスポに参加する。フランス全土,ヨーロッパ各地から。では彼女,彼らは「日本」をどのように知るのであろうか。答えは簡単。物語から知るのだ。その物語こそが日本独特の「マンガ」「アニメ」なのだ。
30~40年前からヨーロッパでも日本のアニメは放送されてきた。日本のマンガも30年程前から本格的な翻訳出版が始まった。つまりジャパンエキスポ参加者の多くが若者かまだ生まれてもいない時代から,日本文化であるマンガ,アニメに触れてきた。それが特にフランスでは多いのだ。
昨日今日の話ではない。これは江戸時代後期から150年以上続くのだから凄いわけだ。フランス人の日本好きは年季が違う。
ヨーロッパでのマンガ,アニメの広がりはフランスからだったのだ。マンガ,アニメをきっかけとして,日本文化の多くがフランスおよびヨーロッパに入って行った。その多くが日本的なもの「お抹茶」「着物」「和菓子」つまり京都的なものだったわけだ。このようにして,マンガ,アニメを利用してより一層「日本」を知ってもらうことができる。
ジャパンエキスポの例を詳細に述べてきたが,これはフランスの事だけでなく世界中で起きていることなのだ。その多くが「マンガ・アニメ」を中心としたイベントや展示会。その国はアメリカ合衆国,カナダ,メキシコ,ブラジル,フランス,ドイツ,イタリア,スペイン,スイス,ベルギー,ロシア,韓国,中国,タイ,ベトナム,インドネシア,シンガポール,オーストラリア,ドバイ,サウジアラビア等々,すべてを書ききれない。もちろん,国によっては国内各地で開催されている。
先にも書いたように30~40年前から視聴されているマンガやアニメであるから現在では各国で,同様にアニメやマンガが描かれてきている。その多くが「日本風」なのだ。生まれて来た時からマンガ,アニメが身近なものとして育って来た若者たちはすでに日本の若者と変わりがない。
海外からアニメ声優になりたいと来日する若者も多い。そして,すでに声優として活躍している。まさしく,浸透し拡散している。そして影響を与えている。
その上で改めて「マンガ・アニメ」というものをどう捉えて作って行くのかを考えなければならない。もはや世界が活動の場となっているからだ。世界が知る「日本」,その代表としての都市「京都」文化としての「マンガ。アニメ」。今こそこの「合体技」を繰り出す時ではないだろうか。
今年のフランス・アヌシー国際アニメーション映画祭では日本作品がグランプリに輝いた。
日本アニメと言えば「ジブリ・宮崎駿」作品が有名だが,今回のグランプリは全くのマイナー作品である「夜明け告げるルーのうた」だ。
そして世界的なヒットとなった「君の名は。」話題作としてロングランを続ける「この世界の片隅に」。
もはや「ジブリ・宮崎駿」の次が日本では育っている。