Accumu Vol.3

現代詩

草光 零太郎

台風一過

今朝,停留所で貼紙を見た。

「花背線,鞍馬温泉北約600mの地点に於て,道路崩壊」

路上に折れた枝をちらかして

昨晩のうちに台風は北に去った。

「掃いといてや」と命じる声に

竹ぼうきでアスファルトを引っ掻く。

乾いたいい音がするので

枝を踏んで,さぼっていると

道路崩壊のことが気になりはじめる。

(崖くずれだろうな)

見上げると,空はすっかり冴えている。

風が

互いに競いあっている気配はするが

空に崩壊はなさそうだ。

空に崩壊はなさそうだ,とつぶやきながら

竹ぼうきにしがみつき道路を掃く。


頂上の六月

石段のぼる

  風に打たれ,ワイシャツ。ひかりのひだを纏い。

石段,眼上にひきのばされて,風に吸われ,しなる背骨

  石に触れる,靴底。痕跡は熱にうずもれて

あらゆる地理はかなしい

頂上の耳。

  (なぜか今は眠っている)

よい手相をひろげたような

  川崎市麻生区,高石,高石,

昇天し。

遮る木立の葉のすきまにひかりは盗賊のようだ

ベンチで寝る。

ひとびとのゆるやかな保険不信

川崎市麻生区,高石,

目覚めると

肩に石。

さわ,さわ,さわ,あわい大気を肌に乗せ

(瞬時の波は写された)

ひかりが小止みになると。

土に,

パンフ,ばらまき。

渇いた,

消失の運命線。

     川崎市麻生区,高石,

振り向くと,んんんんん 音も無く,

        あじさいだった。

あじさいはひろげている

その横で

わたしもひろげる,ただひたすら