学生のとき,京都にいるのに京都のことを何も知らなかった人も多いのではないでしょうか。
京都は小さな都市ですが,一括りにできるほど単純ではありません。
そこで京都のさまざまなまちに出かけて,その魅力を感じてみようと思います。
今回は京都南部の酒処として有名な伏見を訪ねました。
京都市伏見区はとても広いまちで,人口は28万人を超えます。花見で有名な醍醐,競馬場のある淀も伏見区で,豊臣秀吉が隠居城として築いた伏見城を中心に広がった城下町が,現在の伏見の中心部になっています。月桂冠や黄桜,宝酒造など,名だたる日本酒メーカーの本社がある酒のまちとしても有名です。また坂本竜馬をはじめとする討幕派志士の溜まり場であった寺田屋もあり,多くの観光客で賑わっています。
日本酒の消費量が低迷している今,最盛期と比べると酒蔵の数も減っています。しかし,白壁黒板塀の重厚な酒蔵が軒を連ねる姿をまちのあちこちで見ることができ,酒蔵通りができています。冬は新酒造りが盛んなため,建物を見ながら通りを散策していると,ほんのりと甘いお酒の香りが漂ってきます。運が良ければ酒を仕込む杜氏らの歌声が聞こえてくることも。伏見は環境省の「かおり風景100選」にも選ばれています。
大坂と京都を結ぶ流通の拠点として発展した伏見には,東海道線ができるまで,川の港がありました。現在は親水公園として整備され,その面影は残っていませんが,伏見城の濠だった濠川と宇治川派流を運航する十石舟と三十石船が再現され,春から秋にかけて運航しています。酒蔵としだれ柳の並ぶ濠川をゆったりと進み,観光客に人気です。伏見港公園までの川沿いは散策路が整備され,春から初夏にかけて桜やアジサイが見事な花を咲かせます。
伏見は「伏水」と呼ばれるように,豊富な地下水に恵まれたまちです。カリウム,カルシウムをほどよく含んだ中硬水で,酒造りに最適な水であることから酒処になったのです。まちのあちこちでは地下水が湧き出ていて,地元だけでなく遠方から汲みに来る人たちで行列ができています。御香宮神社の境内に湧く「御香水」や酒蔵のそばで湧き出る「常盤井」や「白菊水」が有名で,最近では「平成伏見七名水」もできています。
伏見の酒造りの歴史から,京都市の有形民俗文化財に指定された昔の酒造りの道具など見学できる日本酒の記念館。明治期に駅売りされたコップ付きの小瓶や宣伝用のレトロなポスター,月桂冠人気に便乗したコピー商品なども展示されていて,お酒を飲めない人も楽しめます。伝統的な酒造りを行う酒香房も見せてもらえますが,予約が必要です。見学の後は,お酒の試飲コーナーもあり,気に入ったお酒を買うこともできます。売店では限定酒や伏見土産,グッズも販売。来館者全員 にお酒のお土産があるのも好評です。
【データ】
京都市伏見区南浜町247
TEL:075-623-2056
開館/9:30~16:30(受付16:00)
休館/盆・年末年始
入館料/大人300円・中高生100円
黄桜の日本酒はもちろん,地ビールと京のおばんざいが楽しめるレストランや,日本酒の造り方を説明した黄桜記念館などがひとつになった施設です。なかでもおすすめは河童資料館で,漫画家の清水崑・小島功両氏のカッパの原画や,黄桜の歴代CMを見ることができます。またカッパの生態や歴史,全国のカッパにまつわる伝承を詳しく紹介しています。広い中庭にはテーブルやイスがあって自由に休憩でき,春になると黄桜の名の由来になったサトザグラが,うす萌黄色の美しい花を満開にします。
【データ】
京都市伏見区塩屋町228番地
TEL:075-611-9919
営業時間/平日 11:30~14:00,17:00~22:00
土・日・祝 11:00~22:00 入館無料
大正8年築の月桂冠旧本社を利用した土産処&カフェ。18銘柄約100種の伏見の清酒,酒カステラ,酒まんじゅうなど,伏見のお土産を販売しています。カフェでは酒の仕込み水を使った水出しコーヒーや季節の甘味もあるので,旅の休憩におすすめ。また2種類の伏見の清酒が飲める利き酒セットもあり,気に入ったお酒を買うこともできます。地元の観光案内チラシも豊富なので,ここを起点にして伏見のまちを散策するのもいいかもしれません。
【データ】
京都市伏見区南浜町247
TEL:075-623-1360
営業時間/11:00~17:00
定休日/月曜日(祝日は営業)