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けいはんなからの新しいICTの波に乗り,次世代技術への興味を!

サイバー京都研究所所長 京都情報大学院大学教授 木戸出 正継

はじめに

けいはんな学研都市クラスター地図
けいはんな学研都市クラスター地図

サイバー京都研究所(以下,CKL)は,けいはんなをベースにICT最先端技術のいくつかを社会に具体化していく研究・教育・実践の場として,2015年6月にけいはんなイノベーションセンター(以下,KICK)内に開設されました。京都府は2014年4月に国から旧「私のしごと館」を譲渡され,名称を改めるとともに入居する研究機関と事業計画を募集していましたが,京都情報大学院大学(以下,KCGI)はその第1号と認定されました。CKLが「京都から世界へ,ICTや関連教育の研究開発が発信できる拠点」として高く評価された結果です。その拠点であるCKLが位置する環境”けいはんな“からの発信メッセージです(www.ckl.kyoto)。

関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)は,1978年に関西自ら提唱し,国の施策の一つとして,京都・大阪・奈良の3府県にまたがる丘陵地帯に民間主導で開発された学研都市です。現在,施設数が130を超え,産学官連携そして住民と一体になって活動も活発になり,緑とのふれあいや知的で文化的な交流など学研都市らしい新しい生活スタイルが生まれつつあります。(詳細は,www.kri-p.jpを参照。)

現在もより活性化するための都市計画を作成し,我が国を先導する都市建設の推進とその高度な都市運営,持続性社会のための科学技術の推進と社会展開(イノベーションの具体化),知の創造都市づくりなどの取り組みを進めているところです。

けいはんなからのICTの新たな波

KICK 航空写真

現在,けいはんな学研都市には大学や各種研究機関をはじめとする多彩な立地施設が集積し,情報通信・ロボット,環境・エネルギー,生命科学・バイオ,物質等の分野において,多様な研究開発および事業化活動が行われています。

具体的には,情報通信(以下,ICT)・ロボット分野で,国際電気通信基礎技術研究所(以下,ATR)(www.atr.jp),NTTコミュニケーション科学基礎研究所NTT-CS(www.kecl.ntt.co.jp),情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所NICT(www.nict.go.jp/ucri/),奈良先端科学技術大学院大学NAIST(www.naist.jp),同志社大学,オムロン(株)京阪奈イノベーションセンター,パナソニック(株)など。環境・エネルギー・バイオ・物質などの分野で,地球環境産業技術研究機構RITE(www.rite.or.jp),量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所QST(www.kansai.qst.go.jp),イオンテクノセンター,奈良先端科学技術大学院大学,京セラ中央研究所,島津製作所基盤技術研究所,積水ハウス総合住宅研究所,大和ハウス総合技術研究所など。そして,医工連携の拠点として,同志社大学,大阪電気通信大学,また,光医療産業バレー構想も動いています。

これらの知の拠点(人材の教育育成・技術の研究開発の場)の成果を活用し,新産業創出(イノベーション)活動が活発に行われ,目に見える形で社会展開されてきています。特に,産官学連携そして住民を積極的に巻き込んで新産業の創出を目指し,情報通信産業,環境・エネルギー産業,メディカル・ヘルスケア産業,植物・バイオ産業の集積の芽が育ってきています。

KICK

最近の話題をいくつか挙げます。まず,ATRは超高齢社会の到来を見据え,ヘルスケア・医療,生活支援などにおいて重要な役割を担うと期待される脳情報科学,ライフ・サポートロボット,無線通信技術などの研究を進めています。また,研究分野拡大を目指し,生命科学・環境・食農における取り組みも新たに開始しています。具体的には,脳機能の理解により得られた知見を応用し,多様な人にやさしい情報通信環境構築の基盤となるブレインマシンインタフェースBMIを開発しています。将来目指しているものは,心で念じただけで機械が動くインタフェースや脳内で見ている夢の可視化ツールです。人工知能AI技術が進展し,われわれの日常生活環境にいろいろなロボットが登場しています。視聴覚情報をフルに活用したロボットの高機能化や具体的な応用分野での実働を目指して,社会実験を続けています。

そして,これら生活空間でユーザ中心の視点で快適で安心な生活を提供する社会基盤としての無線通信環境の基本技術の開発にも取り組んでいます。現場での研究開発成果は,毎年秋に開催されるオープンハウスで見ることができます。(詳細は,http://www.atr.co.jp/event/event.htmlを参照。)

同様に最近話題のビッグデータ解析,人工知能AI応用,インタネット空間におけるサイバー攻撃と防御,先進的な情報サービスなど,ICTの基本要素技術の高度化と応用の可視化の成果が多くけいはんなから発信されています。この発表会は,「けいはんな情報通信フェア」として毎年開催されています。けいはんな発の最先端技術や研究成果を講演や展示などを通じて紹介する一大イベントであり,興味ある人は参加されることを期待しています。

ICT知識体系の吸収と展開

最先端のICT研究開発拠点が多く位置するけいはんな学研都市の中に,CKLが開設されました。CKLはICTにおける最先端の成果を肌で感じながら,若者も集うサイバーフィジカル融合の場を提供したいと思っています。ICT研究・教育・実践の場の一つとして,知的情報システムの研究開発とビジネス展開,および先端技術知識の体系化と関連研究者・技術者の育成に関わり,明るく元気な若者達が集まってくるけいはんな学研都市の活性化に貢献したいと思っています。ICT知識を勉強しようとしている人たちへのけいはんなからのメッセージです(参考になれば幸いです)。

多様な実世界に対応できる,マイICT知識を磨こう

(参考http://www.kcg.edu/faculty/professor/m_kidode.html

実世界で稼働する知的な情報処理応用システムのデザインをできるように勉強しましょう。必要となる知識・技術体系を獲得しましよう。現在の高度情報化社会において,コンピュータ処理の高度化・高速化・小型化を活用した,人間の日常生活を支援するいろいろな応用システムが稼働しています。これらのシステム構築における,獲得すべき情報処理技術要素は,数学・物理・論理学などの基本的な知識群から,応用先である農林漁業・医療福祉・環境管理・工場生産・交通運輸・オフィス業務などの多様な現場での実務知識群まで,多種多様で高度化されてきています。これらすべての知識を短期間に吸収することは不可能に近いと思いますが,まずは自ら興味をもち勉強の中に楽しさを見つけ,取り組む技術の糸口を探していくことから始めましょう。開発していく応用システム設計の道筋は一つではありません。社会には多様な人々が住み,そこで稼働するシステム完成への道は多様で複数あります。一人ひとりが自分で解決できる道を見つけることができるものです。

この独自の解を探す努力を積み重ねていけば,研究者・技術者として幅広く知識体系を作り上げ,自分の存在感を示し,システム開発者として成功者になっていくことと思います。そのためには,多種多様なアプローチで自分のデザインを実現する知識・技術を獲得し蓄積しておく必要があります。これが研究者・技術者に成長していく過程での勉強です。自ら興味をもち社会が必要とする知識を一つずつ吸収していきましょう。その技術が好きになれば,それに関係する周辺の知識吸収も加速され,周辺知識も含めて知識吸収が効率よく身についてきます。勉強は受け身ではなく,自ら積極的に求めていきましょう。また,高度情報化社会に必要とされる,最近のシステムデザインそして構築は,設計者単独ではなく,グループ・集団作業に基づくものが殆どです。それだけ多種多様な基礎技術と応用システム技術が必要な複雑なシステムになっています。協働して設計・構築していくグループの中で,自らの主張・見る目(視点)・実現法を確立し,存在感を顕示していき,周りから必要とされる自分らしいマイICT知識をもつ研究者・技術者を目指しましょう。類は友を呼び,良いグループはより良いシステムデザインができ,それらシステム実現によるビジネスも大きく拡がっていくでしょう。実現すべき社会システムはわれわれが日常的に利用するものです。システムデザインは素人的にシステム仕様を可視化し,複雑なシステム仕様が決定すれば,マイICT知識を蓄積してきた情報処理技術者の実装能力でスピーディに組み立てていくものです。逞しい研究者・技術者になり,実世界にイノベーションを起こしていきましょう。

技術者で社会イノベーションを多く起こし巨大な企業を作り上げた技術者”エジソン“の共感すべきメッセージを挙げます。エジソンは失敗を恐れず,沢山の発明とビジネス化を社会に出し,大会社ジェネラルエレクトリックGE社の礎を作りました。1を知れば後は芋づる式に考え,周りからヒントを得れば自分のアイデアを出し,多様な人に会い多様な知識と遭遇し,身の回りに氾濫している情報は積極的に取り入れ,その中から自分に必要な知識を探し出していったようです。その経験から出たメッセージを紹介します。

トーマス・エジソンの名言・格言集(http://iyashitour.com/archives/20390,一部・順不同)

  • 失敗したわけではない。
    それを誤りだと言ってはいけない。
    勉強したのだと言いたまえ。
  • それは失敗じゃなくて,その方法ではうまくいかないことがわかったんだから成功なんだよ。
  • 私は失敗したことがない。
    ただ,1万通りの,うまく行かない方法を見つけただけだ。
  • 絶えず変化を求める気持ちと不満こそが,進歩するために最初に必要となるものである。
  • 大事なことは,君の頭の中に巣くっている常識という理性を綺麗さっぱり捨てることだ。
    もっともらしい考えの中に新しい問題の解決の糸口はない。

等々です。けいはんなの波をウォッチしましょう。サイバーフィジカル融合を実践していこうとするCKLを足場にして,京都で勉強する特典を生かして,マイICT知識体系を作り上げていきましょう。

この著者の他の記事を読む
木戸出 正継
Masatsugu Kidode
  • 京都大学工学士,同大学院修士課程修了(電気工学専攻),工学博士
  • 奈良先端科学技術大学院大学名誉教授
  • 元東京芝浦電気株式会社総合企画部新規事業開発推進室担当部長,
    同社研究開発センター関西研究所所長,同社マルチメディア事業推進室長,
    東芝アメリカ社副社長兼Advanced InformationTechnology Center所長
  • 元奈良先端科学技術大学院大学学長補佐,同大学院大学副学長兼附属図書館長
  • 元電子情報通信学会情報システムソサイエティ会長
  • 元情報処理学会関西支部長,元システム制御情報学会理事
  • 元関西文化学術研究都市機構学術委員会副委員長
  • 元奈良工業高等専門学校運営諮問会委員長
  • 元知的財産高等裁判所専門委員
  • 情報処理学会フェロー,電子情報通信学会フェロー,IEEEフェロー
  • 電子情報通信学会業績賞,日本産業大賞,オーム技術賞,高柳記念奨励賞

上記の肩書・経歴等はアキューム24号発刊当時のものです。