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Accumu Vol.14

建築家 寺下 浩 インタビュー

京都コンピュータ学院 京都駅前校 新館

京都駅前校新館の大きな特色のひとつは,その設計を担当したのが,KCGの教職員である点です。

設計を担当した寺下浩先生に,新館設計に際しての基本コンセプトや設計上の工夫などについてインタビューしました。


― まず,新館の基本的なコンセプトをお聞かせください。

一つには,最先端のコンピュータ教育機関であるKCGのイメージを校舎デザインで表現することを考えました。「最先端」をイメージさせるために,全体としては,モノトーンの空間を基調とするシンプルなかたちで,「シャープさ」の表現を追求しました。シャープな感じを出すために,素材や色もあえて限定したものにしてみました。

校舎デザインにおいて,次に心がけたのは,KCGの歴史や連続性をうまく表現するという点です。やはり学校においては歴史や伝統が重要です。新館の向かいには,1990年に竣工して月日を重ねてきた京都駅前校本館があります。この本館とのデザイン的な連続性を意識しながら,歴史性を表現しようと試みました。

― 本館との連続性ということですが,本館との調和を保つために,新館のデザインを考える上で実際に工夫した点をお聞かせください。

まず素材に関して言うと,本館の1Fと同じように,新館1Fエントランスにも大理石が使用されています。1Fエントランスは,校舎に入るすべての学生が必ず通る場所です。そうした重要な場所だからこそ,学生に与える教育的効果を考え,素材にこだわったと伺いました。本館を建設した際に余った大理石が保存されていましたので,それを新館の1Fエントランスでも使用しました。

本館のデザインにおいて特徴的なのは,コンクリート打ち放しの表現を随所に採り入れていることです。さきほど言った最先端をイメージさせる「シャープさ」の表現方法の一つだと思います。この方法を新館でも採り入れました。

さらに,本館と新館ではエントランスの幅が,実は同じなんです。本館と新館を行き来する際に違和感のないように配慮しました。

このように,設計の際は,素材においてもデザインにおいても,本館との連続性を重視しました。

― 1Fエントランスの大理石ですが,デザインの上でかなりのご苦労があったとお聞きしていますが・・・。

ええ。実は保存されていた大理石が,新館エントランスの面積分には足りなかったのです。本館で使用されている大理石は,タイ王国産のものです。KCGは海外コンピュータ教育支援活動をしていて,最初の対象国がタイです。この大理石はそれを記念してタイより贈られたものだったのです。

新しく取り寄せた類似の大理石も使用したのですが,採掘場所・時期が違うだけで全く別の石になってしまいます。そこで,大理石の貼り方を工夫しながら,古い石と新しい石を共存させました。その結果,新館エントランスは年輪のように時間的な経過が刻印された空間となりました。

― その他に,デザイン面や建築途中に苦労された点があればお聞かせください。

そうですね。やはりエントランス部分です。新館のエントランス部分は建物において重要な玄関であるというばかりなく,その奥に創立者の銅像が置かれる特別な空間でもあります。この空間デザインの検討には時間を掛けました。

銅像の置かれている空間は3階まで吹き抜けとしましたが,それ以外のエントランス部分には,3階の教室をつなぐ廊下が通っています。吹き抜けの空間的な広がりが,廊下部分で遮断されてしまうのを防ぐために,廊下部分にあたる箇所を断面がR状になったパネルで覆い隠しました。エントランスを入って,奥に行くに従い,徐々に天井がせり上がるようにすることで,ダイナミックな上昇感を伴った独特な空間を創り出しています。

またeラーニングの教室は,校舎としての前例があまりなかったため,苦労しましたね。教室内部の仕様変更,eラーニング用の設備機器との調整など,現場で逐一確認しながら工事を進めていきました。

― eラーニングスタジオのように,従来の建築物と比べて新しい取り組みがあればお聞かせください。

南北の校舎外観では,連続するアルミパネルを使用しましたが,これは既製品では対応できず,この建物のためにサッシメーカーに製作してもらいました。

校舎の外観は,日々多くの人の目に触れます。特に,学生さんの意識に与える影響は無視できないものがあると思いますので,特に注意をしました。さきほど言った「最先端」というイメージを生むため,アルミ板の光沢,板の形状など,デザイン上さまざまな検討をしました。

また新幹線側(南側)の壁面には,列車の客席からも見える大画面の映像を映し出せる映写室を設けました。映像を映すために専用の映写室と大きなガラスを設置し,ガラスには映写用のスクリーンフィルムを貼っています。京都駅前校新館は,建物自体が情報発信基地であることを目指しています。これは従来の校舎と大きく異なる点です。

― その他,デザイン面で工夫した点があればお聞かせください。

ええ。学びやすい環境の実現に心を砕きました。例えば,教室の照明については,コンピュータのある実習室が多いため,グレアカット対策として蛍光灯があまり映りこまない照明にしています。

教室内部では高さを強調した空間にすることで,広がりを感じられるよう工夫しています。具体的には,細長いガラスとアルミパネルを交互に連続させることでその効果を生み出しています。

― ところで,寺下先生はKCGで授業を担当されておられますね。授業をする上で,学生に対して希望することがあれば,最後にお聞かせください。

京都コンピュータ学院鴨川校で,建築やインテリアについての概念や設計を学ぶ「空間デザイン」という授業を担当しています。建築は自分の考え方,感性を「かたち」にしていく作業です。学生には自由な発想,考えで課題等に取り組んでもらい既成観念にとらわれない建築を創造してほしいです。

― 先生の授業を受けている学生にとっては,まさに新館は生きた学習素材となりますね。今回,お話を伺うことで,新館にはさまざまな思いが込められ,「かたち」になっていることがよくわかりました。本日はありがとうございました。

(インタビュー:アキューム編集部)

京都コンピュータ学院 京都駅前校 新館
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寺下 浩
Hiroshi Terashita
  • 石川県金沢市生まれ
  • 金沢工業大学建築学科卒業,一級建築士
  • 株式会社日立建設設計,株式会社C+Aを経て,2002年,寺下浩一級建築士事務所を設立
  • 京都コンピュータ学院講師として「空間デザイン」「CAD」を担当

上記の肩書・経歴等はアキューム14号発刊当時のものです。