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Accumu Vol.12

情報学科が目指す教育

京都コンピュータ学院では,2003年度,創立40周年を記念して新しく4年制の「情報学科」を設置する。

秒進分歩で技術が発展しているといわれるこの時代に,どのような教育を目指しているのか。

情報学科設立の中心的メンバーとして活躍されている教育統括部の渡辺 昭義先生,松本 哲先生に話を聞いた。(以下敬称略)


―まず最初に,この学科の設置目的について伺いたいのですが。

松本 情報学科は,「いつでも,どこでも,だれでも情報入手」といわれるユビキタス社会の新規ビジネスに対応する高度なソリューションエンジニアを育成することを目的として設置されました。

―ソリューションエンジニアというのは,具体的にはどのようなことをするエンジニアなのでしょうか。一例を挙げていただくと,わかりやすいのですが。

松本 従来型の,商品を単に販売するシステムではなく,IT(情報技術)を駆使して,独自のアイデア・知恵による付加価値を加え,顧客の満足するサービスを提供できるシステムを構築する能力を持ったコンピュータエンジニアのことです。それは,SOHO的なビジネスでのIT化であったり,中小規模ビジネスでのIT化であったり,何百人もが関わるプロジェクトを束ねた大規模ビジネスでのIT化であったりします。

―少し前になるのですが,ITソリューションという言葉がよく聞かれましたが,そのITソリューションとこのソリューションエンジニアというのはニュアンス的にはどうなんでしょうか。同じなのでしょうか。

松本 同じと言えると思いますね。世の中ではコンピュータがいろいろな分野に浸透しており,その利用法は多様化してきていますよね。その多様化したどの分野にでも対応できるような,幅広い意味でのITに対応したスキルを身につけたエンジニアを四年制という長い期間で育成したいと考えています。

―そうなると,ITのスキルを身につけているだけではだめなのでしょうか。

松本 ITのスキルを身につけておくことは当然なのですが,加えて幅広い知識が必要だということですね。

「いつでも,どこでも,だれでも情報入手」のユビキタス時代では,生活のあらゆるところでコンピュータが入り込んでおり,私たちはコンピュータという「もの」を意識せずにコンピュータの恩恵を受けています。その分,多様なコンピューティングに対応したエンジニアが必要とされています。こうした状況をにらんでいろいろな科目を取り入れています。よって,既存の各学科のコアとなる科目をすべて包括したようなカリキュラム構成になっています。多様なITのスキルを身につけ,そのITスキルを駆使して,ワンランク上のソリューションを自分で考えられるエンジニアになってもらいたいですね。

―ということは,かなり幅広い分野の勉強をするということになるのでしょうか。

松本 はい。ただし,表面的な幅広さではなく,すべての基礎となるような理論は幅広く学習する反面,自分の得意あるいは興味のある分野に関しては,専門的かつ実践的に学習できるようなカリキュラムになっています。

―情報学科は四年制ということで,具体的にはどんなことが学べるのでしょうか。

松本 最終学年では,システム開発ゼミナールという,時間にして一週間のうちの二日をかけた大規模なOJT(On the Job Training)に似たゼミナールを用意しています。企業に出て行く前に実践的研究を行い,企業に入ったら即戦力となるエンジニアを育成します。また,基礎的なところを学習する科目,知っておきたい理論として,まず情報科学の基礎理論であるコンピュータ系基礎科目(計算機科学系,ソフトウェア言語系,アルゴリズム論など),数理系基礎科目(情報数学,離散数学,確率論,数理計画法,暗号理論,データマイニングなど)が用意されています。さらに,コア的な応用技術であるネットワーク技術,データベース技術およびマルチメディア技術を学習します。

技術の進歩に応じて科目構成は年々違ってくるかと思いますが。

渡辺 これまでは,ネットワークとかマルチメディアとか,ITの一部を特化することで新しい学科を設立してきたのですが,今回はITをベースとして,横断的な深みのある学科を作ろうとしているんですね。初年度は基礎的なことを勉強しつつ,各人の興味・関心に応じていくつかのフィールドを考える。その一つのモデルとしてe‐コマース(電子商取引)みたいなものがあり,科学的なアカデミックなものがあり,また,ゲームのようなエンターテイメントがあり,芸術があり,ということですよね。

やはり,全般的なものの考え方として,オブジェクト指向的にソフトウェアを作っていこうという流れがコース全体を通してありますね。

松本 ソフトウェアのテスト手法なども新たに取り入れて,より信頼性の高いシステムを構築できるエンジニアを目指しています。

―なるほど。では,四年間で卒業したあと,どういった分野での就職を考えていらっしゃるのかをお聞きしたいのですが。

渡辺 もともと,総合的な学科ですから,一つ根幹となるものをベースとして,その上で興味・関心に応じて分かれていくので,分野というのは興味・関心に応じてどこでもありうると思いますね。特定の分野に限定されることはありません。 広範囲なことを一,二年かけて勉強しておいて,それから,その中で自分の興味のある分野をさらに掘り下げて勉強していく。卒業後は,もちろん自分の得意な分野に就職してもらいたいけれど,ITソリューションを駆使して働くことができるので,どんな分野の仕事にでも就けるということですね。

現代はある意味,細かい業種分けなどがだんだん意味をなさなくなってきています。この時代にあって,そういう業種分けというのは,コンセプトとしてはどうかなあというところがありますね。ただ,根幹として,ITスキルで基礎とされているデータベース技術,マルチメディア技術,ネットワーク技術があって,そういう二年制の情報処理科ITコースのカリキュラムをベースとしておいて,さらに,データベース技術ならデータベース技術のもっと理論的なところ,深いところを掘り下げつつ,三,四年次,とくに四年次に他に例を見ない大規模なゼミナールで実践的なことをやろうというコンセプトです。時代のニーズに応じて,学習者の興味・関心に応じて,全く新しい勉強をしてゆくということですから,どんな企業にでも行ける。だから,「こんな企業に行ける」ということではなくて,あえて言うならば,いわゆるIT分野全般ということですね。

―少人数のパワーエデュケーションとあるのですが,具体的にどれくらいの人数で考えているのですか。

渡辺 企業における少人数のプロジェクトと同じくらいというのが,基本的な考え方ですね。例えばゲームですと,企画する人がいて,絵を描く人がいて,プログラムを作る人がいて,音楽を作る人がいて。それぞれが一人とか二人とかいて,全部で十人とかになる,と。実際に社会に出ると,一人で作るのではなくて,何人かでチームを組んで,コラボレーション(協働)しながら一つのソリューションを提供するといったことが多くなります。そういうコラボレーションの技術も身につける必要があります。

また,TA(Teaching Assistant)などをして下級生を指導し,学校全体を引っぱっていくというような活動をすることで,就職したときに一つのプロジェクトのチームリーダーとして引っぱっていけるリーダーシップの能力も培われると思います。

―四年次の「企業研究」というのもおもしろい科目名だと思うのですが。

渡辺 これは,企業でのインターンシップをしてもらうことを考えています。

―では,この企業研究とシステム開発ゼミナールをあわせて,今よく聞かれる産学連携で,一つのプロジェクトを行っていくようなことも考えられているのですか。

松本 関西ではあまり例がないそうですが,取り組んで行く予定です。

渡辺 学院の中だけで閉じてしまっていては,限定されたものになってしまい,あまり意味がないですからね。いろいろな可能性があると思います。幸い,学院には社団法人京都府情報産業協会の事務所があるのですから,協会の企業とも連携をとることも予定しています。

―最後になりますが,この情報学科にはどういった学生に入学してもらいたいか,どういった若者に来て欲しいかのビジョンをお伺いしたいのですが。

松本 単なるコンピュータへの憧れだけではなくて,どういった分野でコンピュータを駆使したエンジニアになりたいのかという明確なビジョンを持った学生に来てもらいたいですね。つまり,多様な分野の中から自分の興味のある分野に熱中できる人に入学してもらいたいですね。

渡辺 科目名としては難しそうなことが書いてあり,何でもできるというのがコンセプトですが,やはり大切なのはコミュニケーションのスキルだと思うんですね。いろんな人が集まってくる学科なんだろうということを踏まえて,いろいろな人と話して,どんどん知識を吸収していこうとするような人に来てもらいたいですね。これだけ多くの科目がありますから,がんばれば技術は必ず身につくと思います。さらに,コミュニケーションスキルを身につけるために,ここに来たらいろいろな人に出会えるな,その中でいっしょに何かを作っていきたいと,そういう意図を持っていることが大切だと思います。なんか楽しそうだと思うような心構えが大切ですね。実社会に出ると,一人で仕事をするということはほとんどなくて,いろいろな考え方を持った人と仕事をして,そういう人たちにビジネスなりソリューションを提供するということになれば,最終的にいろいろなビジョンを持った人とどんどんコミュニケーションをとらなくてはいけない。その中でステップアップした解決法ができ上がる,システムができ上がる,そういう仕事をしたい人に入ってきてもらいたいですね。

―就職指導などで学生と話をし,内定が決まったとか,落ちたとかいろいろ聞くのですが,大前提として最低限必要なコンピュータの技術はもちろんのこと,やはりプラスアルファとしてコミュニケーションの技術というか,元気があるというか,そうしたことは非常に大切だと感じますね。

松本 人とうまくコミュニケーションをとることのできない学生は,技術があってもやはり就職はなかなか難しいといえるでしょう。そういう意味ではコミュニケーションがとれて,元気があって,何かやってみたいという学生がこの業界で活躍できると思います。

渡辺 京都駅前校の初めての四年制の学科ですので,創立40周年ということもありますし,既成の学科を引っぱっていける,学校全体を盛り上げていける学科にしたいですね。

―本当にそうですね。本日はお忙しい中,貴重な時間を割いていただき,本当にありがとうございました。

渡辺・松本 ありがとうございました。

この著者の他の記事を読む
渡辺 昭義
Akiyoshi Watanabe
  • 京都情報大学院大学教授。
  • 北海道大学工学士,京都大学大学院修士課程修了(応用システム科学専攻),工学修士。
  • 元ナカミチ株式会社勤務。

上記の肩書・経歴等はアキューム22-23号発刊当時のものです。

この著者の他の記事を読む
松本 哲
Satoru Matsumoto
  • 京都コンピュータ学院卒
  • 現在,学院にて教鞭をとりながら,信州大学大学院工学研究科在籍中

上記の肩書・経歴等はアキューム12号発刊当時のものです。