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Accumu Vol.7-8

二期制実施とカリキュラム改革

京都コンピュータ学院鴨川校校長/京都大学理学博士 作花 一志

1年間30週というのは長いようで結構短いものである。教師から見れば言い足りなかったこと,演習の時間がとれなかったこと,等々が多数あり,もっと時間が欲しいと思うこともある。しかし学生からみれば,1週間に一度の授業内容を1年間も持続させて学ぶことはつらいようだ。毎週,同時に何科目も均等に学習することは確かに能率が悪く,短期間に集中して専念した方がマスターし易い。また授業は教師と学生がインタラクティブに行われねばならないはずだが,どうしても一方的な知識の伝達に終わってしまう。思い切った改革をせねば,このままでは授業はマンネリに陥り,学校自体が不活発になってしまう。

そこで,1996年度より前期・後期それぞれ独立に授業が行われ,半期で成績が認定される「二期制」をとることになった。併せて学生が自分自身で時間割を作成し自分なりのカリキュラムに従って学習できるように,必修科目を大幅に減らし,選択科目を増やすことにした。これはここ数年間何度も提案されながらなかなか実現できなかった。その主な理由は,

・・・果たして半年でまとまった授業ができるか? 実際これまで講義系科目も実習系科目も教科書は1年間の予定の範囲まで進まない・・・。

ということだったが,今や内容・制度とも抜本的に見直さねばならない時期にきている。そこで,まずは他の学校の様子はと,主として京都の私立大学の様子を密かに調べてみた。するとほとんどの私立大学は前期4月~7月,後期10月~1月の二期制をとっている。近年,大学も魅力ある授業をめざして,さまざまなカリキュラム改革を実行している。

ある教授曰く,「緊張を集中させるには半期くらいが丁度いいですよ。」

またある教授曰く,「夏休みを挟んで連続のような不連続のような授業をしなくてもすむようになりました。」

またある教授曰く,「実際には○○学1,○○学2で1年間通して講義されてる先生も多いようで・・・」

またある教授曰く,「土曜日休みとからめて実行しましたが,その年度は大変でしたよ。」

なるほどいろいろ難点はあるが,授業改革の突破口にはなりそうだ。実施準備のためワーキンググループが結成された。ここは協議するだけでなく,文字通り作業部会であり実行委員会でもある。会合を開く度に,新たな問題点が湧出しほんとにできるんやろかという不安にもかられる。そうこうするうちに新年度が間近になってくる。

まず第1段階は日程の設定だ。前期は夏休み前に終わらないといけないので4月の開講はなるべく早く,そして夏休み入りは2週間は遅らせねばならない。といっても前期試験が終わったら残暑の声というわけにはいかない。後期は前期よりも授業日数は多いが,均等にしないと何かと事務手続に支障をきたす。これまで行ってきていた学校行事の日程も移動させねばならないものがでてきた。

さてその次は科目の設定だ。すべての開講科目を総点検し,あるものは存続,あるものは廃止,あるものは半期で終了,あるものは週時間を減らし,あるものは後期に後続科目を作り,あるものは内容を大幅に改訂する,そして何を必修科目とし何を選択科目とするか,またどんな新設科目を設置するか,・・・という大ナタを振るわなければならない。まさにカリキュラムのリストラだ。従来の科目○○○が新年度からは□□□に対応するという新旧対照表を作る。そして最後の段階は履修登録である。なるべく学生に自由選択させるということは,各クラスを設けそこに時間割を割り当てるよりよほど難しい。学生はきちんと履修登録してくれるだろうか? ちぐはぐな登録をして系統的な学習が難しくなるなんてことはないだろうか? 学科・校舎による受講制限は大幅に減らしたが(規制緩和は時の流れ),これで果たして大丈夫だろうか? 履修登録担当の教職員の方々にはデータ修正の連続作業で大変ご苦労をかけた。

とにかく二期制・単位制に基づくカリキュラムがスタートした。到達目標は立て易くなった。新入生と2・3回生が,既習者と初心者が机を並べて一緒に受講するという風景は当然のことながらずっと増え,学年・クラスという意識は次第に薄れてくる。今回の改革の出発点は学生の科目選択の自由度を大幅に増やして,自分自身で時間割メニューを作れるようにすることであった。それには与えられた時間割を受け身的にこなすような学習態度ではなく,学生が自分自身で学びたいことを見つける(探せば必ず見つかる)ことが必要だ。それを早く見つけ自分の財産を作っていってほしいものだ。筆者達の学生時代には講義中に「授業で習うのは入り口だけ,勉強は自分(達)でするものだ。」と公言する先生が多くいて,学生もそれもそうだと納得していたものだ。しかし今どきこんな教師の責任回避ともとれる大胆な発言をする先生は国立大学の教授にもいないだろう。学生はそれに抗議する前にさっさと逃げてしまうだろう。しかしこの言葉には真実が含まれていると思う。学校で塾で習う時間だけが勉強ということに慣れてきたら,自分で参考書を探すことにも苦労する。ましてや自分でテーマを選ぶことは苦痛であろう。だからどこの学校でも卒業研究では学生も教師も苦労しているのが実態らしい。

どんな制度にも一長一短がある。すべてがめでたしめでたしというわけにはいかない。初年度は不慣れなこともあり,半期では内容が消化できにくい科目も少なくないようだ。一つのクラスに1・2・3回生が混在していることで授業レベルの低下が心配されたが,試験の結果はかえって1回生の方が好成績という科目もあった。種々の問題点も生じるが,スタートしたばかりのこのシステムを発展させていこう。

さて,以下は筆者が今年の各学科の特徴を聞いて回った結果である

情報工学科(1996年度新設)

本格的に情報工学を学ぶ4年制学科が出来た。カリキュラムはすべて大学の情報工学科に準拠する。1・2回生の間は数学,電磁気学などの基礎的な科目が多いが3・4回生では計算機工学・コンピュータコミュニケーション・知識工学・電気電子工学の各専修に分かれて専門分野を学び卒業研究を行う。新入生が卒業するのは今世紀最後の年になるが,それがどんな時代になるか予想はつけにくい。

コンピュータ工学科

これまで情報工学科は,一貫して3回生でのオリジナルパソコン制作を前提としたカリキュラムを1回生から段階的に行ってきた。1995年度からゼミナ-ル制をとり,3回生でロジックCAD,メカトロニクス,画像工学,オリジナルOSなどに分属して卒業研究を行っている。ただし,学習の二本柱は電子回路・論理設計などハード系の基礎科目とC言語・アセンブリ言語などプログラミング実習であることは変わりない。

情報科学科

3年間の初めの1年半は情報処理科と共通科目が多く,最重要科目はC言語でビシビシしぼられる。一方,担当者は学生から鬼と言われながらも,彼らがいつかは感謝してくれるだろうと信じつつ,ひたすらレポートを課し添削して返却するという,お互いにキビシイ世界なのだ。3回生になるといずれかのゼミナールに所属して卒業作品を制作する。そのうちに1・2回生で必要単位をがっぽり稼いで3回生ではゼミだけ,ヒマができたので英会話でも(またはバイトに専念)というどこかの大学生のような生活を送る学生も出るだろう。

メディア情報学科(1996年度新設)

現代社会は「マルチメディア」という言葉なくして語れなくなった。21世紀には多数のマルチメディアSEが必要だと言われている。1回生の時は情報科学科とほぼ共通で基礎的なことを学ぶが,2回生後期からはハードの実習も予定されているし,またアートのセンスも磨かねばならない。10年先20年先を睨んだ分野だけに学習する内容は多い。

情報処理科

最も伝統ある標準的なコースで,数年前に比べると比率が減ったとは言え,やはり最多数派である。かってはFORTRANの,そして3年前まではCOBOLの演習・実習が学習の中心だったが,現在ではC言語に変わっている。2回生の最重要科目は卒業実習で,テーマごとに分かれて卒業作品を制作する。1995年度まではデータ検索ソフト制作とゲームソフト制作がメジャーテーマだったが,今年は時代の流れかインターネット関連の作品を制作する者が多い。

国際情報処理科

情報処理技術+実践英会話の修得というのがこの学科の目標であり,海外研修が課されている。情報化・国際化は時の流れと言われてから久しいが,狭い日本にいてばかりでは異文化はいつまでも異文化で終わってしまう。未知の世界に飛び込んで新しい貴重な体験をたくさんすることだ。ただしコンピュータ技術系の課題もたくさん待っていることを忘れずに。

芸術情報学科

1996年春,第一期生が卒業した。1回生ではデッサン・ドローイングなど美術系の科目が多く,コンピュータグラフィックスは静止画が主。2回生になると映像,アニメーションなど動画の作成法を学ぶ。実技が多く講義は少ないので前期後期の試験中はかえってヒマだとか。毎日夜遅くまで仲間とワイワイ言いながら,MACから離れないのがこの学科の学生の特徴である。今後は出版技術面の実習も増やしていく計画だという。

感性情報学科(1996年度新設)

コンピュータを用いて自己の感性を伸ばし,自己表現の作品を創り出す時代になった。1回生の授業は芸術情報学科と同名のものが多いが,音楽演習(下記参照)というユニークな科目も開講されている。2回生ではインテリアデザイン,ADデザイン,コンピュータミュージック等々の各専修に分かれてそれぞれの分野を専攻する。芸術情報学科の場合と同じくアメリカ・ニューヨーク州のロチェスター工科大学との教育提携が非常に重要な要素になっている。

情報処理技術科

昼間部は1年,夜間部は2年課程でアプリケーションソフトの活用が学習の中心となる。この学科の学生の特徴は,企業から派遣されてくる人,大学卒,脱サラ,さらには定年退職してからもう一度勉強をという人等々,学生層がバラエティに富み,平均年齢が非常に高いことだ。実務経験のある中高年の新入生を前にして,先生もやりにくいだろうが,かえって助かることも少なくないそうだ。

ハイパードキュメント

「パソコン実習」という科目は10数年前に設置され,MZ-80,パソピア7,PC9801,そしてFMVと時とともに実習機を変えてきたが,1996年から内容も一新し科目名も変更した。ウィンドウズシステムの基礎を学んだ後,ワープロ技術から始って,描画技術,画像の取込みと編集,音声の取込みと編集,スプレッドシートの活用,ホームページ作成,などを短期間に修得する。名称を変更したことと学年・学科によらない自由選択制に切り替えたことで,受講生数は予想を大幅に上回り,担当者は悲鳴をあげた。

音楽演習

音楽鑑賞はこれまでずっと行われてきたが,実際に演奏する「音楽」授業は初めてだ。まずは楽譜の読み方・書き方から,そしてクラシックからジャズ・ポップスまで,さまざまなジャンルにおける音楽の構成について学ぶ。学生はヘッドフォンをつけてキーボードを演奏する。バイエルから始める者,自作の曲を奏でる者・・・。後期は合奏に挑戦し,学年末には発表会が開かれる。

一般教育

多種多様の一般教育科目が開講され,それを学年・学科によらず選択できるのは本学院生の特権である。毎年受講希望者数のトップは心理学で,次いで天文学だそうだ。科学の進展はコンピュータ技術の開発を促し,また同時にコンピュータによる新技術は科学の進展をもたらしてきた。人はどのようにして知覚するのか? 脳・神経はどんな方法で膨大な情報を処理しているのか? 見えるはずのないブラックホールやビッグバンのことがどうしてわかるのか? 人類は絶えず未知の領域に進出しているが,そのまた向こうには新たな未知の分野が広がっている。

APIゼミナール

1996年度は情報科学科3回生のために8ゼミが開講されているが,その中で毎年一番希望者が多いのがこのAPIゼミである。なぜ人気があるかというとこのゼミではゲームを作っているからで,毎年2月に行われる卒業研究発表会では素晴らしい作品が披露される。学ぶのはキャラクターをスムースに動かすにはどうするかというような細かいプログラミング・テクニックだけではない。ゲームの構成を考案し,シナリオを作り,しかも世に溢れているものとはひと味違ったオリジナル作品を目指して,ゼミ生は授業終了後もそして自宅や下宿でも奮闘している。

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作花 一志
Kazuyuki Sakka
  • 京都情報大学院大学教授
  • 京都大学大学院理学研究科宇宙物理学専攻博士課程修了(宇宙物理学専攻)
  • 京都大学理学博士
    専門分野は古典文学,統計解析学。
  • 元京都大学理学部・総合人間学部講師,元京都コンピュータ学院鴨川校校長,元天文教育普及研究会編集委員長。

上記の肩書・経歴等はアキューム24号発刊当時のものです。