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Accumu Vol.20

服装について

ちゃんとした服装とは

もしもビジネスマンに「あなたはちゃんとした服装をしていますか?」と聞くと「『ちゃんと』かどうかはわからないけれど,取りあえず,スーツを着てネクタイはしめていますが…」というようなちょっと自信無さげな答えが返ってくるのではないでしょうか。仕事で服装はどうすべきかというお話をしてみたいと思います。

さて,同じ「スーツとネクタイ」に対して「ヨレヨレ」という言葉しか思い浮かばない人もいれば,「パリッとしている」人もいます。「人は見かけが9割」という本が数年前に話題になりましたが,ノンバーバル(非言語)・コミュニケーションはとても大切です。「ヨレヨレ」は仕事がいい加減そうだし,「パリッ」はテキパキと仕事をこなしそうだと大抵の人が思うのは事実でしょう。「人は見かけじゃありません,中身です。私の仕事ぶりを見てください」と言う人がいるかもしれませんが,一言を発する前に「私はいい加減な人です」と全身から情報発信してしまうと,「ヨレヨレの割にテキパキ仕事する」と納得してもらうまでが大変です。

「私は営業職でないし,外部の人と滅多に会わないので関係ない」と言う人も,服装に構わなくてよいか,というと恐らく違うでしょう。南極基地のような極限状況で,髪を梳かしたり服をきちんと着ようとしたりする人は,そうでない人よりずっとがんばると言います。外見を整えるということは他人のためであるだけでなく自分自身を鼓舞するような働きもあるのです。

では,どんな服装が良いのでしょうか。結論的には,学生向けの就職対策本で解説されているような『身だしなみ』の注意点で大抵の場合は事足りるのです。では何が問題なのでしょうか。

簡単な思考実験をしてみましょう。あなたは「変な恰好をしなさい」と言われたらどうしますか。色や形が奇天烈な恰好をするのは一つの正解でありますが,実際には難しいでしょう。簡単なのは大きすぎる服あるいは小さすぎる服を着ることです。典型的な例は,チャップリンやMr.ビーンのような恰好です。ダボダボの服は無頓着な人を示唆しますし,ツンツルテンの服は神経過敏な人を示唆します。ここ数年はタイトな服が流行りなのでそれほどツンツルテンが変に見えなくなっていますが…。というわけで,サイズが適正だと恰好良いのです。なお,デザインの変化が極めて緩やかなメンズ服でもサイズに流行がありますので注意が必要です。

おじさんを素敵に変身させる企画で一番のポイントは「サイズが大きいのを直す」です。昔はジャケットの大きさは「ボタンを留めてこぶしが入るくらい」などと言われていたのですが,最近は「ボタンを留めるとうっすらとしわが入るくらい」です。

買い方

注文服なら完全に寸法を合わせてもらえるでしょうが,既製服を買う人が圧倒的に多いと思います。既製服でもサイズをきちんと見極めるようにしましょう。サイズ・タグは他人には見えないのですから,変に見栄を張って大きめのジャケットを選んだりしてはいけないのです。

女性は小さいサイズを選ぶ傾向があり,そのため9号サイズの服が規格より大きくなっているといわれています。

慣れないうちは自分はどのサイズかと先入観なしに小さめから大きめまで,横や後の姿も鏡で確認しながら着てみるとよいです。フィットしているか店員にたずねてみましょう。良い店員ならダメならダメとはっきり言ってくれます。

そもそもスーツを買うときはスーツを着て買いに行くべきです。カジュアルな恰好をしていると大抵寸法が正確に測れないし,イメージが湧きにくいからです。今までと同等かそれ以上によいものを買うために今までの服を着て行くわけです。それから,お直し代がかかるためか袖丈が長くても直さない人がとても多いようです。袖からシャツのカフが1・5センチくらい出るようにジャケットの袖丈をぴったり合わせましょう。

重要なものとして,ネクタイについて触れておきます。ネクタイはもちろん色や柄,さらに大剣幅の問題もあるのですが,一番のポイントは長さです。ネクタイは締めた時に大剣の先がベルトにかかる程度がよいとされています。さらに,できれば大剣と小剣の先はほぼ同じにすべきといわれています。つまり適切なネクタイの長さとは「首周り+首からベルトまでの2倍+結び代」です。ジャケット,パンツ,靴,みんなサイズがあるのに,ネクタイのS,M,Lはたぶん見たことが無いと思います。しかし,当然のことながら体格によりネクタイの適切な長さは異なるのです。長めのときは小剣の方をループにまきつけて調整することも可能ですが,できればジャストサイズのものを購入しましょう。ちゃんとしたお店なら,言えばネクタイの長さを測ってくれます。短いネクタイの滑稽さはかなり強烈に印象に残りますので特に気を付けてほしいところです。

着こなし

ジャストサイズの服や靴を買ったとして,普段気を付けてほしいことを少し列挙します。

  • 脚を組んでもすねが露出しないようにする。ホーズ(ハイソックス)を履くとよい。
  • 靴とベルトは色を合わせる(黒には黒,茶には茶。茶は厳密に合わせなくてもよい)。
  • ジャケットのボタンは一番下は留めないのがルール。座るときははずし,立ち上がるときは留める。よく欧米のトップの人は飛行機や車から降りる時にボタンを留めます(つまりその前ははずしていたということ)。些細なことですがこのしぐさが自然にできると恰好良いです。
  • 人前でズボンをずりあげない。ズボンを下げなければならないようなことをしたことを示唆するので,大変に無作法なしぐさとされています。

終わりに

私はビジネスにおける男の服装の評価は減点法だと思います。慎重に吟味してアイテムを購入し,丁寧にメンテナンスし,見えないところまで含めて徹底的に装うことに気を付けた最高の結果が「ごく普通の服装だけど,思い出してみるとなんとなく恰好良かったなぁ」というものです。これを『標準』として,「ネクタイが短い」,「ジャケットが大きすぎる」,「ジャケットの下のボタンまで留めている」,「靴下がずりさがってすね毛が見えた」,「靴のかかとが減っている」などなど些細な要素でどんどん減点されていき,最終的に「まあ,普通と言えば普通の恰好だけどだらしない」という印象を他人に与えてしまうのです。本人の能力と意欲とは全く別に「私は仕事があまりできません」というメッセージを全身から発する人になってしまうのです。なんだか不条理な気もするのですが,それが現実なのです。そこで「どうせお金をかけて服や靴を買うならちゃんとした方がよいのでは」と小文を書いてみました。私自身は服装に気を使いはじめて,仕事上のメリットがあったかどうか実際にはわからないのですが,ほんの少し自信がつきました。この小文で服装について関心を持っていただけたら幸いです。何からはじめてよいか分からない方,まずは,服のサイズがピッタリかどうか多くの人を観察することからはじめてはいかがでしょうか。

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渡辺 昭義
Akiyoshi Watanabe
  • 京都情報大学院大学教授。
  • 北海道大学工学士,京都大学大学院修士課程修了(応用システム科学専攻),工学修士。
  • 元ナカミチ株式会社勤務。

上記の肩書・経歴等はアキューム22-23号発刊当時のものです。