JMOCC,情報処理学会など主要団体と相次ぎ協定締結,政府に政策提言などコロナ禍の中で存在感
政府や各大臣からも日本IT団体連盟による業界主導のIT教育が期待されている
2020年2月6日,都内で現役の国会議員41名,官公庁関係者22名,その他,日本のIT関連団体,企業関係者多数,総勢200名を超す人々が集まり,一般社団法人全国地域情報産業団体連合会(ANIA)・一般社団法人日本IT団体連盟(IT連盟)の合同新春交歓会が行われた。IT関連分野では日本最大規模の業界団体であるIT連盟は今年に入り,日本を代表する学術・教育関連団体と相次ぎ協定を締結した。また,政府に対しては,withコロナ時代を見据えたデジタル化・オンライン化推進のための政策提言を行うなど,コロナ禍の中でも存在感を示している。これらを牽引するのは,交歓会の錚々たる参加者たちの中でも常に輪の中心にいたKCGグループ統括理事長 長谷川亘(IT連盟代表理事・筆頭副会長,ANIA会長,京都情報大学院大学教授)だ。
IT連盟は,国内IT関連の主要約60団体(加盟法人約5000社,総従業員数約400万人)※が集い,世界最高水準のIT社会構築(IT社会の発展に向けた恒久的な対策の企図,IT関連団体としての窓口の一本化,IT教育の振興,優秀なIT人材の育成)を目指す国内最大規模の団体で,CSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会 会長荻原紀男氏),JASPA(全国ソフトウェア協同組合連合会 会長安延申氏),JIET(非特定営利活動法人日本情報技術取引所 会長南出健治氏)そしてANIA(一般社団法人全国地域情報産業団体連合会 会長長谷川亘)の4団体が集まって2016年7月22日に誕生した。現会長はYahoo!基金理事長(Zホールディングス株式会社代表取締役社長CEO)の川邊健太郎氏,代表権を有する筆頭副会長はKCGグループ統括理事長・京都情報大学院大学教授 長谷川亘が務める。KCGグループからは,同教授 中村真規(株式会社デジック代表取締役社長),同教授 立石聡明(一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会副会長・専務理事),同教授 別所直哉(紀尾井町戦略研究所株式会社理事長)含め4名が理事を務めている。IT人材を多数育成するための教育推進に力を注ぐべく,政府とのコミュニケーションを密にしながら,産官学一体となって取り組むための提言を行い,その具体化を促進する中心となっている。
※加盟会員数は年度ごとに多少変動します。
即効性のあるリカレント教育を支援する「eラーニングプラットフォーム」の発展を目指して
IT連盟は2020年5月,累計340講座,100万人以上が学習する日本最大のオープンオンライン講座を実施するJMOOC(一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会)とIT人材育成における協力事業に関する協定を結んだ。この締結はIT連盟の長谷川代表理事・筆頭副会長と,元早稲田大学総長であるJMOOCの白井克彦理事長とが中心となり,協議が進められ実現に至ったものだ。
わが国のIT人材の不足は深刻な状況が続いており,経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年4月)によると,10年後の2030年には不足数が79万人にのぼると推計されており,とりわけサイバーセキュリティ対策を講じる人材,AIやビッグデータを使いこなす新しいビジネスの担い手の育成が緊急不可欠であるという。そのような中,IT連盟では急速にITの応用が進むわが国の産業界において活躍できる人材を育成するための学習機会を提供するために,独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「iコンピテンシ ディクショナリ(iCD)」をベースにeラーニングの科目のコンテンツ作成を進める計画である。この点で日本最大のオープンオンライン講座数を有し,幅広いジャンルにおける高等教育の発展と人材育成を目指すJMOOCと方向性が一致し,協力事業協定を締結するに至った。双方が協力して情報技術資源を共有し,即効性のあるリカレント教育を支援するeラーニングプラットフォームの発展を目指し,IT教育のeラーニングコンテンツを広く配信してIT人材の育成につなげていくことを目標としている。
JMOOCとの協定締結と時を同じくして2020年5月に,IT連盟は一般社団法人情報処理学会と産学協力事業に関する協定を締結した。この締結はIT連盟の長谷川代表理事・筆頭副会長と,1960年の設立以来,情報処理分野において60年間にわたり指導的役割を果たしてきた,会員数2万人からなる情報処理研究者および実務家団体である情報処理学会の江村克己会長とが中心となり進められた。この産学連携はわが国で過去に例がない規模のもので,IT分野における,わが国最初の「真の産学協同」の実現に期待する声も大きい。双方が協力して新たな時代に向けた産学協同によるIT人材育成・技術者養成・企業内教育推進,ITを利活用しての遠隔・在宅医療推進等を目指している。さらに,これらを通じ研究分野と実務分野の互いの理解と連携を深め,先端研究から実務への応用の迅速化や相互連携施策を全国展開することを目標としている。
両団体は,2021年夏に開催延期された東京オリンピック・パラリンピックをはじめ,社会のあらゆる分野で求められているIT人材需要に積極的に応えていくとともに,オンライン診療を含めた社会のあらゆる分野で遠隔対応を一気に進めることで,未来を先取りするような「新たな日常」の実現に貢献したいとしている。さらに,新型コロナウイルスとの共存・共生を強いられる中で,研究学会と産業界が手を取り合い,新しい生活様式を実現するために,ITのさらなる利活用に関する研究と実業化の推進などを進める狙いだ。
コロナ禍の中,IT連盟が果たしている役割はこれのみにとどまらない。2020年5月,IT連盟は,コロナ禍に立ち向かい日本のデジタル化を一層促進することを目的として,内閣府の規制改革推進会議に対して次の政策提言を行った。
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我が国では,2000年頃より,世界的なIT革命の渦によって,e-Japan,u-Japanなどの政策により内発的にITによる社会変革を試みてきましたが,大災害の影響などもあって,ほとんどが成功しませんでした。20年を経て今度は『新型コロナウイルス』という世界的災厄により,外発的に,社会構造の大きな変革を行わざるを得なくなっていると言えます。世界の先進国の中で,日本が落伍してしまうことを食い止める最後のチャンスであるとも言えるでしょう。
今やITは人類社会の全ての分野と密接にかかわっており,IT無くして人類社会は成立しないところまで来ています。しかしながらその一方で,既に可能ならしめるITがあるにもかかわらず,法制度や無意識の慣習などの社会の側が技術革新に十全に対応できていないどころか,大きな障壁となっている事例も散見されます。今こそ,私たちが無意識のうちに当然の前提のように考えていた社会の仕組みを新しい眼で再検証し,さまざまな障壁の解消に挑むことが求められているのではないでしょうか?
加えて,ITの恩恵を受けるためには,情報セキュリティの確保が不可欠です。政府,国民がそのリスクを正しく認識し,今以上の対応を行う必要もあるでしょう。
等しく国民皆で進化発展し,昨日よりも今日よりも,より良い明日を実現することを衷心より願いながら,私たち日本IT団体連盟は,新しい政策を提言したく存じます。
(以上,政策提言の前文抜粋)
新型コロナウイルスの影響とその対応により,社会が大きく変革している。特に,医療,教育,働き方など,日常生活の基盤をオンライン化することが不可欠となり,デジタルの力を使った新たな生活様式を実現し,さまざまな社会課題を解決していくことが求められている。今回の政策提言は,デジタル改革による新たな生活様式を「新デジタル生活様式」(デジタル×新しい生活様式=新デジタル生活様式)と呼び,次の考え方を基軸としている。
(2020年度初頭における政策提言「withコロナ時代を見据えたデジタル化・オンライン化推進のための政策提言」の具体的目的と細目の提言一覧は,https://itrenmei.jp/files/files20200515105528.pdfをご覧ください)
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このように,IT連盟は主要各団体との協定締結などを通じて着実に成果を上げ,現在,世界中を覆う新型コロナウイルス感染症による100年に一度ともいわれる未曾有の災禍の中にあっても,わが国の政策,ひいては日本の将来を左右するであろう重要で力強い提言を行っている。発足から4年が経過し,デジタルトランスフォーメーションが進む中,日本政府や産業界からのIT連盟への期待はますます高まっている。このIT連盟におけるIT人材育成において中心的役割を担っているのはKCGグループ長谷川統括理事長である。
平井卓也 デジタル改革担当大臣と面会,政策要望を提言
ANIA(会長・長谷川亘KCGグループ統括理事長)は2020年11月9日,内閣府大臣室を訪問し,平井卓也デジタル改革担当大臣に地方のIT企業を支援する施策や地方自治体の統一したシステム構築・行政のIT化などを求める要望書を提出するとともに意見交換した。面会には,訪問した理事らのほか,全国各地の情報産業団体の会長などが遠隔会議システム(Zoom)で参加し意見を述べるとともに,ANIA傘下の各地域の情報産業団体に所属する会員企業のメンバーもオンラインで視聴参加した。
要望書の提出には,一般社団法人北海道情報システム産業協会の中村真規会長(京都情報大学院大学教授・札幌サテライト長),一般社団法人山梨県情報通信業協会の井上清美理事,一般社団法人長野県情報サービス振興協会の神澤鋭二会長,一般社団法人広島県情報産業協会の有馬猛夫会長が,高田治樹ANIA事務局長らとともに参席した。
面会では最初に,Zoomを通じて長谷川会長より,デジタル庁発足に向けて期待を寄せる挨拶があった。平井大臣からは,「デジタル化推進がもたらす一番の変化は,システムを提供する側の論理ではなく,国民目線でシステム化を進めることを最重視する点である」との話があった。そして,消費者などが製品やサービスを通じて得た体験を意識したアーキテクチャ(基本設計)の大転換を行うことが,誰一人取り残さずにデジタルの恩恵を享受できる持続可能な社会を創ることになると続けた。
平井大臣はかねてより懸念されている2025年の崖(※1)に言及し,自治体など行政で使われている既存システムを,ワンストップ(すべての手続きを1カ所で終了),ワンスオンリー(再提出不要)の利便性の高いものに変えていくことが,市民サービスをより豊かにし,同時に地方のSIer(システム開発・運用を担う事業者)にとって開発の商機となるとして,変化を拒まない姿勢の大切さを述べた。デジタル庁の取り組みとしては,今後クラウドをデフォルトとし,制度変更の度に膨大なコストがかかることのないようにレジリエント(弾力・柔軟性ある)なシステムアーキテクチャを目指したうえで,まずはデータのベースレジストリ(※2)をあらゆる分野で確立していくための基本原則を策定していく考えを示した。こうしたビジョンに対し,参席した理事らが要望書に沿った質問を投げ掛け,闊達に意見を交わした。
また平井大臣は,自治体のシステムがワンストップ,ワンスオンリーのサービス,またインクルーシブ(誰も排除されない)な利用しやすさを実現するためにはどうすればよいのか,セキュリティに関しては旧来の三層の対策を見直した新たなエンドポイントでの在り方について,ANIAの皆様と話していきたい,との期待を述べ,デジタル庁が徹底的に対話をしながら進めていく姿勢を示した。
加えて,デジタル化を推進するために必要な人材の育成に向けては,ANIAを通じて地域の自治体や学校などと連携し推進していきたいとの展望も述べた。これらについては「デジタル改革アイディアボックス」(https://ideabox.cio.go.jp/)を活用し,ANIAからも具体的な提案を寄せてほしい旨を要望した。
(※1)2025年の崖…複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存し,デジタルトランスフォーメーションを遂げられないことによる国際競争への遅れや経済の停滞などを指す。
(※2)ベースレジストリ…公的機関等で登録・公開され,さまざまな場面で参照される人,法人,土地,建物,資格等の社会の基本データ。日本では台帳等が相当する場合が多い。